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ミカエル

一週間以内じゃなくてジャスト一週間後の投稿になってしまうという……

「お見苦しいところを見せてしまい申し訳ありません」

「気にしてねぇよ」


 恥ずかしそうに俯き頬を赤らめるミカエル。その様は可憐の一言で言い表せるだろう。生み出した本人であるカケルですら息を呑むくらいだ。


 現在カケル達はギルドマスターの執務室にあるソファーに座っている。そのすぐ前に木製の机があり、それを隔てた向こう側にあるソファーにミカエルが座っていた。


「にしても。ミカエルがこんなところにいるだなんて思いもしなかったわ」

「私も冒険者登録をした当初は、こんな役職に就くとは思っていませんでした」

「冒険者登録もしてたのね」

「はい。ちなみにランクはSSです」


 ミカエルの言葉に苦笑するカケル達。配下であるにもかかわらず自分達と同ランクのミカエルを誇るべきか、主人という立場にもかかわらずミカエルと同ランクで落ちついていることを悔しがるべきか悩みどころだろう。


「それよりミカエル。翼、隠しっぱなしはきついんじゃないか?」

「あ。癖づいてしまっていたのでつい忘れていました」


 ふわりと羽根が舞い。気が付いた時にはミカエルの背中から翼が生え、同時にその頭上には幻想的な光輪が浮かぶ。これがカケル達の配下としての姿である。


「ミカエルが翼人種だってことを知ってる奴はいるのか?」

「いえ、基本的にグラズヘイムの天使達は翼人であることを隠して生活しています。国の重要機関や王侯貴族に近い立場で動いている者は特にです。ただ……」

「? 何だよ?」

「はい。どうにも私達の動きを探っている者がいるようで」

「大丈夫なのかよそれ」

「問題はありません。カケル様達の所在が明らかとなった今、私達が世界各地を飛び回る必要がありませんから。探るだけ無駄になるでしょう」

「まあお前が大丈夫だっていうならいいけど」


 その後は軽い近況報告をし合う。カケル達はこの世界に召喚されてから今現在の事までを簡単に説明し、ミカエルもそれに倣った話をし、その中でグラズヘイムに関する話題を掘り下げることになる。グラズヘイム攻略に関するランク制限はやはりミカエルが決めたことらしかった。


「じゃあ、グラズヘイムのランク制限は」

「はい。攻略される可能性はほぼないでしょうが、ゼロとは言い切れません。なので、ほとんどの冒険者がグラズヘイムへ挑戦できないように取り決めました。ちょうど冒険者の減少が危惧されていた時期でもあったのでそれを利用して」


 カケル達が拠点としていたグラズヘイム。ミカエル達守護者は、何としてでもここを守らなければならなかった。カケル達が戻ってくるその日まで。


 あらゆる手段を使ってグラズヘイムを攻略させないようにしようとしたが、全て無駄に終わる。あそこは危ないとか行ったら最後生きて帰れない等と噂を流したところで、一攫千金の夢を捨てきれない冒険者達はお構いなしに攻略へ乗り出すのだ。


 数年もの間、その勢いは衰えなかった。それどころか時が経つにつれて挑戦者は増える一方であり、攻略できていないとはいえ、守護者達としては気が気ではなかったそうだ。


 そんな中、カトレア支部の前ギルドマスターが生きて帰ったという報告が極端に少ないグラズヘイムの調査をすることになった。前ギルドマスターはその調査で命を落とし、空いたそのギルドマスターの席にミカエルが座ることとなったのだ。


 実力が最もある冒険者をギルドマスターにする風習がカトレア支部にはあったらしく、当時カトレアを拠点としていた冒険者の中で最高ランクである者の中からギルドマスターが決まることになり、それを好機と見たミカエルは全力を以てギルドマスターの席を勝ち取り、即座にランク規制を布いた。


 それからはグラズヘイムの攻略へ乗り出す者はいなくなったようだ。秘密裏に攻略を敢行しようとした冒険者達は、誰に知られることもなく迷宮内で命を落としている。それに関して把握こそすれども、知らぬ存ぜぬを通しているミカエル。


