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この身は露と消えても……とある転生者たちの戦争準備《ノスタルジー》  作者: 有坂総一郎
皇紀2584年(1924年)

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平賀所見<2>

皇紀2584年(1924年)8月 帝都東京 海軍省


「平賀君、大英帝国海軍の所見はよくわかった……。合衆国海軍についてはどうなのだ?」


 連合艦隊司令長官鈴木貫太郎大将は平賀譲少将に問う。


「お待ちください。大英帝国海軍の戦艦については以上ですが、航空母艦について申し上げるべきことがあります……」


 大英帝国海軍の戦艦は当面脅威となるものはない。だが、大英帝国海軍を手本としている大日本帝国海軍は他の艦種に問題を抱えているのだ。特に航空母艦がそれだ。


「航空母艦? ハーミズが昨今竣工したと聞くが、それに問題があるのか?」


「たかだか1万トン程度の補助艦だ。気にするほどでもなかろう?」


 東郷、鈴木両名ともに航空母艦への理解は乏しかった。だが、それが普通だ。帝国海軍ですら鳳翔の運用を始めたばかりであり、それ以前に航空機のペイロードが小さすぎるために脅威であると認識する方が難しい。所詮は遠距離偵察や弾着観測が出来る程度にしか現状では役に立たない。


「それは問題ではありません。現在、改装工事が進められている加賀型や天城型に影響を及ぼす問題があり、これを改めなければなりません……」


 東郷と鈴木は平賀の言葉の意味を理解出来ずお互いを見やっている。


「現在、改装中の艦はフューリアスを手本としておりますが、これは大いなる無駄と断じることが出来ます。まず、その複数段の甲板構造は航空機の発展によって意味をなくします……その結果、数度の改装をしなくてはならなくなり、我が帝国に存在する限りあるドックが塞がれてしまいます」


 史実において加賀や赤城はフューリアスを手本とした三段甲板空母として竣工し、また、排煙機構など大小の問題、欠陥を抱えた状態であった。これらの問題解消までには数年かかり、また、特に加賀は欠陥が多かったこともあり徹底した改装を行ったことで新造したも同然に様変わりしている。その反動から赤城は加賀に比べると貧弱な改装になってしまったのだ。


「だが、大型航空母艦となると手本にするものはフューリアス以外になかろう? 未だ航空母艦は確立されたものではないのだから試行錯誤は当然のことだろう」


 鈴木は何が問題なのかと問い掛ける。


「そこで合衆国海軍の所見と照合していただきたく存じます……。加賀型、天城型同様に航空母艦への改装が進められているレキシントン型ですが、この資料の通りに長大にして広大な全通甲板を持つ仕様であります。これはフューリアスよりも遥かに参考にすべき点が大きいと思われます……同時に艦橋と排煙装置の問題ですが……これにも些か考えがありまして、この模型を……」


 平賀はそう言うと史実における装甲空母大鳳の概略模型を鞄より取り出してテーブルに置く。


「ほぅ、これは?」


「なかなか流麗な姿をした航空母艦だな」


 史実における大鳳型、信濃型は飛鷹型による実験を経て艦橋と一体化した煙突を採用している。また、大鳳型は装甲空母という特徴のために低重心化のためにレキシントン型と同様の艦首が飛行甲板まで延びているエンクローズドバウを採用している。


 有坂総一郎との密談で当初から装甲空母化を推進しようと企んでいる平賀はここで出来得ることであれば、加賀型と天城型を装甲空母もしくは軽装甲空母として建造するように方針を捻じ曲げたいと考えていた。


「これこそが、我が帝国海軍の目指すべき航空母艦のあるべき姿です……いずれ航空機はその能力を向上させます……そう、20年前に三笠が世界最強であったが、今は長門が世界最強と言われておるように進化することでありましょう……さすれば500kg爆弾も800kg魚雷も搭載出来る様になるでしょう……そして、それに耐えることが出来得る航空母艦、それこそが装甲空母であると私は考えております」

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