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この身は露と消えても……とある転生者たちの戦争準備《ノスタルジー》  作者: 有坂総一郎
皇紀2585年(1925年)

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ウーデットという男

皇紀2585年(1925年)8月17日 ドイツ=ワイマール共和国 ベルリン


 駐在武官石原莞爾少佐がミュンヘンのエルンスト・ウーデット邸を訪れてから早一ケ月。


 この間、石原は随分待たされていた。ウーデットは一向に現れる兆候が見えず石原の我慢も限界に近付いていたこの日、大使館上空に爆音を轟かせて通過した飛行機があった。


 真っ赤な機体に特大の白文字でUDETと書かれた機体はその後ベルリン・テンペルホーフ空港に着陸し、パイロットであるウーデット本人は黒塗りのベンツで大使館へ乗り付けたのであった。


「随分待たせたな! 俺がウーデットだ。リヒトホーフェン大隊のウーデットとは俺のことだ」


 応接室に通されたウーデットは上機嫌に石原に握手を求めた。


「随分待たされたが、あなたのことはゲーリング氏から良く聞いている。我々もあなたの功績には大いに敬意を表している。会えて光栄だウーデットさん」


 石原は握手に応じ彼を讃えて見せた。


「それで、どうしてこんなに待たされたのか、差し支えなければ聞かせてもらっても良いですかな?」


「あぁ、大したことではないんだが……まぁ、平たく言うと借金取りに追われていてね、自宅に帰ったのがつい先日だったんだ。それで、あんたが会いたいという話と鉄人(ゲーリング)からの紹介でこうして馳せ参じたわけだ……申し訳なかった」


 正直な男だった。


 その後、ウーデットはここ最近の逃避行を身振り手振り大袈裟に石原に話し、石原はそれに相槌を打ち満足するまでしゃべらせた。


「なるほど、それで欧州中をあなたの愛機とともに飛び回っていたわけだ……ふむ……それで借金はどうなさったのです?」


「あぁ、それか? 自宅を出たら連中と出くわしてね……で、この手紙を連中に見せたんだ。ヤーパンからオファーが来たってね。そしたら連中、態度を改めて報酬が入ってから支払ってくれたら良いって言って引き下がってくれたよ……本当に助かった。感謝する」


 石原は若干引いていた。


 ウーデットの借金は日本側がケツ持ちするという話になってしまったからだ。つまり、借金取りがウーデットのケツを追い回すのではなく、日本大使館に殺到するということなのだから。


 払った報酬がどこに消えようが構わないが、払う前から差し押さえされるというのもどうなんだろうと石原は引き攣った笑みを浮かべるしかなかった。


「それで、ヤーパンはこの俺に何をしろってんだ? 飛べっていうならいくら払ってくれる? こう見えても俺は映画出演や曲技飛行の依頼がそれなりに来るんだぜ?」


「あなたの飛行技術を我が帝国陸軍のヒヨッコどもに教授願いたい。報酬はあなたが満足できる程度にはお支払い出来るだろう……契約期間は大雑把になるがゲーリング氏があなたを必要とするまでだ……」


 大雑把すぎる条件に石原も二つ返事で請け負うとは思ってはいなかった。だが……。


「良いだろう! だが、条件を追加して欲しい」


「可能である範囲ならば……」


「簡単なことさ、報酬とは別に酒と女を用意してくれたらいいだけさ!」


 ウーデットらしい要求だった。


 石原は複雑な表情で頷いた。


――どうせ支払うのも用意するのも有坂に丸投げするのだからこれくらいはかまわんだろう……

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