フェレイラの秘密
翌朝。支度をし、朝食を済ませてからカケル達五人は農業ギルドの受付へと赴く。
「おはよう」
「おはようございますフェレイラ様。ご注文の品は揃っています。既に指定された馬車に積んであるため、確認をお願いします」
「了解了解」
ギルドを出てすぐのところに停めてある馬車まで行く。ギルド職員と共に荷物の確認をし、問題なしとなると後は村を発つだけだ。
馬車を村の出口まで移動すると、村人達がカケル達の見送りのために集まってくる。その中から子供達が馬車まで走り寄ってきて、カケルの元に群がる。
「かけるー。もういっちゃうのー?」
「あぁ。俺達は旅をしてるからな」
「やだー! かけるともっとあそぶー!」
「かけるー。いかないでよー」
相変わらず子供に人気のカケル。正直言って何故自分がこんなにも好かれているのか全くわかっていないカケルだが、別れ難いという思いもありはする。ほんの少しの時間とは言え、触れ合いを通して絆されている。
「またいつかこの村に来るって」
「ほんとに?」
「あぁホントだ。だから、今回はこれでさよならな」
「またきてくれる?」
「絶対に来るよ」
「じゃーやくそくのゆびきりー!」
「おう」
定番の指切りでまた来る約束をし、ようやく村を出る。村が見えなくなるまで馬車の窓から身を乗り出して手を振るカケル達。立ち寄った村での一時。これもまた旅の醍醐味だ。
村を出立して三半時程。一行は当たりの見渡せる広い草原に腰を下ろして昼食にしている。爽やかな風が通り過ぎ、周りの草達を躍らせるその中で食べる昼食は本当に美味しいと感じる。
「あ、そうだ。カケルっち」
「んぁ?」
「カケル。ソースついてる」
夕姫がハンカチを取り出してカケルの口元についているソースを拭う。隠す気ゼロである。ここまでくれば、いくら脳筋のダイキとはいえ、カケルと夕姫の進展に気付くだろう。全員が呆れ顔である。
「んで、何だフェレイラ?」
「動揺すらしないんだね」
「何だそんな話かよ」
「そんなわけないじゃん」
そもそもソースを拭う前に話し掛けたのだから、そんな話なわけないことは誰にだってわかる。カケルは冗談だよと肩を竦めて続きを促す。
「昨日の内に教えられなかったし、フェイのステータス見せとこうと思ってね」
「あ? 何でステータス?」
「カケルっち。もしかしてフェイとの約束、忘れてる?」
「忘れてねぇよ。嫌だな。俺がそんな凡ミスするわけないだろ。覚えてるってちゃんと、うん」
「じゃあどんな約束だったか言ってみてよ」
「それは、アレだよアレ。ほら、アレだろ? えぇっと、確かフェレイラがアレするんだよな?」
「覚えてないね?」
「ごめんなさい」
頭を下げる。ハッキリ言って何のことだか全くわかっていないカケルだ。まあそれも仕方ないことである。昨日は色々とあり過ぎたのだ。スタンピードを単騎で鎮め、最強クラスの天雷竜を討伐し、何故かこっちの世界にいる配下と再会し、夕姫と心を通わせ合った。密度が濃すぎる一日だったのだ。
「素直でよろしい」
「で、マジで何だっけ?」
「フェイの能力を教えてあげるって約束だよ」
「おぉ。そんな約束もしてたっけ」
「思い出してくれたようで何より。とりあえずステータス見せるけど、他言しちゃダメだよ?」
「了解だ」
「皆も見たかったら見ていいよ?」
そう言ってフェレイラがステータスを表示させる。
フェレイラ・エアル・プリマヴェーラ Lv84
種族:ヴァンパイア
職業:《大商人Lv15》《魔術師Lv12》《槍聖Lv4》
HP:2460/2460
MP:1890/1890
AP:1060/1060
STR:1270
VIT:1130
INT:1560
MEN:1420
AGI:1380
LUK:100
