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この身は露と消えても……とある転生者たちの戦争準備《ノスタルジー》  作者: 有坂総一郎
皇紀2585年(1925年)

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憲兵隊突入

皇紀2585年(1925年)9月25日 東北帝国大学


 東北帝大、ここは金属材料の総本山ともいえる場所である。いくつもの金属材料、合金などがここで生み出され、世の中に役立っている。


 だが、金属関係だけでなく、ここでは世紀の大発見と大発明がなされていたのだ。


 その東北帝大に憲兵隊が乗り込んできたのである。


「八木秀次教授、宇田新太郎教授、我らは東京憲兵隊である。帝都、陸軍省まで出頭願おう」


 乗り込んできた憲兵たちは東條英機大佐の息のかかった者たちであり、東條の指示によって両教授を拘束するために仙台まで出張ってきたのだ。


「一体何の容疑です? 我らが何をしたと! 不当な拘束には抗議しますよ!」


 宇田は抗議の声を上げるが、もう一人の当事者である八木は黙ったままである。


「両教授の研究には帝国の存亡を左右するものがあり、拘束の後、帝国陸軍の監視下に入っていただく」


 憲兵隊長は拘束理由と今後の扱いを簡潔に言う。


「監視下……ここの学生や研究員はどうなるのですか」


「当然、全員拘束。ここの研究の一切は軍機指定され、軍機を知っている諸君らには当面は行動の自由はないと思っていただきたい」


 軍機指定。その言葉で両教授と研究員たちは自分たちの研究の何が問題となっているのか気付く。


 彼らの研究していた、発見したものとは……。


「短波長ビーム……についてですか」


 宇田は憲兵隊長に問いかける。


「詳しい話は帝都で東條大佐が行うことになっている。だが、その短波長ビームとやらが問題であり、それを知っているものは全て拘束というのが我らに下った命令だ」


「なるほど……では、この研究室には陸軍さんの息のかかった者が居て、我々の発見と研究は筒抜けであるということですね……わかりました。帝都へ行きましょう。ところで、東條大佐とは先の大震災で活躍された東條英機大佐のことでしょうか?」


 八木は東條の命であると聞くやピンときたようであった。


 金属材料研究所の本多光太郎所長から八木は東條の話を聞いていたからである。


「八木教授、陸軍の東條さんは今時の軍人にしては広い見識を持っている。ここにも何度か訪れて金属材料とその供給と需要に関して話を聞いて帰っているくらい熱心な勉強家だよ。あぁいう軍人が増えると我々の研究が活かされると思うんだ」


 本多の人物評を考えるに、八木はこの拘束は恐らく最初から仕組まれたものだと考え始めていた。


「憲兵さん、申し訳ないが、短波長ビームはまだ研究途中なのだ。それを解明するにはいましばらく時間が掛かる。それを観察するのはここにいる研究員や学生たちだ。どうか、彼らは解放していただきたい……代わりに一切口外無用、資料持ち出しも禁じ、金庫保管を徹底させる。どうだろうか?」


「即答は出来ない。東條大佐に確認をする必要があるが、恐らくは八木教授の要望は通るだろう」


 憲兵隊長は東條に電話を掛けるため研究室の外に出た。


「しかし……八木さん」


 宇田はなおも心配そうな表情で八木に訴えかける。


「大丈夫さ、前評判通りの人物なら、話は通じるさ。多分、帝都に出張ってもすぐに戻ってこられるさ」


 八木は気楽にそう言うと手早く荷物をまとめ始めた。


 宇田も八木の様子に不承不承ながら自身も旅支度をするのであった。

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