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この身は露と消えても……とある転生者たちの戦争準備《ノスタルジー》  作者: 有坂総一郎
皇紀2584年(1924年)

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総選挙を睨んで

皇紀2584年(1924年)1月17日 帝都東京


 現役閣僚であり、実質的な内閣を仕切る存在ともいえる後藤新平は有坂総一郎に苦言を呈した……。


 後藤の苦言に仙石貢は助け舟を出す。


「後藤大臣、有坂君をそう責めないでやってくれないか……、アレについては私や島君も少々煽り過ぎたところがある……それに帝国議会の不勉強で我田引鉄な連中がそもそも悪いのだ。まして、鳩山など今回の件で明らかに自業自得であるのに反省もせずに厚顔無恥にも我田引鉄な連中を煽って国策を誤ろうとしている……そうだろう?」


「確かに、今回の一件で一部の地方選出議員は従来政策の継続を望んで反旗を翻しておりますからな……全く困ったものです……既に大手私鉄も改軌という方向性に同意し、動き始めておると言うのに……」


 呆れた表情を浮かべた五島慶太は仙石に同意し、自身の成果だと言わんばかりに私鉄の追随を強調している。


 これに堤康次郎は杯を傾け酒を飲み干すと五島に同意するかのように頷く。


 堤は史実通りにこの時期は箱根方面や軽井沢などの開発を行っている。彼の十八番ともいえる不動産開発は改軌計画と弾丸列車計画においても大きく影響を与える。


 五島が帝都近郊の開発を進め、帝都の利便性を追求する立場であるとすれば、堤は高級住宅地開発やリゾート地開発などを担当する立場だ。両者の不動産開発は似ているようで若干違うため、深刻な対立生む環境にはない。


「だが、これで改軌・弾丸列車反対派と総選挙で鉄道政策を争点に戦うことが出来る……立憲政友会は議席が半分程度になるだろうが……憲政会と手を組めば総理の座は憲政会にくれてやることになっても何人かの閣僚を新内閣に送り込める。まぁ、大蔵大臣、鉄道大臣、内務大臣くらいを我らが抑えることが出来れば上等だ」


 堤はざっくばらんに自身の想定する総選挙後の勢力図を開陳する。五島と仙石は堤の考えになるほどと相槌を打つ。彼らにとっても出来る売る限り次期政権に残留し、その職位を維持出来ればと考えているからだ。


「であれば、今我らが行うべきことは総選挙を睨んだ憲政会の取り込みと財界への働きかけで政友本党の資金源を断つことであろうかと考えますが……」


 総一郎は面々を窺う様に言う。


「確かにそれが常道というものだろうが……窮鼠猫を噛むともいう……特に鳩山とその一派が何をしでかすかわかったものではないからな……例の英雄将軍様たちとも接触しているとも聞く……下手に動くと現役軍人が政治に口を出す様な真似をしでかしかねない」


 後藤は悩ましい表情で言うと空になっている杯を煽り中身がないことに気付いてさらに不機嫌そうになった。


 後藤は内務大臣という職務上、警察から上がってくる情報がいくつかあり、その中でも鳩山と犬養毅、アジア主義者の頭山満などは特にマークされており、その情報は優先してあげてくるようにと命じていた。後藤が彼らを警戒しているのは総一郎からアジア主義者は危険であり、一掃すべしと進言を容れてのことだったのだ。


「まぁ、軍部もシベリアの統治や防衛でそこまで暇でもない……それに陸軍の装備供給の総元締めがここにおるのだから陸軍も勝手なことが出来まい」


 仙石は後藤の懸念を理解しつつも楽観的にそう言うと、彼の表情は渋いものから淡い期待を含んだ柔らかいものに変わっていた。


「まぁ、確かにそうだね……」


 相変わらず渋い表情の後藤だった。


「軍部の抑えは有坂君に引き受けてもらうとして……堤さん、あなたには次の選挙で勝ってもらって、関西方面の睨みを効かせていただかないと困りますね」


「あぁ、まぁ、土地改革と引き換えになるけれどね……琵琶湖の干拓なども鉄道政策の一環に加えて残土処理で並行して行えば耕地面積を増やすことも出来るだろうから、これらを訴えてみるつもりだ」


 五島が堤へ振り、堤も杯を傾けながらそれに応じる。


 史実でも堤は土地改革を訴え、彦根藩家老の家柄である対抗候補を大差で破っている。この世界でも同様に訴え、それとともに残土処理ついでの公共事業で地元へ利益誘導を前面に出せば優位は変わらないだろう。


「では、本日の謀議は大枠の方針が決まりましたゆえ、それぞれの担当する分野での根回しを宜しくお願いします……」


 総一郎は皆を見渡し、議論が出尽くしたところで謀議の場を締めた。

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