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皇国の英雄

2/24 セトとゼピュロスの会話内容を一部変更しました。

    後先考えずに書くからこうなる←

 カケル達がフェレイラの秘密を知った翌日。


 土砂降りだった。昨日までの爽やかな天気とは打って変わって最悪の天候だ。雨の中での移動は困難を極める。視界は悪く、地面はぬかるみ、思うように進むことができない。


 勿論、チートの権化たるカケル達をもってしても土砂降りの中を歩き続けるというのは難しい(できないわけではない)。しかし、今回は馬車があるため移動は不可能と判断し、まだ昼時ではあるが今日は野営することが決まった。


 移動を中断してすぐに織音が土魔法を使って簡易的な馬小屋を作る。その間にカケルがストレージからテントを二つ取り出して設置。フェレイラもいることから男子と女子にわかれて使うことにしたようだ。


「びしょ濡れだ……」

「とっとと体拭こうぜ。このままじゃ風邪引いちまう」

「だな」


 適当にコートやらシャツやらを脱ぎ捨ててストレージに放り込み開放的になる。男のパン一なぞどこに需要があるのかわからないが、いずれにせよ見る必要は微塵もないため体を拭く過程は丸々カットである。


 再びストレージから取り出した乾いた装備を着込む二人。六錠程の空間に男だけというのは中々むさ苦しい、それががたいのいい男なら余計に。まあこの二人はそんなこと全く気にしないだろうが。


「は!? ラファエルがいた!?」

「あぁ。俺達をずっと探してたそうだ」


 カケルはダイキに伝えていなかった様々なことを今の内に話していた。新たな称号に夕姫との進展、配下及び拠点の存在等を事細かに話しておく。


「つぅことはあれか。ガブもいんのか?」

「多分な。それにラファエルが皆って言ってたから、他の奴らもいるはずだ。いなかったら伝えられてるだろうしな」

「そっかぁ。ガブがいんのかぁ」

「そういやお前、アイツにお熱だったな」

「カケルもいい配下を生み出してくれたぜ!」

「頼むから程々にしといてくれよ」

「夕姫と一緒に寝たくせに、どの口が言ってんだよ」


 古来より“口は禍の門”という言葉がある。何気なく言った言葉が元で災難を招き、身を滅ぼすこともあるから、ものを言うときには慎重に言うべきだという意味の言葉だ。


 今のダイキはまさにそれだ。ダイキからすれば売り言葉に買い言葉だったかもしれないが、カケルにとっては触れてはならないことである。


 それを証明するかのようにダイキのこめかみにゴリッと冷たく硬いものが押し付けられる。咄嗟にダイキは両手を上げて降参のポーズをとる。だが、今のカケルにそれは通用しない。絶賛降参中のダイキにカケルの無慈悲な言葉が浴びせられる。


「このまま側頭部から風穴を開けられるか、脳髄を爆ぜさせるか。好きな方を選ばせてやる」

「どっちにしたって死ぬだろそれ!?」

「お前に生きる選択肢はない」

「理不尽過ぎる!」

「何してるの二人共?」


 ダイキの命の危機に救いの女神が降臨。すぐさまダイキは突き付けられた銃から離れ、今しがた入ってきた女神・織音に縋りつく。


「助けてくれぇっ!」

「きゃあっ!?」

「あばっふッ!?」


 いきなり腰に抱き付かれた驚きでボルト発動。急な電撃に痺れたダイキを即座に蹴り飛ばす織音。咄嗟とは言え、ボルトに続けて蹴ったくるという鬼コンボに少々ひいてしまうカケル。


「何なのいきなり!?」

「ダイキの変態性が発露した」

「その対象に私を選ばないでよ!」


 気絶しているダイキに向けて有らん限りの罵詈雑言を浴びせる織音。さすがのカケルも死人に鞭打つような行動(注・ダイキは死んでいない)を諫め、そしてダイキに同情してしまった。自分が元凶ということは遥か彼方の棚の上にぶん投げている。


「何してんのよ」

「すごい賑やかだねぇ」


 織音が落ち着いて少ししてから夕姫とフェレイラもカケル達のいるテントへ入ってくる。夕姫は状況を見て正確に何が起こったか把握して呆れ顔。フェレイラはただただ純粋に面白いことが起こってるなぁという感覚の笑顔だった。


