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この身は露と消えても……とある転生者たちの戦争準備《ノスタルジー》  作者: 有坂総一郎
皇紀2585年(1925年)

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佐藤”鋭”作

皇紀2585年(1925年)5月5日 帝都東京 汐留貨物駅


「一時しのぎにしかなりませんが、入れ替え用の台車の製造くらいは町の鍛冶屋でも容易でしょうし、部品の共通性が必須なものでもありません。こちらが必要とする規格のものであれば、ネジが違っても問題にはならんでしょうから数か月内に相当数を用意出来るでしょう……しかし、これは欧米が真似をし始めたら物流が一気に様変わりするでしょう……気を付けないと欧米に飲み込まれてしまいますよ」


 鉄道大臣秘書官佐藤栄作は対応策を献じた後、続けて調達先と調達期間についての展望、そしてコンテナ輸送の抱える影響力を指摘した。


 元々、有坂総一郎はコンテナ輸送を鉄道だけでなく、海上における船舶輸送も含んだ共通規格として計画している。


 佐藤の指摘する通り、欧米がコンテナの本質に気付いた時が最も危険な状況であることも認識していた。だが、それでも今の時点で日本の鉄道輸送で一定の実績を積み上げ、陸海軍、海運会社も兵站や輸送にコンテナを用いるように、そしてそれを配送するためにトラック輸送体制を構築する布石としたかった。


「いずれ、コンテナは海上輸送やトラックによる陸送にも用いられるようになります。現在製造されている12フィートコンテナは、いずれ大型化し、31フィートや40フィートに……」


 総一郎が大型コンテナに言及した時……。


――なんだって? 31フィート、40フィート? そんな大きさのコンテナなど聞いていないぞ……いや、そもそもそんなものを必要とするのか? 我が国の需要ではせいぜいが20フィート前後だろう……15フィートでも十分だ。そんなモノを作るくらいなら大型無蓋貨車に幌を被せるべきではないのか?


 佐藤は総一郎の思惑を理解出来なかった。


「佐藤さん、コンテナは小さいものは需要に合わせやすく使い勝手が良いですが、今後の自動車化の進んだ社会を考えると将来的には大型コンテナが主流になると思います……今は必要性がないので対応させていませんが、いずれコンテナ車も大型コンテナに対応させる必要があります」


「ですが、それには必然的に機関車の出力強化やトラックの馬力向上、そして産業道路の整備が必要になるのでは?」


 佐藤は核心を突いてきた。


 この時代、舗装道路などほぼ皆無。ましてトラックが走るにはあまりにも貧弱な道路事情であり、精密部品などトラック輸送ではなく、牛車による輸送が行われている始末だ。


「ええ、そのために12フィートで過重5トンに制限しています。自重の1.5トンと加えても最大6.5トンで現在普及している一般的なトラックでも手に余ります。ですので、御存知の通り、現在はトラック輸送は一度コンテナに収納した荷物貨物を貨物駅で解放し、トラックに積みなおすという手間が発生しています。ですが、これがなくなれば工場で製造梱包されたものをコンテナに積み、貨物駅や港湾へ運び込むことが出来るようになります」


「つまり、コンテナ輸送の一体化による物流そのものの改革が目的だと……」


「そういうことですね……まぁ、他にも考えていることはありますが、時期尚早ですからお話は出来ませんが」


 総一郎は佐藤にそう言う。もっとも、最後の方は聞こえるか聞こえないかギリギリの音量だったが。


――有坂氏は一体なにを考えているんだ? 彼の見ているところは一体どこなのだ?


 佐藤は総一郎が見つめる先を考え続けたが全く見当がつかなかった。


――今の我が国の国力、インフラではとてもじゃないが有坂氏の考えは達成出来ないだろう……だが、確かに、大臣は農林省の予算で道路建設を勝ち取ってきた。しかも、その道路整備も農道という水準ではなく、部分的には産業道路としての規模だ。バス専用道路と農林道の兼用という水準を遥かに超えている。しかも、貨物駅と直結させている。まさか、そのために……。


 佐藤が考えを巡らせている間、鉄道大臣仙石貢と総一郎は鉄道行政について意見を交わしあっていた。

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