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この身は露と消えても……とある転生者たちの戦争準備《ノスタルジー》  作者: 有坂総一郎
皇紀2584年(1924年)

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東郷ターン

皇紀2584年(1924年)8月 帝都東京 海軍省


 装甲空母……史実においては大英帝国海軍のイラストリアス型を源流とする一種の大艦巨砲主義的なそれは日英米において新時代の空母のあるべき姿として設計され、活躍することを期待されていた。


 大英帝国においてはイラストリアス型は改良型のインプラカブル型へ進化し、装甲と空母としての機能の最適化が進められた。


 アメリカ合衆国においてはイラストリアス型の優れた抗堪性を評価し、巡洋艦の攻撃に耐えうる舷側装甲も施したミッドウェイ型を戦訓として建造し、戦後第一世代の超巨大空母として運用するに至った。ある意味では現代の原子力空母は装甲空母の系譜と言えないこともない。


 そして、我が大日本帝国も負けてはいない。日本型空母の完成版と誉れ高い翔鶴型を基本とし、これに装甲を張り巡らした装甲空母大鳳を建造した。イラストリアス型に遅れること4年のことである。この大鳳は折角の重防御を活かすことなく、潜水艦による魚雷攻撃で沈んだが、間違いなく、帝国海軍の空母のあるべき方向性を示したものであった。その証明に大鳳以後の正規空母は皆大鳳の系譜に属するものとすることとなっていた。


「確かに日本海海戦で三笠が活躍してから20年、帝国海軍はその間に長門型を建造し、八八艦隊を計画し実行している。そう考えれば、なるほど、航空機の発展もまた十分にあり得ることだろうな」


 連合艦隊司令長官鈴木貫太郎大将は平賀譲少将の言葉に頷く。


「大艦巨砲主義の今の世。より大口径、より重装甲と望まれる。その結果が長門型であり、加賀型であり、紀伊型……。ならば、航空母艦もまた、より大型、より重防御、より高速に流れるのまた世の理でありましょう」


 平賀は畳みかける様に訴える。だが、軍神東郷平八郎元帥大将は黙って平賀の言葉を吟味しているようだ。


 東郷にとって戦艦とはまさに生き甲斐であったのではないだろうか?日本海海戦での奇跡的な完全勝利、そして世界三大提督に数えられるようになってからも戦艦を愛し、それを海軍の根幹とみなし、艦隊派の黒幕として隠然たる影響力を発揮していた彼にとって航空母艦など気に入らないものであった。


「のぅ、平賀? この模型の将来空母だが、いくらするのか? その航空機とやらがこの空母で活躍出来るまで何年掛かる? 搭乗員の育成なども含めて海軍はどれほどの予算と時間を必要とするのかね?」


 目を開いた東郷は平賀に厳しい視線を向ける。


「この将来空母の想定搭載機数は約80機前後でありますが……。建造中の加賀型、天城型……そして廃艦を偽装して改装待ちの扶桑型を含め6隻の運用機数は350~400機となりますか……。搭乗員の練成には約2年から3年とのことですから……」


 平賀は具体的な数字を並べようとしたが……。


「もうよい。つまり、砲弾であるところの航空機は、兎に角カネを食うということだ。タダの砲弾であれば、もそっと安くなるのではないのか?」


 東郷は結果として大艦巨砲主義の方が安上がりになるのではないのかと言い出した。

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