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この身は露と消えても……とある転生者たちの戦争準備《ノスタルジー》  作者: 有坂総一郎
皇紀2585年(1925年)

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新聞報道

皇紀2585年(1925年)8月6日 帝都東京


 加藤高明内閣の閣内不一致による事実上の政権崩壊は海軍発の速報として帝国中に翌6日には知れ渡った。


 新聞各社の海軍番記者が閣議から海軍省へ戻ったばかりの財部彪海軍大臣に突撃取材したのである。


「閣下! 本日の緊急閣議、海軍の統帥権、編成権に関し、如何な話し合いとなったのでしょうか!」


「海軍は、閣下は加藤声明に従うのでありましょうか!」


 記者たちは財部に群がるように質問をぶつける。


「統帥権については私から諸君に言うべきことはない。だが、海軍は政府に、加藤内閣には現状では協力出来かねると申し上げてきた……少なくとも幣原外相の更迭なくば歩み寄れないと……」


 財部の回答はこうだった。


 財部も統帥権関係はなるべく関わらず、どっちつかずの姿勢を貫くことで海軍内派閥闘争の均衡を保つ腹であり、不必要な発言は慎んだのである。


 なおも記者たちから質問が飛ばされたが、財部は彼らに応えることなく赤煉瓦の海軍省庁舎へ入っていった。


 閣内不一致という状況を造り上げた財部だが、彼はあくまで幣原喜重郎外務大臣への不信感によるもので、加藤高明総理大臣とその政権運営に不満があったわけではなかった。


 だが、彼の想いとは異なり、新聞各社はこの一件を大きく取り上げ、騒ぎ立てたのである。いつの時代もスクープという名の現実とは異なる報道をやらかすのが日本の報道機関の悪い慣例である。


「財部海相、内閣不信任を言及」


「内閣不一致、争点は統帥権干犯問題」


「海相、軍縮条約脱退を示唆」


 新聞各紙の見出しはこの様なものであり、異口同音であった。


「なんということをしてくれたのだ……」


 財部は登庁前に届いたばかりの朝刊の一面を見た瞬間に苦虫を嚙み潰したような表情で呟いた。

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