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この身は露と消えても……とある転生者たちの戦争準備《ノスタルジー》  作者: 有坂総一郎
皇紀2585年(1925年)

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まさかとは、そんなこと起きない、起こらないと思う時に起きる

皇紀2585年(1925年)8月28日 帝都東京 有坂邸


 総理大臣加藤高明と海軍次官大角岑生が総理官邸で和解に向けた会談を行っていた昼下がり、有坂邸を訪ねる海軍軍人が居た。


 ニクロム線、平賀譲らないでお馴染みの平賀譲少将である。


「ウナギが食いたい」


 開口一番、そんなことを平賀は言い出した。


 この日の有坂邸における昼食はウナギのかば焼きだった。その残り香が彼を刺激したらしい。


「いや、平賀さん、今昼下がりですよ? 昼飯食べてきたでしょう?」


「艦政本部から飯も食べずに来た私に出す飯はないというのか?」


 どうやら、平賀は飯を抜いて有坂邸に来たらしい。


「飯抜きって……」


 有坂総一郎は呆れて言葉を失った。


「ホラ、細君の作る飯は美味いからな……で、ウナギを食わせてくれ」


 平賀はなおも食い下がる。


「結奈……まだある?」


「ないですわね。あなたの会社の方が見えてらしたからお土産に渡したでしょう? あれで終わりよ」


「だそうですよ、平賀さん。諦めてください。結奈、すまないが適当に膳を用意してくれないか?」


「ええ、そうですわね。その様子だと本当に昼飯抜きだったみたいですものね」


 有坂結奈も平賀のショボーンとしたその様子を見て罪悪感を感じずにはいられない。


「それで、平賀さん、今日は何の用ですか? 今頃は大角次官に巡洋艦の追加建造が代替提案されている頃だと思いますが」


 平賀はそれに頷くが、そうではないと首を振った。


「恐らく、大角次官はあの提案を受けても首を縦には振らないだろうな。一応、あれも加藤友三郎の側近だった人物だからね。それなりのバランス感覚がある」


「では?」


「巡洋艦は恐らく、執行停止分の解除に落ち着くだろうな。それで、軍縮条約に従って旧式戦艦の廃艦を政府要求通りにするだろう」


 総一郎は首をかしげる。


 それでは政府が海軍に勝ち越してしまい、艦隊派の顔を立てることも出来ない。


「それでは、海軍にとって不都合ばかりでは?」


「いや、そうでもない。昨日、艦政本部に来た大角次官に尋ねられたから答えたのだが、規格化された巡洋艦規模の軍艦を同時並行で短期間に建造可能か、それと同じ船体で違う兵装にすることで違う艦種として建造が可能か……とね」


 その瞬間、総一郎は戦慄した。


 大角の訪ねた内容はドイツのブルーム・ウント・フォスがシリーズ化しているMEKOシステムそのものだったからだ。


 MEKOシステムは本来、フリゲート程度の小型艦がメインであるが、物によっては駆逐艦サイズも存在し、20年代から40年代では排水量ベースで考えると巡洋艦サイズに相当する。


「平賀さんはどう返事をされたのです?」


「あぁ、出来るか出来ないかで言えば出来ると答えたが……我が帝国の船台や船渠の数では現実的ではないと……返事をした。だが、次官はそんなことくらい知っているだろうと思うのだが……変だな」


 平賀も違和感を感じたようであった。だが、彼の感じている違和感は、海軍次官として上級職として知っているであろう知識に対する疑問であって、MEKOシステム的な発想ではない。


「あと、私案で構わないから、そのモジュール構造……って次官は言っていたな……の巡洋艦の設計案を出すようにと言われてな……まぁ、片手間で出来るような内容だから、古鷹型を基礎に兵装変更したものを概算値付きで今朝手渡してきたんだ」


 総一郎は確信した。


「平賀さん、大角次官は転生者です。間違いありません」

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