皇都カトレア
謝罪
前回、出来るだけ早く投稿すると言っておきながらこんなに遅くなってしまって本当に申し訳ありません。
ゲームとかをしていたわけではなく、単純に筆が進みませんでした。すみません。
次回こそは、一週間以内に投稿しようと思います。
「あともうちょっとでカトレアが見えてくるよ~」
フェレイラがそういうと、カケル達は馬車の小窓から顔を出す。森の木々に阻まれてよく見えないが、そこは夕姫の視力の高さが輝く。
「高い壁ね。魔物対策かしら?」
「一番大きな理由は戦争の備えだけどね。皇都はフルール皇国の中心地。そう簡単に攻撃させるわけにはいかないんだよ」
「けど、ちょっと暗い気がするのよね」
「暗い?」
夕姫の言葉に疑問を返す織音。
「皇都までの道は明るいんだけど、城壁の少し手前くらいから急に暗くなってるような」
「さすが夕姫っち。よく見えてるね」
「あれ何なわけ?」
「行けばわかるよ」
どこかの天使と同じようなことを言うフェレイラ。最近こればっかりだなというカケル達の呆れた雰囲気が馬車内に広がり、つい苦笑する四人。
それから三十分程で皇都の城壁がはっきりと見える位置まで進んだ一行の馬車。そこで夕姫の言ったこと、フェレイラの言ったこと、そしてラファエルが言ったことの意味を理解するカケル達。
皇都の西側にとてつもなく大きな塊が浮いていた。それも一つではなく複数の島が。その一つ一つに塔のような建造物があり、ある種幻想的な佇まいであった。
しかし、最も高い島には何があるかわからない。下からでは、いくら見上げてもその上にあるものが見えない絶妙な高さになっている。
「十年前に突如として現れた謎の大迷宮。正式名は特に決められてないけど、冒険者達の間では〝エデン”って呼ばれてる」
フェレイラの説明。だが、カケル達は別の事に思考がいっていた。
カケル達がHGO内で造った拠点“グラズヘイム”。自分達の住み心地や拠点防衛を考えた結果大規模な迷宮となり、HGOプレイヤーの多くがこの“グラズヘイム”を攻略しようと押し寄せたこともあった。そんなカケル達が創造した迷宮。皇都の西に浮かぶあの浮遊島こそが、その“グラズヘイム”である。
「んで、攻略は進んでんのか?」
「全くだね」
カケルの問いに即答するフェレイラ。
この“グラズヘイム”が出現した当時は、様々な冒険者が迷宮攻略に挑んだようだ。しかし、一区(島一つ分)の攻略すら碌に進まず、むしろ迷宮内のトラップ等で死者が続出した。それにより、冒険者人口の減少を危惧した冒険者ギルドカトレア支部のギルドマスターが、ランク制限を設けたらしい。
冒険者人口の減少を危惧する程とは一体どれ程の犠牲者数だったのだろうか。カケル達では知り得ないことではあるが、ぶっちゃけ攻略できないように試行錯誤したのはカケル達自身のため、この話に対する驚きというのは全くと言っていいくらいにない。
現在この迷宮に出入りできるのはSランク以上の冒険者のみ。これは事実上誰も入るなということだ。
大抵、一攫千金を狙う冒険者というのは中堅の冒険者達。ランクで言えば大体B・C・Dランクだ。A以上であれば上級冒険者として見られ、基本的に一つの依頼で生計を立てるのも難しくない。わざわざ命懸けで迷宮探索をして一攫千金を狙う必要がないのだ。それが死者続出の迷宮ならなおのこと。
よって、高ランクの冒険者というのは、趣味でもない限り迷宮攻略に乗り出すという愚は犯さない。
しかし、B以下の冒険者だと、一つの依頼で生計を立てるということはとても困難だ。そうなると、迷宮等での一発逆転を狙う者はかなり多い。新たな迷宮が発見されれば我先にと、馬鹿の一つ覚えのように迷宮探索を始める。そして、命を散らしていく。
Sランク以上の冒険者というのはかなり稼ぎがいい。それこそ、Aランク冒険者とは比べものにならない程にいい。迷宮を探索せずとも依頼報酬だけで余裕のある生活ができる。その分、依頼の難易度は高いが、それを熟せると思われたからこその、このランクなわけだ。
何が言いたいかというと、ここまで安定した生活が送れる人間が、わざわざ危険度の高い迷宮攻略に挑むことは滅多にないということだ。
結論。Sランク以上の冒険者は一攫千金を狙う必要がなく、それ以外の冒険者は迷宮への出入が禁止されている。つまり、この迷宮に挑む者はいないということだ。
「というか、一区の一階でほとんど死んじゃうもん。聞いた話だと、何が起こったのかもわからない内に体が切り刻まれるんだって」
この言葉でそっぽを向いた織音に気付いたのは、事情を知っているカケルくらいだろう。
そんな感じで色々と話していると、皇都の城壁にある大きな門が見えてくる。その前には入場待ちの人達による行列ができあがっていた。フェレイラの馬車はその横をしれっと通過していく。
「並ばなくていいのか?」
「フェイ程の商人になると順番待ちしなくても中に入れるんだよ」
貴族も基本的には入場待ちの列に並ぶ必要がないようだ。素晴らしきかな特権階級。カケル達はつくづくカンビオでフェレイラに会えたことを幸運に思っていた。こんな大行列に並ぶのは面倒なことこの上ないからだ。
荷物の検査等も済み、ようやく街への門を潜っていく。フェレイラの身元証明によってカケル達はカトレアへと無事入場。
「これは凄いわね……」
「あぁ」
「きれい……」
「そうかぁ?」
空気を読まなかったダイキは三人によって沈められる。そして、改めて街を見渡す。