「どうしたんだ? 全員揃って」

「カケルっちに話しておきたいことがあってさ」

「そうか。なら、ちょうどよかった。俺も訊きたいことがあったんだ」

「フェイに?」

「あぁ」

「じゃあ、お先にどうぞ。フェイの話は長くなっちゃいそうだから」


 長くなりそうな話って何だ? そんな疑問を抱えつつも、オリュゾンの村から考えていたことをフェレイラに質問することにする。


「そうか。じゃあ先に訊かせてもらおう」

「うんうん」

「フェレイラ。オリュゾンの村人が言っていたセト以外の英雄ってどういうことだ?」

「何だ。質問ってそれか」

「それってお前……」

「あぁごめんごめん。フェイが言いたいのは下らないって感じのことじゃなくて、フェイが話したいことっていうのがまさにそれだったから」

「そうなのか?」

「うん。是非ともカケルっちに聞いてほしいんだ」


 そう言いながら悪戯っぽく微笑むフェレイラ。訝し気に思いながらも、自分が知りたかったことが知れるということで大人しく話を聞くことにするカケル。復活したダイキも含め、四人でフェレイラの話を聞く。


「じゃ、話してあげるよ。フルール皇国の(・・・・・・・)英雄譚を」


 やたらと「フルール皇国の」という部分を強調するフェレイラ。そして、話し始める。




 その昔。フルール皇国に未曽有の危機が訪れる。


 ドラゴンが大群をもって人の都市を襲い始めた。都市は大火に呑み込まれ、その中を逃げ惑う人々。それを嘲笑うかのように追いかけるドラゴン。ブレスを吐いて人を焼き、強靭な顎で人を噛み砕き、鋭い爪で人を切り裂く。