スキル《言語理解》《心理之目》《吸血》《血液操作》《自動再生》《眷属召喚》《鑑定Lv8》《偽装Lv9》《魔力操作Lv7》《火炎魔法Lv9》《暴風魔法Lv6》《雷電魔法Lv8》《暗黒魔法Lv9》《詠唱短縮》《HP自動回復Lv5》《MP自動回復Lv6》《AP自動回復Lv4》《身体強化Lv4》《アイテムボックスLv7》
アーツ:《チャージフレイム》《ミーティア》《スパイラルスラスト》《サンダーガスト》《イラプションサンダー》
称号:《真祖》
BP 546pt
「「「「ん!?」」」」
「凄いでしょ?」
確かにステータス的には飛び抜けている。勿論、カケル達の基準からすればそんなに強いと思える程のものじゃない。カケル達が驚いているのは主に称号だ。四人を代表してカケルが訊く。
「お前、吸血鬼なのか?」
「そうだよ。人間と人間の間に生まれた吸血鬼」
「人の血、吸うのか?」
「そこは安心してよ。フェイは無作為に人の血を吸ったりしないから。何より、フェイは真祖だから血を吸わなくても生きていけるしね」
他にも、真祖は他の吸血鬼と違って日光を浴びても問題なく活動できるようだ。通常の吸血鬼とは色々と異なるらしい。
「で、やっぱアイテムボックスも持ってたわけか」
「うん。最初カケルっちにドンピシャ言われた時は本当に焦ったよ。ひょっとしたら偽装をすり抜けてステータスを見られてるんじゃないかなって」
「よっぽどの理由がない限り、他人のステータスを許可無く視ることはしないようにしてるんだ。アイテムボックスって単語は、まあ馴染みのあるものだったから出てきただけだよ」
「そっか。カケルっち達は不思議だね。この世界の常識を知らないかと思えば、普通は人が知らないようなことを知ってる。結構ちぐはぐだよね」
「色々と事情があるんだよ」
「ま、深くは聞かないよ。人のことにやたら突っ込むと嫌われるからね」
その後、フェレイラにアイテムボックスについて訊くカケル。
アイテムボックスはカケル達のストレージと似たようなもので、アイテムや装備品等を格納するためのスキルだ。ただし、カケル達のストレージとは違い、かなり制限がきつい。
種類は何種類でも入れられるが、重量の制限がある。カケル達の初期ストレージ容量と同じ十キロだ。加えて、アイテムボックスにアイテムを格納している時は意識の有無に拘らず魔力を消費し続ける。そのため、フェレイラレベルのMP自動回復がなければ使えない死にスキルとなる。
この制限があるから米はアイテムボックスに格納せずに馬車に載せている。一俵たりとも入れられないからだ。その代わりに、アイテムボックスの中は宝石や希少鉱石等で埋められているらしい。
ちなみに、アイテムを格納している時に魔力切れを起こすと、格納していたアイテムが周囲に散乱するとのこと。フェレイラが幼い頃、玩具をアイテムボックスに格納し、魔力切れを起こして辺りに玩具をばら撒いて何度も親に怒られたそうだ。
「ていうか、フェレイラって強いわね」
「さすがに夕姫っち達程強くはないけどね」
「アタシ達レベルが他にいたら、今頃世界は終わってるわよ?」
「それなりに現実味がある分、笑えないね」
笑えないと言いつつも苦笑はしてしまう。それだけカケル達がデタラメな強さを持っているということである。フェレイラとしては、カケル達が悪人思考に染まっていないことを良かったと思っている。
「ま、俺達はただ降りかかる火の粉を吹っ飛ばすためだけに強くなったって感じだからな」
「にしても、カケルっち達は強過ぎだと思うんだよね」
普通にブーメランである。フェレイラもこの世界の住人にしてはステータスが高い。単純な基準で言うと、フェレイラの強さは冒険者ランクSクラスだ。この世界に三桁もいない強さである。しかもレベルが84のため、まだまだ伸びしろがある。
昼食を食べ終えてもしばらく雑談をし、再び移動を開始する。皇都カトレアまで残り三日程だ。
ありがとうございました。




