憧れの女性とは、両想いで、付き合って、結婚までして、✖✖✖までするぞ
人間というのは恋だの、愛だの。色々とある。人間関係は荒れ模様であっても、
『神様。俺は……』
1人の男は神様に願いを叫んだ。
『✖✖✖したい!』
『正直だな、君。伏せ字、入れたけど』
言われる神様は、髪をかきながら。
『どんな女性と?』
とても人間気質なことを尋ねた。そりゃ、ただするだけならお金なり、犯罪に走ればいいだけのこと、理想というのを知っている、この神様だった。
男は訊かれたので、想像や理想ではなくど直球の指名をする。
『憧れの女性です!本名は川中明日美!高校2年生!○✖高校の生徒で、とっても可愛い子で料理上手で、勉強もできるし、性格も勉強を教えてくれるわ、誰にでも笑顔で挨拶してくれるし、全員分にチョコを用意するくらい、とっても優しいのも魅力なんです。ちょっと運動できないとこがまた可愛くて。あ、顔もいいですけど、胸がDカップくらいでちょっとした膨らみがたまらんのですよ。学校のマドンナ的存在ですし、俺には高値の花ですけれど!俺は彼女と付き合って、結婚して、✖✖✖して、生活するだなんて、キャーッっすよぉ!毎夜は同じベットの中で眠って!毎朝、ヨーグルトをアーンッして、お互いの口にスプーンを入れて、2人の甘い生活の妄想が止まらない!!』
ふむ。
『気持ち悪いな、君』
『男が恋したら、気持ち悪いもんだ!誰だって恋する乙女って表現をする!恋する男子って、字的にも気持ち悪い事を神様は分からないのか!?』
『…………そうだけど、君の本性はとても気持ち悪い。とはいえ、君の願いを受けたわけだ。神様として応えてあげよう』
神様はバカに付ける薬でも、取り出したかの如く。カプセル状の薬を2つ、男に渡した。それを受け取り、ドキドキしながら質問をする。
『もしかして、惚れ薬!?これを川中さんに飲ますと……俺に惚れちゃうとか!?』
『そーいうのじゃないんだけど』
『ちぇー、使えない神様だ』
『まぁまぁ、話は最後まで聞きなって。惚れ薬ではないが、”理想とする異性と必ず付き合える”薬だ。能力は、”毒読独退く”』
スタイル:科学
スタイル名:毒読独退く
スタイル詳細:
薬剤型の科学。2錠で1セットであり、赤色の薬と青色の薬でできている。自分が赤色の薬を飲むと、自分が思い描く女性と出会った時、理想通りに付き合いができる。青色の薬は赤色の薬の効果を消す、解毒効果を持っている。
『ただ注意点がある。赤色の薬を飲むと、理想以外の異性とは付き合えない。それを解除するため、青色の薬があるわけだ』
『青色っているのか?』
『飲んでみないと分からないよ。まぁ、やってみれば良い』
そうして、男はこの場で赤色の薬を飲んでみた。
そして、起きる。1人の高校男子。
「んがぁ……なんだった?一体……」
手にしていたのは、赤色の薬のカラと青色の薬。夢の中と思うか、そう思っていた。
いや、今日一日くらいは、現実と思い描いて。
学校へと登校したのであった。
◇ ◇
「おかしい」
男子は、バス通学であった。
何かがおかしいのだ。
「普段なら他校などの、学生でいっぱいのバスなんだが……」
その偏りが明らかにおかしい。目も、鼻も、耳も狂っているのか。男の存在しか感じ取れない。ウチの女子制服を身にまとった、男子。汗っぽい色の臭いに、香水でも変えた?などというやり取りの会話。
学生だけではない。そこら中、男ばかり。こんな男ばかりの風景は初めてだった。
そういえばと思ったが、母親はなんか知らんけど、コンビニに出掛けるとかの書置きを残して、朝は会っていない。パン食っての登校。そこから数えても、女に会っていない。
「いや、超ウケるんだけど」
「だよなぁ」
普段、仲の良い女子生徒が座っている席で、男っぽい会話が。もしやと思った。
『○✖高校前ー○✖高校前ー』
いつものバス停に停まれば、学生達は当然のように降りていく。男子生徒ばかりに思えるが、なんで数人は女子のスカートを履いているんだ!?気色悪い!!
とはいえ、自分も降りる。
ヤバイ、おかしい、今日。
「もしや、この薬の影響か?」
魔法の薬だと半信半疑で飲んでみたが、実際マジで起こるとキレたくなる。自分が思い描く女性と出会った時、理想通りに付き合いができる能力と、神様は言っていたが。
ひょっとすると、
「思い描く女性以外、俺は男性と認識しちまう薬なのか!?」
その考察、わずか1時間もかけずに当てるのは素晴らしい。
その通りである。
異性とは付き合えないという注意点を、考えていけば、異性にならなければ付き合いようがない。ルールから外れるのだ。
男子は、唾を飲み込んだ……。頭がおかしくなりそうだ。いや、もうおかしいのだ。
なんじゃそりゃと、発狂しかける。すぐにコンビニに行き、グラビアアイドルの表紙とか、この際、紐を付けられたR_18指定でも構わない。手に取って女をそこら中、捜した。だが、ない!
「!な」
な、なんで!グラビアアイドルが男に見えるんだ!?どうなってるんだ!?
漫画の女の絵も、ラジオから流れる女性の声も、全てが男に感じてしまう。嫌だ!なんだこれは!!
「た、助けてくれぇぇっ!」
どこかに、女性がいることを信じて、走っていく。
この幻想どうやって振り払えるのか、こんな理不尽があってたまるか!
その時、
「あ!そうだ!青色の薬!あれが解毒薬と言っていた!あれはポケットに……」
薬を取り出し、こんな狂った世界から抜けようとした時、怒声が彼に届いた。しかし、その怒声は太い男の声ではなく、相対的に極めて可憐な人に思えた声。
「コラーー、万引き犯!」
パニックになって、週刊誌を持ち逃げした男子に走ってくる女性店員。
「万引きなんてどーいうつもり!?」
「うあああぁっ!?」
色々な意味でドキんとした。女性に出会うわ、犯罪もするわ、神様がクソだとか。
「君と出会えて良かったーー!」
男子はパニックになりながら、年上の女性コンビニ店員に抱き着いたのであった。
「は、はぁっ!?へ、変態!なにこの変態!」
「君が理想の女性なんだ!俺は君だけが女性に見えるんだ!」
「あ、朝から変なこと言わないでください!!」
その後、まぁ。色々とだ。
謝罪や賠償金などの処理もあり、女性店員も責任を取らせる形でこの男子生徒と付き合いを始めるのであった。この事故の後、男子は青色の薬を飲んで無事に、男だらけの世界から解放されるのであった。
めでたし、めでたし、
「渡す薬を間違えちゃったけど、良ければ良いよね」
「よくないですよ、アシズムさん」
神様のミスも無事、取り返せる展開となりました。
ここはめでたしじゃないね。