 燃え広がる炎。破壊される建物。蹂躙されていく人々。阿鼻叫喚。まさしくそのような状況だった。


 惨憺たる都市。その中で四人の実力者達が立ち上がる。


 一人は普通の人間。一人は翼人。一人は獣人。一人はエルフ。今この瞬間まで、全くもって交流のなかった四人組。


 四人は異常な強さを持っていた。一人一人がドラゴンと対等に渡り合い、降すことができる程の実力。異端な力だった。


 瞬く間に倒されていくドラゴン達。四百程のドラゴンが討伐されるのに一日も掛からなかった。


 ドラゴンを討伐しきり、人々が安全を確認して安堵した時には、その四人の姿はどこにもなかった。突然現れ忽然と姿を消した。


 人々は自分達を救ってくれたその四人を探し回ったが、終ぞ見つからなかった。


 救ってもらったにも拘らず、感謝すらできていないことに人々は落胆した。ならせめてと、人々はその四人の偉業を感謝の念を込めて語り継ぐことにした。


 他の者とは違う。その白髪と赤目という四人に共通する特徴と共に。




「以来。白髪と赤目を持って生まれた子供は、英雄の生まれ変わりとして周囲の人達に一目置かれる存在となるのでした」


 その言葉でフェレイラの語りが終わる。ぶっちゃけカケル達としては突っ込みどころ満載の英雄譚だった。


「色んな疑問が残るが一つ訊かせろ」

「何かなカケルっち?」

「何で白髪と赤目を持って生まれただけで一目置かれるんだよ」

「んふふ~。すぐにわかるって」

「は?」


 カケルは質問に答えないフェレイラに首を傾げる。そんな中、カケルの頭の中にだけ無機質な音声が流れる。


《フルール皇国の英雄譚を聞きました。条件を満たしたため、称号《皇国の英雄》を取得しました》


「はぁっ!?」

「どうしたのカケル!?」


 突然驚くカケルに驚く面々。勿論その中にフェレイラは含まれていない。それの意味するところは。


「フェレイラ。お前知ってただろ?」

「うん。だから聞かせたんだよ。フルール皇国の(・・・・・・・)英雄譚を」

「白髪赤目の奴が一目置かれる理由ってのはつまり――」

「そ。カケルっちがたった今得た称号が理由」

「カケルが称号を!?」

「どんな称号なの!?」



《皇国の英雄》

取得条件:フルール皇国に伝わる英雄譚を知り、白髪と赤目を持っている者のみ取得

効果:レベル上限解放。ステータス特大上昇。ステータス上昇率増中。

習得:なし

説明:フルール皇国に伝わる白髪赤目の英雄。同じ容姿的特徴を持つ者のみが受け継いでいくことのできる称号。



 説明のために自分で称号の効果を確認。それをありのまま伝えるカケル。最後に恨みがまし気な視線をフェレイラに叩き付けることは忘れない。


 この称号によってカケル達の今後が波乱万丈になるのだが、そんなことはまだ知らないカケル達だった。


~~~~~~~~~~~~~~~


 国境の街カンビオ。夜がしんしんと更ける中、とある場所にある小さな空間に白髪赤目の兎人セトがいた。目の前にはぼんやりと光る水晶玉。


『私だ』

「セトです。承った件について調べが終わりましたのでご報告を」

『うむ、ご苦労。早速頼む』

「はい。まずカケル様達とメルラークの繋がりについてですが、心配すべきことは何もないかと」

『理由は?』

「十日程前、メルラーク王国が勇者召喚の儀を執り行いました」

『……愚かな。あの禁術を行使したのか彼奴らは』

「そのようです。何とも暗愚なことですね」

『全くだ』


 セトの声も水晶玉から響く声も無くなり、小さな空間がしんと静まる。少しの時間が経ち、再びセトが口を開く。


「では、報告の続きを」

『頼む』

「既にお察しかと思われますが、メルラーク王国が行った勇者召喚の儀。それによってこの世界に召喚された者達の中にカケル様達が含まれていました」

『それで?』

「その場で各人のステータスを確認したようです。多くの者が通常よりも高いステータスを持っていましたが、カケル様達はそうではなかった。そのため、召喚されたその日にカケル様達は王宮を追い出されたようです」

『ん? それだと、セトが以前言っていた内容とは食い違うのではないか?』

「ここからは愚かなメルラーク王族の笑い話になるのですがよろしいでしょうか?」

『是非話せ』


 その声は明らかに楽しそうな雰囲気があった。堪えようとしているのだろうが、若干笑い声が漏れていた。勿論、セトはそれに関してノータッチである。


「畏まりました。話の前に一つ。ゼピュロス様は《超越者》の称号をご存知でしょうか?」

『当然だろう? この世界に生まれてきたからには是が非でも欲しいものだが。如何せん、私は条件を満たしていない。生まれた時には既にな』

「はい。ゼピュロス様もご存知のように《超越者》の称号は取得条件が達成不可能。人の手ではどうしようもないものです」

『うむ。生まれた時に全てのステータスが1000を超えるなんてことはどう考えても不可能だ』

「その通りです。そして、ゼピュロス様は《超越者》の称号の効果もご存知ですよね?」

『当然だ。その称号はレベルの上限を無くし、ステータスの上昇値が増える。レベルも上がりやすい上に、スキルも育ちやすい。極めつけはステータスが――まさか』

「お察しの通りですゼピュロス様。メルラーク王国には、ステータスが見えなかった場合、その者を弱者とする風潮があります。実際、ステータス値が一定以下の場合、ステータスは本当に見えませんので」

