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と言っても私について話せる事は僅かだ。
妖怪退治を縄張りに生きていた事。
妖怪を憎悪していた事。
そして、一族を裏切った事だ。
これでも私は名の知れた退魔師だった。陰陽師と名乗れるほどにね。
そう、過去形だ。
今はその道から離れて生活している。
言わば隠居者になる。
隠居と言うと年をとっている印象付いてしまうな。
年もとってないので引退の方がしっくりくる。
ここまでが私の話だ。
……む。
もっと詳しく語れと?
しかし、そう言われてもな。
あれは戦い続けた日々だからな。
それでも良いと言うなら語らない事もない。
しかし、長々と語った所でドラマチックな山場も無ければ、何の面白味も無い。妖殺し、火焔の生き残り、最強の陰陽師など陰で言われていた私だが、語っても盛り上がりもなければ無駄話へと化してしまうだろう。
そんな物語をご所望かい?
再度言うが私にスポットを当てた物語にしても淡々と起伏のない殺伐とした日々になるだけだ。
それでも昔を知りたいと思う時が来たら、そうだな……
私ではなくアイツならば、少しは愉快な物語にして、語ってくれるだろう。
アイツとの出会いが私の運命を変えた。
ただ奪うだけの私が見つけた新しい自分。
そのせいで失うモノも多かった。
しかし、後悔はしてない。
アイツはいつも渦中にいた。
私も周りもアイツに巻き込まれ変わっていった。
良くも悪くもだ。
そして、アイツは全てを終わらせた。
そう考えるとあの場所から離れて3年の月日が経ち、私は私というモノを取り戻したのかもしれない。
いや、始まったのだろう。
そう、全ては変わる。
今は長きに続いた争いと両者の蟠りを終わらせ、妖怪と人間が共存を選んだ世界と人は言う。
人も妖怪も問題はあるが歩み寄っている。
私も立役者位にはなったはずだ。
だから、私は陰陽師を辞めた。