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第7幕

「私の推測でいいなら話してもいい?」

「うん。勿論聞く。おっさんも聞けよ」

「ふん。赤神が言うのなら仕方ないな」

「彼女は二人が話しているように東京圏内にいるのは違いない。被害は東京の地で起きているわけだから。で、私は魔術に詳しいわけじゃないけど、何かしらの魔術を送りこむのなら、どこかの建物の屋上とかだと都合が良かったりしない?」

「それは魔術によるな。可能性がないわけではないが……」

「いや、信憑性はあるよ。これだけの広範囲で実害をもたらしているのだしさ。空を渡るほど強力なものを使っているのなら尚更。でも目立ってしまわない?」

「目立つ?」

「うん。例えばビルの屋上で魔法陣を描いていたとして、それを発動させた場合、その魔法陣が光ってしまうの。ほら、私の家の前で小さな魔法陣を描いてやったでしょ?」

「ああ~そんなことあったね~そうか。確かに目立ってしまうか……でも……」

「何なのだ? 端的に話せ。一刻の猶予もないのだぞ!」

「例えば真夜中は明るい場所、昼も人通りが多くて賑やかな場所でしていたら?」

「どういうこと?」

「東京の夜は眠らない。眩いネオンの中でなら発動の偽装工作もできるかも?」

「ふん。そうだとしたら子供が考えるような悪戯だな」

「でも一理あるよ。物事の真理は意外とシンプルなところにあって、人はそれに騙されやすい。雪、雪のその推理でいくとどの辺が臭いの?」

「か、歌舞伎町あたりかな……」



 脳裏に浮かんだ真相を遂に言った時、私は急に怖くなって声が小さくなった。でも確信がある。その確信が逆に何故だか私に恐怖感を与えていた。これは私の倫理的な推理によるものではない。第6感的な何かの導きによるものなのだ。剣山はそんな私を鼻で笑い、「ふん。いいだろう。どうせ赤神の御達しにもなる。上野、衛星をつけろ」と上野に命令をした。上野は未だに泣き濡れている星村に怯えながら警戒しつつ、私たちの近くのモニターをつけた。モニターに映し出されたのは上空から見た東京の街並みだった。



「これは動かせるの?」

「え? ええ。拡大できますよ。でもこれだけの建物の数、1日では……」

「雪、雪が動かしてみてよ! ここは“雪の勘” を頼ってみたいと思う!」

「う、うん。わかった」



 茜の笑顔に弱い私は自然と茜の願いを承諾し、衛星カメラを動かした。まるで夢のような瞬間である。警察の、それも国家レベルの衛星機器を使っているのだ。しかし私の心拍数がこれまでになく高まっているのはそんな喜びからではない。私の手は自然と歌舞伎町の雑居ビルが幾多も建ち並ぶ地域へとカメラを動かしていった。わかる。彼女のいる場所がわかるのだ。時刻は夕刻の5時頃。陽が沈み始めた頃合い。オレンジ色に染まる街並みの中。とある小さな雑居ビルの屋上。夢で見た景色。壁に寝そべっている彼女が映像に映し出された。屋上には彼女が描いたと思われる魔法陣の白線がその敷地いっぱいに引かれていた。



「!?」



 EVEの姿を確認した私たちは一同に驚愕して言葉を失った。余りにも呆気なく正体不明の敵を発見することができたのだ。この未曾有の大災害をもたらしたとされる魔女は木製の大きな杖を持って気持ち良さ気に寝ていた。そしてその素顔も露わになっており、皮肉にも不思議なくらいの美しさに溢れていた。




「ほら! ウチの事務長は偉いだろう! おっさん謝れ!」

「あ……ああ。馬鹿にしてすまない。しかしこんなに簡単に暴けるとは……」

「いいえ。礼に及ばないです。それにこれはほとんど勘のようなものだし……」

「よし! 後は討伐に向かうだけだね! 車だせる?」

「ああ。敵が眠っている今が狙い時かもしれない。アイツは呼ばなくていいか?」



 剣山は星村を親指で指さした。星村は泣き止んでいたが俯いていた。



「ねぇ? 私が術を解いたらアンタはイヴに加勢するつもり?」

「いいえ。しないわ。でも剣山に協力しようとも思わないわ」

「ん。わかった。じゃあここで留守番するのはどう?」

「?」

「アンタの大切な教え子を殺すことはしない。ここに連れてくるから私と彼女を信じて待っていてくれる?」

「………………」

「どうなのよ? おばさん?」

「ええ。わかったわ。ただしその約束、破ったらただではおかないわよ?」

「お~怖いね~」



 茜はおどけながら星村にかけた術を解いた。動けるようになった星村はなんと意外にも落ち着いていた。不自然に動き始めた剣山の影も元に戻った。茜と交わした約束を守ると言うのだろうか? 気がつくと茜が床の上に魔法陣を描き始めた。描き終わると、続けて茜は魔法の説明を始めた。



「ここに“移転神術”を敷いた。向こうで同じものを敷けば一瞬でそこに移動ができる。一段落したらここに彼女を送りこむ。どうよ? これで納得してくれる?」

「こんな高度な術……貴女は一体何者だと言うの……?」

「アンタと同じ魔女♪」

「ふん。コイツの見守りはHMO関係者じゃない者に任せる。まぁ状況が状況なだけに何をしでかすかわかったものじゃないが。“赤神たちの力”を信じてみよう」

「了解です!」

「さ、イヴさんに会いに行きましょうか!」



 茜の一声で私たち一行は歌舞伎町へ向かうこととなった。不思議な感じだが、いつの間にか私と茜が一行の主導権を握るようになっていた。

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