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この身は露と消えても……とある転生者たちの戦争準備《ノスタルジー》  作者: 有坂総一郎
皇紀2581年(1921年)

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ワシントン会議

皇紀2581年(1921年)11月12日 アメリカ合衆国 ワシントンDC


 有坂総一郎の歴史介入により総理大臣原敬は生存し、その日を境に明確に大日本帝国の歴史は史実とは異なるレールを走り始めた。


 暗殺未遂事件翌日に原は京都における政友会支部大会で演説を行い、暴力による政治への介入干渉を徹底して批判した。これにより反原内閣の声は大きく減じることとなる。同時に従来からの銃刀の所持禁止の徹底を宣言した。後に大正の刀狩りと称されるこの一件であるが、これにも総一郎の影が見え隠れする。


 史実において右翼、大陸浪人の多くは事実上の武装をし、時に政治家や財界人を脅迫し、自身の主義主張を押し通し、結果として大正デモクラシーの息の根を止める役割を果たした。そして、それは5・15事件やクーデターである2・26事件へと発展していった。


 この流れを食い止めるため、右翼や大陸浪人を無力化する必要があったのである。


 そして迎えたワシントン会議。


 大日本帝国は全権団として海軍大臣加藤友三郎、貴族院議長徳川家達、駐米大使幣原喜重郎を送り込んでいた。


 史実において、日本全権団はアメリカの通信傍受による機密情報取得により日本側の譲歩限界を把握し、軍縮条約や南洋諸島に関する点で有利に条約交渉を進めている。


 この世界においても既に介入の余地がないためアメリカ主導で会議は進行する。


 日本側は史実通り海軍力の均衡と満蒙における日本の特殊権益を国際承認することを要求し、これを基本として交渉を進めた。


「帝国は西太平洋の安定を望み、そのためにも合衆国、大英帝国との海軍力の均衡こそが平和の礎と確信している。また、満州及び蒙古における帝国の特殊権益は日清、日露両戦争によって獲得したものであり、これは列強諸国の黙認を得ていると考えている。当然だが、これの追認を望む」


 日本側全権主席である加藤友三郎は会議の冒頭で日本側の要望を述べた。


 それに対してアメリカはすぐさま反応を示した。


「日本側の要求である満蒙の特殊権益だが、日本は石井=ランシング協定で既に我らの主張する門戸開放政策を支持しているではないか?我々はこれ以上の日本のチャイナにおける影響力拡大は容認しがたい」


「我らが申しておるのは石井=ランシング協定の追認である。元々妥結したものを認めぬとは何事か!」


 日本全権団からの反発の声が上がる。が、イギリス全権団から横槍が入る。


「我らも日本のチャイナにおける影響力拡大と既存の枠組みからの逸脱は容認しがたい、特に山東半島のアレは許容出来ない」


「それだけではない。シベリアでの活動も我らは手を引けとアレほど言っているではないか?」


 米英の全権団は日本側を追い詰める。


「そうは言うが、元々は連合国への協力とバーターで認めたものを今更認めぬと言うのは些か不義理というものではないか。我が帝国は大英帝国への義理は果たしたではないか、それでも認めぬと?」


「だが、そもそも、その秘密協定そのものが門戸開放の原則に反するのだ、それとも日本は侵略国家なのか?」


「何を言うか!我が帝国が侵略国家だなどと撤回しろ!」


 日米間の舌戦はこうしてエスカレートしていく。ワシントン会議はまだ始まったばかりであった。

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