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フェレイラの目的

全く話が思い浮かばなかった……(-_-;)

「それじゃあ、まずは名前だけ挙げちゃうね」

「あぁ」

「フェイに指示を出したのはセトちゃんだよ」

「……」


 フェレイラの挙げた名前を聞いたカケルが思ったのは「やっぱりか」である。


「あんまり驚かないんだね」

「ある程度は予想してたからな」

「へぇ」


 少し考えればある程度は推測できる。噂を聞きつけて依頼を出したというのはまず間違いなく嘘だ。ミカエルにも話した事ではあるが、それだけの理由で依頼を出したのなら正真正銘のバカである。数日とは言っても行動を共にしたカケルには、フェレイラがそこまで短絡的な行動を起こすような人間とはとても思えなかったのだ。


 とすれば、誰か断り切れないような相手に懇願、若しくは指示をされたと考えるのが自然だろう。カケル達がカンビオで関わった相手なんてフェレイラを除けば一人しかいない。それプラス、フェレイラとある程度交流があることを考えればセト以外に思いつく人物はいなかったのだ。


 カケルとしては、その二人とは別に第三者がいる可能性も考えはした。しかし、そこまで行くと可能性が無限に広がっていってしまうので、とりあえずはセトがフェレイラに何か言って自分達と接触するように仕向けたということで完結させていた。その予想は見事に的中というわけだ。


「既にセトちゃんまで怪しいと思ってたわけだね」

「あそこまで二人が仲良さげじゃなきゃそう思わなかったんだけどな」

「それが演技っていう可能性は考えなかった?」

「フェレイラはともかく、セトの態度は演技に思えなかったんだよ」

「なるほどねぇ。――ってちょい待ち。なんでフェイはともかくなのさ」

「え? 商人なんて騙してなんぼの職業じゃないのか? 大商家の当主っていうくらいだからフェレイラも普通に嘘ばっかついてんのかと思ってたんだが?」

「オッケー。まずはカケルっちのフェイに対する認識を修正する必要があるみたいだからちょっと話し合おうか」


 そんなわけで、フェレイラが自分は詐欺師じゃないとカケルに強く言い聞かせる。なぜそっち方面に直結したのかはわからないが、カケルとしてはフェレイラの面白い反応が見れて大満足だったようだ。


「さて。じゃ次はカケルっち達に接触した理由だね」

「あぁ」


 仕切り直すかのようにティーカップの紅茶を飲んで喉を潤すフェレイラ。そして静かにカップをソーサーごと机に置いて口を開く。


「カケルっち達も予想できてることだと思うけど。まず大きな理由としてはカケルっちだね」

「やっぱ《皇国の英雄》か」

「正解。その称号をカケルっちに取得させることで強大な力を皇国に向けられないようにしたってわけ」


 フェイにも愛国心があるからねと、おどけて見せるフェレイラ。


 確かに、カケル達は元からとんでもない力を持ってこの世界に召喚されている。その力が向けられればまず間違いなくその国は滅亡するだろう。尤も、フルール皇国に関してはその限りではない。今のカケル達とほぼ同等の力を持つ者も極々少数ではあるが存在する。まあ今のカケル達に知る由はないが。


「とりあえず、カケルっちを取り込んだら連鎖的に他の三人もって考えてたんだけど。こっちは完全に杞憂に終わったね」

「ま、カケルが行く場所にアタシも行くし」

「幼馴染だからね。カケルくんや夕姫ちゃんと離れるなんて選択肢はないかな」

「しれっと俺だけ抜き取んじゃねぇよ。悲しくなるだろ」

「ダイキっちはそういう扱いだよねぇ。弄られ役というか、ハブられてるというか」

「俺ってそういう認識!? 酷くねぇか!?」


 その後もダイキを弄りつつ談笑し、カケルは他にも目的があるかをフェレイラに問う。


「基本的には、カケルっち達を敵に回さないっていうのが出された指示だね。それ以外に関しては特にセトちゃんからの指示はなかったよ」

「そうか」

「でも、もう一つ言っておくよ。セトちゃんは確かにフェイに指示を出したけど。それはセトちゃんが考えたことじゃないんだ。言ってしまえば、セトちゃんは伝令役みたいなもの」

「まだその後ろに誰かいるのか……」

「まだいるんだよねこれが。セトちゃんとフェイの後ろにはラウルス家があるの」

「ラウルス家?」

「フルール皇国西部の辺境伯ゼピュロス・ウェール・ラウルス。その人の家。ちなみに、ゼピュロス辺境伯はフェイの実父だよ」


 さらりと驚愕の事実を言ってのけるフェレイラ。


 辺境伯とは、国の国境付近を守るために置かれた貴族のことだ。緊急事態に対して即座に対応しなくてはならない分、普通の伯爵よりも権限が大きい。また、その権限故に支配領域が広く、伯爵よりも一段上の地位とされている。


 フルール皇国の爵位は上から大公、公爵、辺境伯、伯爵、子爵、男爵となっている。一応、準男爵というのもあるが、名ばかり貴族であり、基本的には貴族として数えられていない。それでも権力を持っているだけ騎士や平民よりはマシである。


 何を言いたいのかというと、要するに「フェレイラの実家凄いよ~」ということだ。


「中々の御家に生まれたんだな」

「まぁね。フェイにとって父親であり、何よりプリマヴェーラ商会を裏から支えてくれてる人だからさ。カケルっち達には申し訳ないとは思ったけど、指示に従ったの」

「まあ別に実害があったわけじゃないからいいけどな」

「ただ言っておくと、カケルっち達に接触した理由は他にもあるし、どっちかっていったらこっちの方が多分重要なんだけど……」

「まだ何かあんのか?」


 やや驚きつつ疑問顔のカケル。正直言って目的は自分達を味方につけるところまでを想定していたカケルだが、よもやその先があるとは思わなかったようだ。その上、そっちの方が重要だなんて言われるとは考えられなかったのだろう。