『つまり、彼奴らは……』

「はい。《超越者》の効果によってステータスが見えなかったカケル様達を弱者と罵り、王宮から追い出しました。戦力を求めて勇者召喚をしたにも拘らず、です」


 数瞬の沈黙。そして、


『ぐっ……ヌハハハハハハハハハハハハハッ!!』

「ゼピュロス様…くっ…笑い過ぎで、ございます…くふっ…」

『これが笑わずにいられるか! 彼奴らは本当に愚かな奴らよ! 自ら最大戦力を放り出すとは! ヌハハハハハハハッ!!』

「くっ…くふふっ……」

『セト! お前も思う存分笑うがいい! あの愚かな能無し共を! ヌハハハハハハハハハハハハハッ!!』

「もう、もうダメ…あは…あははははははははっ!」


 小さな空間に木霊す二人の笑い声。二人にとっては腹がよじれる程の笑い話なのだろう。セトに至っては冗談抜きでお腹を抱え、地面をバシバシ叩きながら全力で爆笑している。


 しばらく響いた笑い声も少しずつ収まっていき、セトも水晶玉の元へと戻っていく。


『カハァッ! まだ笑い足りぬが、これ以上…時間を無駄にぃっく…するわけにもいかんなぁっは……』

「後程、ご存分に笑っていただければと」

『うむぅっく…そう、しょうっぶふッ……』

「まだ落ち着いてらっしゃいませんね」

『いや…もう大丈夫だ。続けてくれ』

「畏まりました。これまでの調査から結論を言いますと、カケル様達はメルラーク王国と繋がるどころか敵対的な立ち位置ということになります。よって、以前生じた懸念はないといっていいでしょう」

『そうだな。ならば、その者達をこちらに引き込むのも容易かろう。後は英雄譚を聞かせれば』

「それに関してですが、問題はないかと思われます」

『というと?』

「カケル様達の傍にはフェレイラ様がいらっしゃいます」

『フェレイラが?』

「はい。指名の護衛依頼という名目でカケル様達と共に行動しています。そろそろ英雄譚を聞かせる程には親しくなっているでしょう」

『であれば、もう問題はないな。カンビオの街を出られるかと、セトの報告の後に思ったのだが』

「危ない所でした。カケル様達は王国の紋が刻まれた書状を持ってらっしゃいましたので、確実にフルール皇国への入国はできなかったでしょう」


 二人の声は、心の底から本当に安堵しているような声だった。尤も、カケル達程の存在でなければここまでの声は出なかっただろうが。


『国境を渡る際の書状には、本来国や王侯貴族の紋は刻む必要がない。そんなものを持って国境を越えようものなら、私は他国の間者ですと言っているようなものだからな』

「門が刻まれていれば、直接的ではなくても、少なからず国や王侯貴族と繋がりがあることになる。そんな者に国境を越えさせるわけはありません。門前払い、最悪その場で殺されます」

『それをわかった上で、敢えて書状に紋を刻み民を国外へ逃がさないようにする。能無しのくせに厄介なことをするものだ。それで命を奪われた人間が何人いたことか』

「しかし護衛ならば、その護衛を雇った主が全責任を負うことになる。それは同時に、雇った人間の元いた国を証明する必要がないということにもなる」

『フェレイラならば安心して任せられる。大商家の当主という高い地位を持っている以上、皇国側も文句は言うまい』

「フェレイラ様がカンビオにいらっしゃったことは幸運でした。最悪、私が同行しようと思っていたので」

『まあいずれにせよ。カケル殿達に関してはもう問題ないだろう』

「はい。その件に関しては心配することは何もないかと」


 そこでセトは仕切り直すように咳払いをする。


「では次に、世界中を飛び回っている翼人についてです」

『進展はあったか?』

「進展というより、現状報告になります」

『報告とは?』

「このところ。彼らの動きが活発化しているようです」

『何故だ?』

「理由は不明です。ただ、勇者召喚の儀が執り行われたのとほぼ同時期に活発化しているように思います」

『次から次へと厄介な……』


 心底億劫そうな声音で不平を洩らす。セトも積み重なっていく問題にうんざり顔だ。


「勇者召喚、謎の行動を起こしている翼人種」

『魔物の異常発生に得意個体の出現。これまで全くと言っていい程姿を見ることのなかった天災七竜の目撃例の急増』

「上げるだけでもキリがありませんね」

『あぁ。頭が破裂してしまいそうだ』

「心中、お察し申し上げます」

『使い方が違うぞ。お前も相当疲れているようだな』


 これまでの苦労を振り返り、二人同時に溜息を溢す。セトに関しては現地調査が多く、体力・精神面共にかなりの疲労が溜まっている。


「本日の報告は以上になります」

『ご苦労だった。体を壊さないように調査を進めてくれ』

「お気遣いいただきありがとうございます。ゼピュロス様も、くれぐれもご自愛ください」

『うむ』


 そして水晶玉の淡い光が消え、小さな暗い空間にセトだけが佇んでいる。明らかに疲労の滲んだ顔で。


 一度深呼吸をし、フードを目深に被る。そのままふらふらと空間を後にするのだった。

ありがとうございました。


基本さらりと見流すだけなので誤字脱字。文章がおかしいところ等、色々とあると思います。

ご指摘いただけるとありがたいです。

自分では気付けないところもありますので。

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