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この身は露と消えても……とある転生者たちの戦争準備《ノスタルジー》  作者: 有坂総一郎
皇紀2585年(1925年)

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狙いはお前だ

皇紀2585年(1925年)7月18日 ドイツ=ワイマール共和国 ベルリン


 駐独大使館付き武官である石原莞爾少佐は大使館を出てからベルリン最大の繁華街ウンテルデンリンデンを独歩している。


 彼の胸中は大使館で我が闘争を読んで以来ざわついたままである。


――有坂(やつ)はこの俺を使ってゲーリングとつながりを持たせたが……そんな記憶はない。そもそも、この俺はナチ党に対して批判的な態度だったはずだ。


 石原はナチ党への批判的態度ではあったが、かと言って反独であるかというとそういうわけでもない。


 彼は駐独武官であった時、帰国時にアメリカへ立ち寄るかと尋ねられた際に「俺が米国に行く時は日本の対米軍司令官として上陸する時だけだ」と息巻いたほどの反米主義者であり、また、反米感情で大いにドイツ人と盛り上がったともいう。


 だが、後に駐独ドイツ大使と称された大島浩の様な徹底した親独派というわけでもない。


――そもそも、なぜ有坂はヒトラーではなく、ゲーリングを選んだ?


 石原は有坂総一郎からヘルマン・ゲーリングとのパイプ役を依頼されたときのことを思い出すが、思えば、あの時点から可笑しかったといえる。


――確かに俺の記憶……になるのか……が正しければ、時期がずれようと何れナチ党は政権を獲得するだろう。いや、そもそも、ゲーリングが素面(モルヒネ漬けじゃない)という時点で情勢は一気に変わってくる……。


 史実ではミュンヘン一揆の時の負傷からモルヒネ中毒となったゲーリングだが、この世界では負傷すらしていない。そうなると、明晰な頭脳を有するゲーリングの台頭も十分にあり得る話だと石原は考えていた。


――いずれにしても状況整理だ。有坂は恐らく俺と同類だろう。つまり、歴史介入者だ。だからこそ、ゲーリングを介してドイツへの影響力を狙った。確かに人選は良い。総統(チョビ髭)本人を相手にするよりも最適な判断だろう。ゲーリングは各界に顔が広いし、特に上流階級からの受けがいい。


 総一郎の狙いを石原は推察し続ける。


 もっとも総一郎はゲーリングが負傷していないことまでは知らない。その為、自分の依頼が想定よりも大きな効果を生みだすことになるがそれは彼にとって誤算であった。


――先の資金供与でナチ党の勢力の盛り返しに大きく影響していることは間違いないだろう。昨今、ドイツ国防軍や退役軍人などがゲーリングの紹介状を持って駐独大使館に訪れることも頻繁にある。特にリヒトホーフェン大隊の面々との交流は得るものが大きかった……。


 リヒトホーフェン大隊……欧州大戦で初代赤い男爵(リヒトホーフェン)が率いたが彼の戦死後にゲーリングが率いたドイツ空軍のエースパイロット集団。この集団に属した人物、エルンスト・ウーデットなどが後にドイツ航空省高官になっている。


――有坂が与えた俺の役割を考えるとドイツの力を以て帝国の力を強化することだろう。まぁ、それは俺も同様に考えるだろう……。奴の狙いは機械か? いや、違うな。機械なら買ってくればいいし、カネで解決するだろう。では、何か? 人の力か?


 石原は来た道を戻り始めた。当面の行動方針が決まったようだ。


 決まれば即行動。石原の歩みは驚くほど軽かった。


「ウーデットに会いに行こう。アレを日本に連れ帰る!」

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