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この身は露と消えても……とある転生者たちの戦争準備《ノスタルジー》  作者: 有坂総一郎
皇紀2585年(1925年)

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ラジオの急速普及

皇紀2585年(1925年)8月10日 帝都東京 有坂邸


「ときは今 あめが下しる 五月かな」


「……今は雨が降ってないし、そもそも五月じゃないわよ?」


 何の前触れもなく突然、有坂総一郎が愛宕百韻のアレを詠ったことに妻の結奈は呆れ顔でツッコミを入れる。


「それで、今度は何を思いついたのかしら……どうせロクでもないことなのでしょうけれど……」


「いや、男が一大決心をしたというその決意のほどがわからんかな?」


「わかりませんわね……ただの中二病でしょう?」


 相変わらず容赦のない結奈の切り捨て方である。


「大体、先日も独断で何の相談もなく王子製紙に行くと言って、そのまま読売新聞に出資したじゃない。有坂重工業(うちの会社)も無尽蔵にお金があるわけじゃないわよ?」


「うぅ……いや、だってさ、チャンスじゃないか」


 結奈の呆れと怒りの形相に心が折れそうになる総一郎だが、そこで譲るわけにはいかない。


「鉄道省からトラックの大量生産を受注したことで有坂重工業(うち)の経営状況は非常にいいわよ? でもね、そんなに矢継ぎ早にあれもこれもされたら、中の人は大変なのよ……もう少し自重なさいな」


「中の人って……従業員の福利厚生は……」


「それは当たり前、安い給料で長時間労働とか平成のブラック企業な真似をしても誰得よ? そうじゃないの、旦那様の思い付きで振り回される、役員の方や、主に私のことを考えてくれと言っているの!」


 そう、結奈は専業主婦をやっているわけではないのである。


 彼女は総一郎の意を酌んで実質的に有坂系企業集団を差配しているのだ。本業そっちのけで歴史改変というお遊びに熱中している中二病患者は最近では社内にいるよりも外で色々と企んでいることが多いからだ。


「最近、社内であなたの姿を見ないものだから決裁書類が全部私のもとに届くようになって困っているのだから自重しても下さらないといい加減私も実家に帰りたくなるわよ」


 相当にストレスを感じているようだ。


「いや……先日、M&Aが楽しいとか、公開買い付けがどうとか言って楽しんでいたじゃないか?」


「うっ……アレは……興が乗ったからよ……」


 結奈も時には何かにハマってハイになっているときがあるようだ。まぁ、恐らく、ストレス解消的なものだろう……。全部、有坂総一郎(どこぞの中二病)が原因だが。


「コホン……それで、今度は何をしようというの?」


 本題に戻すらしい。


「あー、うん。ラジオ放送も始まったことだし、読売新聞との提携でラジオにおける宣伝効果も出る様になる。そこでだ、ラジオのリースによって一気に普及させようと思っている。あとは、放っておけば放送局は日本放送協会に統合されるだろう。で、それとは別のラジオ放送局を作ってしまおうと思ってね」


 ラジオ放送はこの25年夏に始まり、徐々に浸透していくこととなるが、真空管などの初期型電子機器の価格の高さなどで販売価格が高止まりしていることもあって普及のネックであった。


 そこで、総一郎は販売形式ではなく、リース契約による貸し付けという形で一気に普及させ、年間契約により実質的なラジオ受信料の徴収を目論んだのだ。


 勿論、自前のラジオ放送局の設立にはCM契約によって広告料金の確保という側面もあるのは言うまでもない。


「なるほどね……まぁ、それであれば赤字になることはないかしらね……」


「そういうわけだから、社内の根回し宜しくね」


 結奈は嫌な顔をするが仕方なくうなずいた。


「結局、私が社内調整することになるのね……」

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