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話すよ

「デケェ……」


 カケル達の目の前には、東京ドーム三つ分くらいの面積を持つんじゃないかと思わせる程に大きな建物があった。その建物の上部に、ひし形の中に丸と波のような曲線の描かれた紋章のようなものがある。ここに来るまでの間、至る所で見たものと同じだった。


「どんだけの品揃えがあったらこんだけデカくなるんだろうな」

「商会っていうかショッピングモールね。これもう」


 その辺を歩いていた人にプリマヴェーラ商会の場所を訊いて、教えてもらった道順通りに進んだ先にあったのがこのデカい建物である。元の世界にある大型ショッピングモールと何ら遜色ない敷地面積と外観だ。


「とりあえず入るか」

「そうね」

「ちょっと楽しみだなぁ」

「ガブ帰ってきたらここでデートしてみっか」

「「「ひゅーひゅー」」」

「無表情&棒読みで囃し立てんな。逆に超イラつくっつぅの」


 中に入った四人はまず店の多さに驚いた。武器屋があったり日用品店があったり、他にもポーションやらアーティファクトやらの専門店、鑑定屋に服飾店、食事処や甘味処まであった。色々羅列したが、まあぶっちゃけショッピングモールだ。


 商会の中をキョロキョロと見回しながら歩く四人はやはり目立つ。慣れたことだから気にしません。


「カケルっち」

「? フェレイラ?」

「おひさ~」


 後ろから名前を呼ばれ振り返ると、そこにフェレイラがいた。これまでと全く変わらない気さくな感じで手をふりふりしていた。


「待ってたよ~。カケルっち達」

「ずっとここで待ってたのか?」

「そんなわけないじゃん」


 フェレイラはさっきまで事務室にいたらしい。仕事をしている中ふと窓の外を見れば、カケル達が商会に向かって歩いてきているのが見えたようで、急いで下まで降りてきたということだ。


「にしては早過ぎない? アタシ達が商会の中に入ってからそんなに時間経ってないと思うんだけど?」

「ここは三階建てだからね。転移魔法陣が設置してあって、それを使っただけだよ」

「ふぅ~ん」


 望んだ階に一瞬で行ける分、元の世界にあるエレベーターよりも便利だ。途中で止まるってこともない。現代科学より役に立つんじゃね?


 とまあそんなことはさておき、カケル達はフェレイラの案内で事務室まで付いて行く。


 事務室にはフェレイラがさっきまで仕事で使っていたであろう書類の山がデンッと置かれた事務用の机と、来客に対応するためのテーブルとソファーがあった。


 カケル達がソファーに座ると、フェレイラが紅茶を淹れてカケル達の前に置き、自身は向かい側に座る。


「お構いなく~とでも言えばいいか?」

「お構いするよ~と返しておこっか」


 一口だけ飲んだ紅茶は結構美味しかったようだ。しばらくは紅茶を飲んだり、菓子を食べたりしながら談笑していた。


 いい感じに時間が過ぎ、そろそろ本題に入ろうとフェレイラが居住まいを正すと、カケル達も聞く態勢を整える。


「じゃあ、単刀直入にフェイの頼み事を聞いてもらおっかな」

「あぁ聞かせてくれ」

「いくつかあるんだけどね。まずは、カケルっち達“ラクテウス・オルビス”に、プリマヴェーラ商会の専属冒険者になってもらいたいんだ」

「専属冒険者?」


 商会専属冒険者。特定の商会と契約を結んで魔物の素材や採取物を納品する冒険者のことだ。

 商人のほとんどは、基本的に戦闘力が低いことが多い。それは戦闘の才に恵まれなかったというわけじゃなく(一部はそういう人もいる)、商人としての知識を取り入れるための勉強に割いた時間が、他の人よりも多いというのが主な理由である。フェレイラみたいに高い戦闘力を持つ方が異常なのだ。


 そんな理由から、それなりの大きさを持つ商会というのは、自分の商会にのみ素材を納品してくれる冒険者を求めている。そのためにできたのが専属冒険者ということだ。


 メリットとしては、安定して素材を入手することができることだろう。安定した供給源を持つというのは商会側として大きくプラスになる。それに、腕の立つ冒険者であれば、普通は手に入らないような貴重な素材を納品することが稀にある。まあ極稀ではあるが。それでも冒険者ギルドに依頼を出して高い依頼料を払うよりはマシだ。


