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この身は露と消えても……とある転生者たちの戦争準備《ノスタルジー》  作者: 有坂総一郎
皇紀2585年(1925年)

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閣議招集

皇紀2585年(1925年)8月5日 帝都東京


 英米共同声明に端を発した統帥権干犯問題は在郷軍人会、海軍青年将校は総理官邸や帝国議会議事堂を取り囲み、国粋団体、右翼団体とともに加藤高明内閣の加藤声明の撤回と内閣総辞職を求めて毎日気勢を上げている。


「まったく加藤さんには困ったもんだ。根回しせずに声明を出したりしたもんだから……」


 鉄道大臣仙石貢は緊急閣議の招集で自身の城である鉄道省から総理官邸へ向かう車中、桜田門外から帝国議会のある霞が関の方を見ながらつぶやいた。


 仙石は鉄道大臣として日本列島改造論の実務に勤しんでおり、地方視察や私鉄との懇談、車両メーカーとの打ち合わせなどやらねばならぬことが山積している状態であり閣議には欠席すると電話で伝えたが、総理大臣加藤高明は全閣僚出席であるから例外を認められないと突っぱねてきた。


「俺はやらねばならんことがいくらでもあるというのに……なんだって海軍の馬鹿どもの相手をするために官邸まで行かにゃならんのだ……どうせすることなんてないだろうに」


 運転手は仙石のぼやきに同情を禁じえなかった。


 彼もまた、本来であれば上司である仙石とともに目黒蒲田電鉄の五島慶太のもとへ向かう予定だった。だが、車の支度が出来、仙谷が乗り込み、渋谷の目蒲電鉄本社へ向かおうと日比谷まで進んだところで行先変更を伝えられたのである。


「大臣、この先は右翼や在郷軍人会が封鎖しているので進めないかもしれません」


「あぁ、構わない……行けるところまで行ってくれ……連中は閣僚であるといっても、鉄道大臣には用がないだろうから問題ないだろう」


 運転手は頷くとそのまま三宅坂の陸軍省、参謀本部の横を通って総理官邸前まで車を走らせる。


 すると、参謀本部から1個分隊の歩兵が現れ仙谷の乗る車を制止した。


「一体何事か!」


 仙石はドアを開けて指揮官に怒鳴りつける。


 指揮官は仙石の方へと歩み寄る。


「仙石大臣、東條です。官邸はすぐそこですが、馬鹿どもが通せんぼしておりますゆえ、お供させていただきます」


 仙石はまさか相手が東條英機大佐だとは思いもしなかった。


「東條さん、陸軍は官邸へ向かう公用車を護衛しているのですか?」


「ええ、私の独断ではありますが、あと、警視庁からも多少は協力していただいておりますよ」


 東條は内務省に手を回し、警官を閣僚の護衛に付けるように水面下で要請していたのであった。関東大震災以来、内務省にパイプのある東條らしい機先を制した行動である。


「しかし、よく私の行動がわかりましたね?」


「あぁ、それでしたら有坂から鉄道省関係の情報はある程度回してもらっておりますからな……今日は目蒲電鉄の五島と会う予定だった筈、それが閣議招集で潰れたのであれば、この道を通るだろうと……」


「なるほど……まぁ、助かります」


 東條は分隊長に指示を出すと仙石の車が護衛付きで発車したのを確認し参謀本部に戻った。

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