表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この身は露と消えても……とある転生者たちの戦争準備《ノスタルジー》  作者: 有坂総一郎
皇紀2584年(1924年)

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

120/910

一難去ってまた一難

皇紀2584年(1924年)8月20日 帝都東京


 陸海軍で動きがあった数日の後である。


 この日、赤坂の料亭にて東條英機大佐と平賀譲少将は会談を持った。


「いや、軍神様には参ったよ……あれも老害だと言われているが、それなりにモノを見ることができる人物だから面倒なところを突かれて困った……鈴木貫太郎大将の口添えがなかったら潰されていたかもしれん」


 平賀は先の海軍トップ相手の講話での一幕を東條に話し、薄氷を踏む思いだったと吐露した。


「確かに戦艦に比べ空母は見た目は安く上がるのでしょうが、搭乗員育成という裏方仕事で結構なカネが消えますからね……これは陸軍でも同様でしょうな。しかし、なんとか空母の方向性は打ち出せて軍神様の同意を取り付けたことは大きいと思います」


 東條は平賀の功績を素直に讃えた。


 だが、同時に東條は海軍が抱える次の問題に漠然とした不安を感じずにはいられなかった。


「あぁ、あれで押し切られていたら不味かっただろうが、戦艦を造れない以上は戦艦を補完する戦力が必要なことは誰の目にも明らかだったからなんとかなった。問題は電探だよ……確か今年だったろう?」


「ええ、今年、東北帝大の八木研究室に講師として就任した宇田氏が研究中に発見するはずです……26年の研究発表と特許申請でしたでしょうか……彼らの下に工作員を派遣していますから、直に情報が入ってくると思います。問題はこれを秘匿し、彼らを保護し、電探の開発へとつなげることですが……」


「容易には進まないだろうね……」


 彼らが頭を抱え悩ます問題。八木宇田アンテナとその理論の流出阻止と電探開発である。


 そもそも電波兵器の源流は日本にこそあったのだが、誰一人その価値を理解出来ず、闇夜に提灯論をかざして見向きもしなかったのだ。


 結果、電探開発に1歩どころか三歩も四歩も遅れ、苦労の末やっと開発出来た量産型電探である22号電探は「日本はこのレベルのものを使っているから戦争に負けたのだ。本国ロンドンではアンテナが回転して映像が画面に映るような、もっと良いものが市販されている」と英連邦軍の士官に馬鹿にされる始末であった。


「電探技術……いや、真空管やマグネトロンの開発も進めなければならない……アレが欧米から戻って来たら呼び出して動き始める必要があるな……。造船も電力に余裕がある様に設計せんといざ搭載するときに不味いしのぅ」


「最低でも前世における海軍の13号電探程度は早い段階で実用化出来ないと……陸軍の電探は海軍よりも探知能力が高かったとはいえ、旧式な技術を用いていたことで発展性がなかった……それでは不味い」


 いくら彼らであっても専門外のことはあくまでも上辺での話しか出来ない。ここに電探の技術者でもいれば話は違うだろうが、そうそう転生者がいてもたまらない。


 彼らは軍機破りで自分の持ちうる情報を交換し、今後のことを詰めていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