「そっか。私達のためにありがとうねミカエル」

「は、配下として当然のことをしただけです。それに何とかしようと動いたのは私だけじゃありません」

「わかってるよ。でも、目の前にいるのはミカエルだけだから。まずはミカエルにお礼を言っただけ」


 織音の言葉を受けてくすぐったそうにはにかむミカエル。その後談笑へと移行し、それも落ち着くと、これまで笑みを湛えていたミカエルの表情が真剣そのものになる。


「カケル様」

「何だ?」

「フェレイラ・エアル・プリマヴェーラ。彼女におかしなところはありませんでしたか?」

「最初から最後までおかしかったが?」


 カケルのすっとぼけたようなリアクションに対して、アニメのようにカクンと軽くコケるミカエル。すぐに咳払いし先程と同じ真剣な顔になる。


「訊き方が悪かったようなので、別の言葉で訊き直します。彼女は怪しい行動をとりませんでしたか?」

「何言ってんだミカエル。今しがた答えたろ」

「え?」

「最初から最後までおかしかった。徹頭徹尾怪しかったよアイツは」


 カケルからしてみれば、指名依頼をしてきたその時点からフェレイラのことを怪しいと思っていた。そもそも噂程度で流れている話を聞いて指名依頼をするなんて明らかにおかしな理由だ。噂というのは尾鰭がついて流れるものであり、それを聞いて指名依頼というのはどう考えてもおかしい。


 何より、依頼がタイムリー過ぎる。噂がその日の内に街中へと広まったことはカケル達も確認したが、それにしたって指名されるのが早過ぎる。フェレイラに何か目的があったのは確かだ。残念ながらそれが何かというのまではカケル達でも一つしかわからなかったが。


「一つ?」

「ミカエル。俺の容姿を見て真っ先に思い浮かぶものは何だ?」

「私の主です」


 即答である。ミカエル的には大真面目な回答だっただろうが、カケルが求めていた答えではなかった。


「個人的観点じゃなくて、フルール皇国の一国民としての立場から見てだ」


 そこで漸くミカエルも思い至ったようだ。カケルの問い掛けを聞いてハッとした顔をする。


「白髪赤目の英雄、ですか」

「そうだ。多分、それが目的の一つだろうな」

「なぜ……」

「わからん」

「ですよね」


 その後もあれこれと考えはするものの、確たる根拠はなく埒が明かないため、この話題はいったん終了となった。


「さて、長くカケル様達を拘束するわけにも行きませんし。そろそろ報酬の受け渡しをしましょう」


 ミカエルが再び翼と光輪を隠し、ギルド職員を呼びつける。来たのは最初にカケル達に対応した職員だ。その手には預けていたカケル達のギルドカードと小さな南京錠が付いた小箱を持っていた。


「まずはギルドカードをお返しいたします」


 持っていた小箱を机に置き、ギルドカードをカケル達に渡す。カケル達はカードを受け取り、ポケットに入れる。そして、職員がミカエルを見ると、ミカエルは一つ頷きソファーから立ち上がる。


 事務用と思しき机の引き出しを開き、そこから小さな鍵を一つ取り出す。カケル達の座る目の前まで戻ってきたミカエルが、鍵を南京錠の穴に差し込んで回す。カチリという小さな音と共に南京錠が外れ、蓋を開ける。中には白金貨が一枚入っていた。


 その小箱を中身が見えるようにカケル達の近くまでそっと動かすミカエル。


「こちらがフェレイラ・エアル・プリマヴェーラ様の指名依頼達成報酬。白金貨一枚となります」

「随分厳重だな」

「報酬の額が額ですからね。ギルドの規定に則った報酬の受け渡し方です。お納め下さい」


 カケルが白金貨を取り出す。その際職員がギルド金庫に入れるかどうかを聞いてきたため必要ないと返事する。ストレージがある以上、セキュリティという面ではギルドに預けるよりも自分達で持っていた方が遥かに安全である。


「では、これでフェレイラ・エアル・プリマヴェーラ様の指名依頼は完遂ということになります。それから、オリュゾンにおけるスタンピードの鎮圧とトゥルディオス討伐に関する報酬はギルド及びフルール皇国の方から出しますが、報告が上がってきたのはつい先程なのでこれから協議に入ります。しばらくお待ち頂いてもよろしいでしょうか?」

「あぁ」

「では、そちらの報酬に関しては遅くとも明後日には用意ができると思うので、ギルドまでいらして下さい」

「わかった」

「それから、近い内に皇城への招待状が届くと思います。心の準備だけしておいて下さい」

「マジか……」

「はい。マジです」


 また面倒なことになりそうだと肩を落とすカケル達。ミカエルとギルド内にいる職員や他の冒険者達の見送りを背に受けながらギルドを後にする四人。宿を見つけるまでため息が尽きなかったのは仕方ないかもしれない。

最近ダイキの影が極端に薄い。どうしてくれよう……

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