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この作品には 〔ガールズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

水槽の魚とミルクティー

作者: 千歳.

透明な水槽に入れられた魚は、死ぬまで水槽の外には出る事が出来ない。

ただ、他の数匹の魚と水中に揺らめく人工の草と一緒に生きて死ぬ。

もしかしたらそこには、他に灰色の砂利が沈んでいるかもしれない。

水は汚いかもしれないし、自分以外の魚は生きていないかもしれない。

何であれ、狭い世界に生きて、狭い世界の中で死んでいくのだ。

空の広さも地上の広さも海の広さも知らないまま、その生涯を終える。






ぽちゃん、と音を立てて紅茶に垂直に飛び込んだ砂糖が沈んでいく。

立て続けに3個がダイブし、少しだけ角が崩れ、溶け込んでいく。

私は銀の細いスプーンでぐるぐると紅茶をかき回し、紅茶の渦を作る。

2、3回混ぜた後、スプーンの裏で固形の砂糖を押し潰した。

ぐしゃり、と形を崩し、ティーカップの底に沈殿する小さな粒たち。

その粒も銀色の楕円にかき乱され、紅茶に溶け込んでいく。

砂糖は少しずつ姿を消していき、最後には1粒も残らず消えていった。



「はい、」



角砂糖を3個入れた以外には、レモンもミルクも何も入れていない紅茶。

そんな甘めの茶色いだけの紅茶を、彼女はとても好んで飲む。



「・・・・ありがとう」



分厚い書物を読みふけっていた彼女は顔を上げ、銀色の眼鏡を外した。

眼鏡の銀色の細いフレームと、あまり日焼けをしていない色白の肌。

それらのコントラストはとても綺麗で、私の視線を釘付けにする。

その白い指が白い陶器のティーカップに絡まり、空中に持ち上げる。

彼女の指と同じく白い喉が上下に動き、液体は彼女の体内へと吸収される。

彼女自らの意志で彼女の体内に取り込まれる紅茶が、心底羨ましい。

私だって彼女の体内に吸い込まれて吸収されて、彼女の一部になりたい。






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