門から続く大通りの両脇には澄んだ水が流れている。それだけではない。都市内の空中には至る所に水の輪が浮かんでいたり、水で形作られた魚のようなものが動き回ったりしている。
ちょっとした広場になっている所には、綺麗な彫刻から吹き出す噴水があり、都市全体が芸術家によって造られたかのような様相を呈していた。
「ようこそ。水の都カトレアへ」
カケル達(ダイキ除)が都市の様相に感心している中、フェレイラが門番兵に代わってそう言った。
「これは予想以上に凄いな」
「でしょ? この都市を造った初代フルール皇帝は芸術品が大好きだったんだよ」
中でも水魔法によって表現された芸術作品が好きであり、都市内の至る所にそれを展示することにしたそうな。特殊な魔法技術を使用して恒久的に保存することを可能としたため、カトレアは常に水のアートが楽しめるようになっている。それがカトレアを水の都と呼ぶようになった要因の一つだ。
「こういう街並み、アタシ結構好き」
「私も」
「気に入ってもらえたようで何よりだよ」
街をじっくりと眺められるようにフェレイラが馬車の速度を落とす。こうして冒険者ギルドへ着くまで心置きなくカトレアの景色を楽しんだカケル達。ダイキはギルドへ到着するまで終ぞ起きなかったため、カケルによって強制的に覚醒させられた。
馬車から降り、ダイキに荷物の番を任せて他の四人でギルドへと入っていく。そこでギルド内にいた何人もの冒険者達が四人を見る。
注目されても仕方ない面子ではある。フェレイラは大商会の長。夕姫や織音はその美少女っぷりから注目されないことの方が珍しい。だが、それ以上に注目を集めているのはカケルだろう。
フルール皇国の国民は、ほとんど例外なく皇国の英雄譚を知っている。であれば、その英雄譚に出てくる英雄と全く同じ特徴を持つ者が現れれば驚くこと間違いなしだろう。
「良かったじゃない嫌悪感を覚えるような視線を浴びなくて」
「こんな注目のされ方は好かん」
小声で愚痴を溢しつつ、フェレイラの後についてギルドの受付まで行くカケル達。
「冒険者ギルドカトレア支部へようこそ。本日はどのようなご用件でしょうか?」
丁寧な対応で迎える受付嬢。カケルが一歩前に出て依頼書とギルドカードをカウンターへと置く。予め馬車の中でフェレイラから依頼完了のサインを貰っているため、ギルドに提示するだけで特に手続きはない。
「依頼の完了報告だ」
「畏まりました。少々お待ちください」
フェレイラによる指名依頼ということとカケルのギルドカードに記載されているSSランクの文字を見て目を見開く。しかし、それも一瞬のことで、すぐに仕事モードへと戻る受付嬢。依頼完了のサインを確認し、専用のアーティファクトにカケルのギルドカードを入れる。
「え、えぇ―――――――――――っ!!?」
いきなりの絶叫。ギルド内の冒険者や職員達が何事かとカウンターに注目し、そんな中で受付嬢は叫んでしまうのだ。
「トゥ……トゥルディオスを討伐!?」
「「「「なにぃ―――――――――――っ!!!?」」」」
ギルドカードは身分証明に使えるだけあって記載されている情報の信憑性は高い。というより、正確な情報しか書かれない。つまり、とんでもない偉業というのはすぐに周囲の知るところとなるのだ。
「あれ? オリュゾンのギルドから報告上がってきてないの?」
「上がってきてますよ。正確には上がってきました。ですけどね」
カケル達の横合いから声がする。そちらを見れば、一人の少女がいた。桃色の腰まで届く程長い髪を持ったかなりの美少女である。微笑みが崩れず、優し気な雰囲気を身にまとっていた。
「あ、ミーちゃん」
「お久しぶりですね。フェレイラさん」
「うん。ホント久しぶりだねぇ」
そして、少しの談笑の後、いきなり登場した美少女がカケル達を見る。先程よりも三割増しで笑みが深まっていた。
「カケルっち。この娘はギルドカトレア支部のギルドマスターだよ」
「初めまして。ミカエルといいます。よろしくお願いしますね」
「あぁ。よろしく」
ミカエルと名乗る美少女。かなり若そうなのにギルドマスターとは世の中わからない。まあ、カケル達の笑顔が若干引き攣っているのは、そのせいではないが。
「依頼完了の手続きはこちらでしておくので、フェレイラさんは商会に戻ってあげてください。皆さん心配していましたよ? 予定以上にフェレイラさんが帰ってこなかったので」
「おっとそうだったね。じゃ、諸々よろしくねミーちゃん」
「はい。任されました」
「カケルっち達も、時間があったらフェイの商会においでよ。というか来てね。お願いしたいこともあるし」
「あぁ。いずれ行くよ」
そのままフェレイラはギルドから去っていく。それと入れ違いにダイキが中へ入ってきた。首を傾げながらカケル達のいる場所へと来て、ミカエルを見て目を見張る。
「ここでは何ですから、場所を移しましょうか」
「そうだな」
ギルドの奥にある階段を上り、ギルドマスターの部屋と思しき執務室へと通されるカケル達。その間、終始無言である。
扉を閉め、ミカエルがカケル達を正面から見据える。しばし、見つめ合った後、ぽろりと一筋の涙を溢すミカエル。
「ぐすっ……よく、ご無事で……カケル様―――――――っ!」
勢いよくカケルに抱き付き号泣し始めるミカエル。その頭を優しく撫でるカケル。夕姫と織音もそれに続いて肩に手を置いたり、背中を撫でたりする。ダイキはその光景をただ見ているだけだ。
ミカエル。彼女はカケル達の配下の一人である。
夕姫を描いてもらいました。
予想以上に可愛く描いてもらったのでニヤケてしまった作者です。




