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この身は露と消えても……とある転生者たちの戦争準備《ノスタルジー》  作者: 有坂総一郎
皇紀2585年(1925年)

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冬空に舞う赤いアレ

皇紀2585年(1925年)12月18日 埼玉県所沢


 所沢陸軍飛行学校の滑走路を赤い複葉機が滑走していた。やがてその赤い機体は冬空らしくカラッと晴れた帝都の大空に舞い上がった。


 優美なその飛行機は青空によく映え、爆音を轟かせ所沢飛行場上空を旋回し、やがて富士山を目標に西へと進路を取る。


 爆音につられるように近所の子供たちが機体を追いかける。彼らにとって赤い機体は衝撃的な出会いだった。この飛行の直後、航空少年と呼ばれる子供たちが所沢周辺で跋扈するようになった。ベニヤ板で作った飛行機を被っての航空戦と称されるチャンバラの亜種が生まれることになる。


 さて、話は戻る。


 この赤い機体。所属は帝国陸軍でも帝国海軍でもない。無論、胴体、翼に日の丸の国籍マークは存在しない。では、どこの国家に属する飛行機であるのか?


 もうお解りであろう。


 国籍マークの代わりにUDETと白文字で大書されているエルンスト・ウーデットの愛機である。


 石原莞爾少佐の勧誘によってイタリア・トリエステから海路にて輸送されたウーデットの愛機は横浜港から陸軍省差し回しの貨物列車によって所沢飛行場へ運び込まれていたのである。


 ウーデットは陸軍の整備士に自ら整備方法を伝授し、まずは自身による整備、次に陸軍整備士に同じように整備をさせてみて問題点を指摘するという形で徹底して整備の重要性を叩きこんだ。


 整備の習熟が進み、やっと飛行可能になったこの日、陸軍省から試験飛行を兼ねて帝都上空を飛行するように依頼が来たのである。


 彼は陸軍省からの依頼を快諾し、クリスマス休暇とボーナスを要求し、その分働くと宣言すると肩慣らしに腕をぐるぐると回し気合を入れると愛機に飛び乗り、滑走路を滑らしあっという間に大空へと舞い上がっていったのであった。


「ヤッホゥ! やっぱり俺は空を飛ぶのが性に合っているぜ!」


 彼は帝都上空へ舞い戻るとサービスとばかりに宮城上空まで愛機を飛ばし宙返りを連続で行い所沢飛行場に帰着した。


「馬鹿者! 宮城上空で宙返りなど誰も頼んでいない! すぐに引き返させろ!」


 無論、陸軍省から猛抗議の電話が所沢飛行場の司令部に鳴り響いたのは言うまでもない。

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