「知るか!」
あの……お久しぶりです。
ストックがあるのにアップする気力が出ない病にかかっていました(リハビリ中)
正確な病名をご存知の方は教えてください(ー ー;)
小さな声だった。それでいて聴く者の緊張感を一気に高めるような、背筋をゾクリとさせる呟きだった。
「アレン、さん?」
「見つけたぁぁっ!」
ギアを入れ換えるのと同時に、アレンがペダルを目一杯に踏み込む。ホイールからぱっと煙上がり、カーマインが一直線にストライダーに突っ込んでいった。
反応はしたものの、ストライダーはカーマインの一撃を躱しきれなかった。もっとも、ヒートエッジがまだ十分な温度に達していなかったため、ストライダーは僅かに装甲を削られただけだった。
「それには人が乗っています!」
「マジかよ! おいアレン、そいつは生け捕りだぞ!」
「知るか!」
声を荒げてアレンが言った。切っ先をコクピットに突き立てるように、何度も何度も腕を振るう。ヒートエッジに熱が伝わるにつれてアレンの攻撃も苛烈さを増していくように見えたが、ストライダーはそれを防ぎ続ける。
「一旦退くんだ! そう動き回られちゃ援護もできないぞ」
ターゲットスコープを動かすサビーノの表情も険しい。二機は目まぐるしくポジションを変えながらもつれ合っていて、下手に撃てばカーマインを誤射しかねない。
「こいつは俺がやる!」
「ちっ。頭に血がのぼってるな、あの馬鹿!」
「僕がいきます!」
タイミングよく飛び出したパルチザンがストライダーの背後に回る。すると、それまで付きっきりだったカーマインからあっさりと離れ、ストライダーはパルチザンとカーマインから距離を取った。
『アレン・ウルフグラム、カ?』
「なっ!?」
その場にいた全員が凍りついた。仮にカーマインの存在を知っていたとしても、アレンがそのパイロットであることは公表されていない。
『死角ニ回リ込ム前、逆方向カラノ攻撃ガ増エル癖ハ変ワラナイナ』
「お前は、誰なんだ!」
アレンの怒号にも動じることなく、くぐもったその声は笑いをこらえるので精一杯なようだった。
『探シテミナ。アバヨ』
「ハイそうですかと、逃すわけないがだろう」
サビーノが引き金を引いた。ストライダーの脚部、その接続部を狙った銃弾がカーマインを掠めて飛んでいく。完全に隙を突いたかに見えた狙撃も、ストライダーはわずかに体を捻っただけで避けてしまった。
『鬱陶シイナ』
突然ストライダーがカーマイン目掛けて突っ込んでくる。アレンはヒートエッジを袈裟懸けに振り抜いたが、ストライダーは急停止してその一撃を躱すと、再び加速してカーマインの横をすり抜けた。
ストライダーは的を絞らせないよう小刻みにフェイントを入れながらセルリアンも抜き去ると、オベディー目掛けてアサルトライフルを振りかぶった。その攻撃に反応したサビーノはすぐにペダルを踏んだのだが、オベディーが思った通りに動かない。
ストライダーがオベディーのコクピット付近を銃床で殴りつける。そのまま素早くオベディーの背後に素早く回り込むと、ストライダーは陥没して歪んだ装甲にアサルトライフルの銃口を突きつけた。
『マタナ、アレン』
オベディーを後ろから蹴り飛ばすと、ストライダーはそのまま工場から走り去った。オベディーは身動き一つ取らずうつ伏せに倒れる。
「ちっ、逃すか!」
「待てアレン、サビーノが先だ! ユーキは乗ったままでいろ」
アレンは足をペダルにかけていたが、結局はストライダーを追わなかった。忌々しげに壁を一発殴ってからコクピットを出る。
「ユーキ、機体をうつ伏せにしろ。ゆっくりだぞ」
ドミニクの指示でパルチザンがオベディーの向きを変えた。アレンとドミニクは機体から下りてオベディーによじ登り、何か装置をいじっていたが何も起こらない。
「ダメだ、歪んでて開かねぇ。コクピット周りの装甲を引っ剥がしてくれ。そっとだぞ」
頭部を押さえながらオベディーに手をかける。力の加減に注意しながらパルチザンを動かして、もはやただの金属板と化した装甲を外す。
もう一度ドミニクが操作すると、今度はコクピットを開くことに成功した。
「フランコ!」
「ダメだ、下手に動かすな! 応急処置は俺がする、お前は通報してこい!」
スピーカー越しだったが、アレンとドミニクの緊迫した雰囲気が伝わってくる。いつもの軽い調子を微塵も出さず、ドミニクがきびきびと指示を出していく。
ものの数分で医療用の車輌が到着した。何人かがオベディーのコクピットに入っていき、すぐに医療スタッフとドミニクが担架を運びながら出てきた。
ドミニクの両手とサビーノの右半身が血で染まっていた。その光景にユウキとウィスも思わず息を飲む。
「ど、ドミニクさん、あのーー」
ドミニクがセルリアンに戻ったタイミングで通信を入れる。動揺のせいか、言葉はユウキの脳内をぐるぐると回るばかりで、きちんとまとまってくれない。
「この辺りにバグズの反応はもうねぇ。とにかく俺たちも引き上げるぞ」
「フランコさんは、大丈夫なんですか?」
「息はあった。だが……浅い傷ではなかった」
アレンが振り絞るように口を開いた。
「アレン、お前は病院いってこい。ユーキとウィスちゃんもついてってくれるか」
「ドミニクさんはどうするんですか?」
「俺は機体の回収の手続きやら本部への申請やら、こっちを片付けてから追っかける」