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この身は露と消えても……とある転生者たちの戦争準備《ノスタルジー》  作者: 有坂総一郎
皇紀2585年(1925年)

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内閣改造案

皇紀2585年(1925年)8月21日 帝都東京


「今回は助かったよ三木君。君のおかげでなんとか君が言うところのアホウドリと駄犬を黙らせることが出来たのは大きな成果だ。君に任せたのはやはり正解だったな」


 ところ変わって総理官邸にて総理大臣加藤高明と三木武吉は相対していた。


 帝国議会での鳩山一郎による政府攻撃を撃退するという成果を上げたことに加藤は三木へ労いの言葉をかけ感謝を示し、深々と頭を下げたのである。


「総理、今回くらいのことであればさしたる手間でも苦労でもありません。問題はこれからです……。以前、シベリア出兵に際して私が原敬内閣を糾弾しようとした際に総理と濱口さんが私の弾劾決議を止めた時のことを思い出して御奉公したまでのこと」


「あぁ、あの時のことか……いや、確かにあの時は良く出来た物を拝見させてもらったが……」


 シベリア出兵において三木は視察の上で「シベリア出兵は内政干渉であり、その背後には、明治以来の藩閥の流れを引く陸軍の武力的野心がある」との感想を持ち、それを基に軍部や藩閥を糾弾し、シベリア出兵を主導する原内閣を弾劾しようと濱口雄幸を通して憲政会総裁の加藤に質問文書を手渡したのであったが、この際に加藤と濱口はその文書の出来に感心し三木を褒めたのであった。


 だが、同時にその質問や弾劾の与える影響を考え、三木に質問を控える様に伝えた。


「あの時、私は……外国の政治家でも、一流といわれた人々は、国家的問題については党派を超えていくものだ……と言って君を抑えたのだったね」


「ええ、総理にはそのように言われ、濱口さんには……質問や弾劾をすれば、諸外国の日本に対する疑念を認めることになり、日本は国際的信用を失う……と言われ思いとどまりました……結果、例え相手を倒すべき絶好の材料を持っていようとも、それが国家の尊厳を害し、対外的に重大な影響を与える場合、これを軽々に取り上げて批判、論難を加えてはならないと考えるに至ったのです」


「つまり、今回も同じように考えたということだね?」


 三木は黙って頷いた。


 三木にとって鳩山一郎や犬養毅の統帥権干犯を主張するそれは加藤や濱口が抑止した「対外的に重大な影響を与え、国家の尊厳を害する」ことそのものだったのだ。


 ゆえに常日頃から議員徽章を携帯佩用していない鳩山と犬養他の議員の怠慢を利用して議会から実質的に追放することを思い付き、タイミングを見計らって策を実行したのであった。


「議会での言論は尊重されるものではありますが、あのような者たちを野放しにしては議会政治を破壊することになります……それは民権運動以来の成果を台無しにする様なもの。決して認めてはなりません」


「だが、連中は再び動き出すだろう……財部海相の援護も期待出来ない今、乗り切る自信は私にはないよ……」


 一時的に乗り切ったとはいえ、問題の先送りをしたに過ぎない。加藤は現実から目を逸らしたくなり弱気になっていた。


「御上の御意思を拝し奉り、軍部と野党を抑えるしかありますまい」


「しかし、それでは輔弼の任を投げ出すようなものではないかね?」


「仕方がありません。それは総理が幣原さんを用いたことによる結果なのですから。御上を頼らないのであれば、憲法の欠陥である統帥権の独立を改正する他ありますまい」


 三木は帝国憲法の改正による抜本的な対策を提案する。


 統帥権と編成権が行政権とは独立して政府の管轄に存在していない状態が全ての問題の原点である以上、避けては通れない問題なのだ。


 これを三木は明確に示すが、加藤はこれに難色を示した。


「三木君、君の言わんとすることはわかるが……現状の与党の議席では難しいと思う……」


「それでもやらねばならんのです……まずは、内閣総辞職をした上で再度大命降下による内閣改造をするべきかと……幣原さんの更迭が必須ですが……西園寺公にこれを働き掛けてみては如何でしょう」


「それしかないか……」

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