表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この身は露と消えても……とある転生者たちの戦争準備《ノスタルジー》  作者: 有坂総一郎
皇紀2586年(1926年)

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

182/910

舳先に見える未来

皇紀2586年(1926年)1月 帝都東京


 波乱はいくつかあったが、概ね史実に近い形で25年は暮れ、年が明けた。


 だが、確実にこの世界は史実とは違う方向へ流れ始めている。


 統帥権の確保を狙ったバーデン・バーデンの密約は東條英機の直談判によって成立せず、中核的人物であった永田鉄山の台頭の芽は摘み取られ統制派は産声を上げる前に霧散した。


 ワシントン軍縮条約は大日本帝国による提案によって英米連合は瓦解し、欧州勢の同意もあり史実以上に条件の良い軍縮条約となった。


 シベリア出兵は有坂重工業による自動小銃と機関短銃の投入によって反転攻勢に転じ、また戦局の好転によって帝国政府・陸軍省は増派を決意し、遂にハバロフスクを陥落させ極東共和国は崩壊、ソ連と極東共和国領土の分割を行い、日本海の完全内海化を達成した。


 極東共和国の崩壊と前後し、鳥取に亡命ロシア政府を設立。これによって世界各地に散らばる亡命ロシア人などの極東移住を募集、新たな緩衝国として正式な国家樹立も間近に迫っている。


 史実とは異なる結果となった一大イベントによって明らかにこの世界における大日本帝国はその存在感、国威を世界に示しているが、内実を見るとそれほど史実とは変わらない国力であり、とてもではないが、大東亜戦争など戦い抜ける状態にはない。


 だが、転生者たちは陰に日向に国力の充実、資源の確保、工業力の底上げに日夜右往左往しているのである。


 産業界は有坂総一郎が鉄道省、私鉄、中島飛行機に働きかけ、インフラ整備と大量生産、規格統一の旗振り役となっていた。


 陸軍においては東條英機が軍官僚として地位を確立し、内務省に人脈を築き史実以上の出世と各方面への働きかけで統制派がなくなったにも関わらず派閥に頼らない人脈によって大きな影響力を発揮しつつあった。


 海軍においては東條-有坂枢軸に属する平賀譲が艦政本部を仕切り、史実では確執があった藤本喜久雄との和解と彼との協調によって確実に革新技術と保守的建造技術の融合が進んでいた。


 だが、海軍には別の転生者がいたのである。大角岑生だ。彼は裏から手を回し、ワシントン軍縮条約を改変し、同時に条約派と艦隊派をうまく操り海軍大臣にまで上り詰めた。そして彼は未来技術であるMEKOシステムをこの世界に再現しようと平賀譲に接触してきた。


 転生者ではない者たちも史実にはない動きを示していた。


 シベリア出兵において戦功を立てた荒木貞夫、真崎甚三郎は英雄将軍として若手将校、下士官から絶大な支持を受け、同時に政治家平沼騏一郎と接近していた。彼らは史実では皇道派の中核であるが、今はまだその兆候は見せていない。


 20年代前半は少しずつ加速し、25年には車で言えば4速に入った様なものであった。


 そして26年……。


 史実では年末に大正帝の崩御によって改元、昭和が始まる。そしてやがて世界を覆う暗闇が発生するのである。


 この26年はどのように展開するのであろうか?


 史実よりも良好な日英関係、史実よりも早まりそうな蒋介石の北伐、突撃隊などの問題集団の存在しないドイツナチ党……。


 世界は史実に近くても確実に変化している。だが、その舳先はどこへ向かうか、それは誰にも分らない。歴史改変を為している当事者たちでさえ……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