「最終的な目標があったんだよ」

「それは?」

「セトちゃんとカケルっちの婚約」

「…………は?」

「だから、セトちゃんとカケルっちの婚約」


 あまりにも予想外過ぎる言葉に全員がきょとん顔である。《皇国の英雄》の称号を持ってもらうことによってカケル達という強大な戦力を手に入れようとするのはまだわかるが、さすがにカケルとセトが婚約するなんて想像の埒外だ。


「何で俺とセト?」

「二人に共通する者なんて一つしかないでしょ?」

「また《皇国の英雄》かよ……」


 ビシッと音がしそうな勢いでカケルを指差し、お茶目な表情で「正解!」というフェレイラ。カケル的には可愛いとは全く思えず、ジト目&うんざり顔で答えるしかない。


「しょうがないじゃん……だって当のセトちゃん本人が拒絶しないんだもん」

「拒絶しないって……カケルとの婚約を?」

「うん。セトちゃんもカケルっちのことは結構気に入ってたんだよ」

「セトが……」

「まあ夕姫っちとカケルっちがそういう仲になるっていうのは考えてなかったとは思うけど……」

「確かに、あの時カケルとそういう関係じゃなかったのは事実だけど……」

「セトちゃんは大のお父さん好きだからね。ゼピュロス辺境伯の指示なんて何でも聞いちゃうよ多分」

「どういうこと? 父親が人質にでも取られてるとか?」

「違くて。セトちゃんの父親はゼピュロス辺境伯なんだよ」

「「「「は!?」」」」

「そりゃそういう反応になるよねぇ」


 単純な話だ。ゼピュロスにはフェレイラの母親以外にも女がいて、その間に生まれたのがセト。それだけの話である。


「一応言うと、セトちゃんが正妻の子でフェイは妾の子ね」

「異母姉妹とか、複雑な関係だったんだな」

「そこだけ見れば確かにそうだね。もっと言うと、フェイの方が姉でセトちゃんが妹」

「訂正だ。複雑に過ぎる関係だな」

「でも、何とも思ってないよ。フェイもセトちゃんも可愛がられたのは間違いないから」

「当人が納得してるならまあいいか」


 話をまとめれば、セトは父親であるゼピュロスの指示でカケル達を皇国に取り込もうとした。しかし、セト自身が動くのは何かしらの不都合があり、結果フェレイラに頼んでカケル達を皇国に易々と連れ込んだというわけだ。


 フェレイラ談ではあるが、トゥルディオスの存在もやはり理由の一つとしてはあったらしい。誰だって怖いものは怖い。フェレイラのようにちょっと強いだけではどうにもならないことだってある。


 目的を全て知った上で、カケル達はフェレイラとの良好な関係は続けていこうと思っている。何事にもコネはないよりあった方がいい。


「さて、フェイが話したいことは終わりかな一応。何か訊きたいことはある?」

「フェレイラの話を聞いて、一つだけ疑問があったんだけどいいか?」

「うん。ここまで喋っちゃったんだし、今更一つ二つ何かバレてもいいでしょ。何でも訊いてよ」


 フェレイラの許可は出たので、遠慮なく訊くことにしたカケル。元からそんなものがあったかと言えば、まあないが。


「なんでセトはカンビオにいるんだ? 正妻の子なら普通に考えて、自分の領地か、カトレアにいるもんだろ?」

「あぁそれか。見張りだよ」

「見張り?」


 カンビオはメルラーク(カケル曰くクソ王国)領とフルール皇国領の中継地点であり境目だ。やはり、そこを監視する人間というのは必要になる。ただし、フルール皇国が最も信頼できる人間でなければ、それは務まらない。


 その判断基準として最も手っ取り早かったのが、《皇国の英雄》という称号を持っていたセトだった。何よりセト自身も、カンビオを守らなければ自分の母親が生まれ育ったオリュゾンの村が最初に被害を受けるというのがわかっていたからこそ、指示されるよりも前に自分から志願し、ギルドの受付嬢でありながらも第一線を守護する者としてカンビオに身を置いていたのだ。


「なるほど、フルール皇国をクソ王国に汚されないようにセトが守っていると」

「すっごいナチュラルにクソ王国って言ったね今。否定はしないけどちょっとくらいは取り繕っていいんじゃないかな?」

「ヤダね。クソはクソだろ」


 スパッと切り裂くカケルを苦笑交じりに見るフェレイラ。しかし、カケルの言い分を否定していないフェレイラにカケルを止めることなどできない。まあバレなければいいのだ。バレなければ。


「さて、カケルっち達が知りたいことは知ることができたかな?」

「あぁそうだな。気になってたことは聞けたし、満足だ」

「そっか。ならこれからは、フェイのこと信用してもらえるようにフェイがちょっと頑張るだけかな」

「それについては問題ない。フェレイラ程じゃないにしても、俺達も多少は人を見る目に自信がある。十分フェレイラは信頼できる奴だよ」

「ほぇ?」


 フェレイラは、驚きのあまり普段は絶対に口にしないような不思議な声を出してしまう。それに気付いて恥ずかしくなったのか顔を伏せた。


「ま、そういうことだからこれからもよろしくな。フェレイラ」

「うん。よろしくねカケルっち」


 そう言ってカケル達四人と握手していくフェレイラの顔は、童顔と整った顔立ちが相まって可愛らしい朗らかな笑顔だった。

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