「で、俺達はその貴重な素材っていうのを納品すればいいのか?」

「そこまではちょっとしか求めてないよ。ただ安定して素材を納品してくれる人が欲しいだけ」

「ちょっとは求めてんのかよ」

「当然でしょ? カケルっち達程の冒険者なら特にね?」


 わりと期待されているがために四人とも苦笑してしまう。なまじできないというわけでもない分、面倒くさいだろう。


「んで、その契約を結ぶにあたって、俺達のメリットは?」

「そうだね。わかりやすいので言えば、フェイの商会で買い物をする時は全て半額にするっていうのは考えてたよ」

「あまりメリットにならないな」

「だと思った」


 素材さえあれば、道具作製だろうと料理だろうとなんだってできる万能パーティだ。買い物で全商品半額というだけではメリット足り得ないだろう。


 たとえ買い物をするのだとしても、一生豪遊しても使いきれない程の所持金があるカケル達に半額の恩恵は全くない。素材の買取に色を付けるというのも同様の理由でメリットにならない。


「というわけでもう一つ」


 そこまでを確認したところで、片目を瞑りながら悪戯っぽく微笑し人差し指を立てるフェレイラ。


「フェイについて知りたいことを何でも教えてあげる」

「何でも?」

「うん。何でも」

「フェレイラの年齢とか好きな異性のタイプとかでもか?」

「おっとカケルっち。フェイに興味でもあるのかな?」

「カケル?」


 冗談の掛け合いが通じなかった夕姫が無表情&冷たい目でカケルを見据え、それを受けたカケルは慌てて冗談だと両手を上げる。普通に怖かったようだ。


「まあ冗談はさておき、その条件なら契約を結んでもいい」

「お、ホントに?」

「あぁ。三人が納得するならだけどな」

「なるほど。で、夕姫っちに織音っち。どうかな?」


 期待の眼差しで夕姫と織音を見るフェレイラ。「俺は?」という感じで自分を指差すダイキは完全に無視されている。憐れダイキ。


「カケルがいいっていうならいいけど……」

「大丈夫だって。カケルっちもさっきの言葉は完全に冗談だから。乗っちゃったフェイも悪かったよ。ごめんね夕姫っち」

「ホントに?」

「ホントだよ。俺は夕姫以外に興味ないから」


 安心しろというように頭を柔らかく撫でるカケル。それに対して頬を紅潮させながら「ならいい」と小さく呟く夕姫。その姿にキュンときたカケルが思いっきり抱き締めそうになったが、織音がそれを止めた。話が進まなくなるから。


「私もカケルくんがいいっていうならいいと思うよ」


 拘束系の魔法でカケルを縛り付けながらの言葉にフェレイラも苦笑しつつ頷く。その後、最後の一人に顔を向ける。


「ダイキっちはどう?」

「俺も別にいいぜ」

「おっけ。じゃ、契約は成立だね」


 フェレイラが作成した契約書にカケルがサインし、その写しをカケル達が貰って契約完了だ。


「さて、早速訊かせてもらおうか」

「うん。何でも訊いて」

「んじゃ、お前の背後関係を教えてくれ」


 カケルの問い掛けに寂しそうな笑みを浮かべるフェレイラ。これまで見たことなかったその儚げな雰囲気に、カケルは罪悪感を覚えてしまう。何とも思わない人間は気にせず切り捨てるし、敵対する者は徹底的に排除するカケルでも人並みの情はある。


「やっぱり、フェイのことは信頼してなかった?」

「完全にはな」

「だよね。下手に色々と隠しちゃったせいでカケルっちの信頼を得られなかったのかな」

「フェレイラには世話になったから悪いとは思ったんだけどな」

「ううん。これに関してはフェイが悪いよ」


 言葉を切って一度深呼吸し、意を決してカケル達に向き合うフェレイラ。


「じゃあ話すよ。フェイに指示を出してた人と、カケルっち達に接触した目的を」

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