「いや、動かない?」
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これからインフルエンザの予防接種へ行ってきます……
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ユウキたちは向きを変え、反応があった建物まで戻った。当然ながら建物は封鎖されており、搬入口と思われる大きな扉にもシャッターが下されている。
サビーノのカウントで、まずはパルチザンがシャッターを破り、その後ろから残りの三機も屋内に侵入した。
「ここは……ドックか?」
海側にも出入り口があるようで、貯水槽のような海水のプールが敷地の半分近くを占めている。
わずかに波打つプールの両舷には荷物の積み下ろしをするための設備がずらりと並んでいた。結局輸送されなかったものなのか、至る所にうず高くコンテナが積まれている。
「何も、いないか?」
警戒しながら周囲を見渡しても、これといって特別な何かがあるようには思えない。
「あそこ」
ウィスが指差したのはひときわ大きなコンテナの山だった。その言葉を信じ、ユウキはシールドを構えて機関銃の銃口をコンテナに向ける。
「おいおい、さすがにこれ以上はマズいぞ」
サビーノが慌てて止めようとするのも聞かず、ユウキがトリガーを引いた。弾丸は四つのコンテナに命中。空いた穴から中身が溢れ落ちてくる。
ユウキとウィスにはそれが何なのか分からなかったが、アレンやドミニク、サビーノには心当たりがあった。
「駆動系の部品か」
「この辺は外部装甲の工場だよな。ってことは……」
四人の目がコンテナの山に向けられる。穴が空いたのは上の方のコンテナだけで、下二つのコンテナには弾痕こそあれ穴が空いてはいなかった。
オベディーがライフルを構え直す。セルリアンもガトリングキャノンを展開しようとした瞬間、コンテナが内側から弾けて、それはゆっくりと現れた。
バグズ独特の六本脚のシルエットながらも、その機体のデザインはどのバグズとも似ていなかった。前情報の通り、アイメンドールと同じく脚の先にはホイールがある。
雪のように白い装甲は、ローカスタよりも堅牢そうに見えた。バイザー型の大きなアイガードが頭部の半分近くを覆っている。
装備は左腕と一体化した鎌状のブレードと右側にマウントしたアサルトライフル。六本脚の生える下半身はコックローチより大きめで、ミサイルの発射口らしいものも見えた。
「あれが……ストライダー?」
「何にしても、さっさと倒してーー!?」
四人が突っ込もうとした時だった。背面から機銃が展開してきてストライダーの両肩に乗り、合計三門の銃口がパルチザンたちを同時に狙う。セルリアンとオベディーはすぐに交代して、近くにあった設備の陰に身を隠した。
「ちっ!」
「障壁、展開!」
パルチザンとカーマインがそれぞれのシールドを掲げる。結果を言えば、前面に展開した障壁の術が広範囲を覆ったおかげで、カーマインはシールドを含めて一発も被弾せずに済んだ。
「この攻撃はじきに止む。保たせてくれ」
「はいっ」
カーマインは左腕を下ろしてから、右腕を軽く振るった。右腕の手甲からヒートエッジが伸びて、みるみるうちに灼けるような赤に変色していく。
カーマインのギアを入れ替えると、背中に二つ並んだスラスターに火が入った。アレンは目一杯にブレーキを効かせながら、その時を待ってじっとモニターを睨みつけている。
しばらくするとアレンの見立て通りに銃撃が止み、ユウキは左手を引っ込めて障壁の術を解除した。
同時にアレンがアクセルを踏み込んだ。スラスターで加速したカーマインが、ストライダーとの距離を一気に詰める。
振り下ろしたヒートエッジが目標を袈裟懸けに切り裂くかに見えたが、結局カーマインはヒートエッジを中途半端なところで止めて、ストライダーの横を通り過ぎていき、倒れ込んだ。
「おい、どうしたアレン!」
自分で仕留めるために照準を合わせようとしたドミニクは、その異変にすぐ気がついた。
「ちくしょう、制御が効かない!?」
「なんだこれは。機体が、重い……いや、動かない?」
ドミニクとサビーノも各々の機体を動かそうとレバーを動かしたりアクセルを踏んだりするのだが、機体がパイロットに抵抗しているかのように、なぜか思った通りに操縦できない。
「おい、さっさと逃げろアレン!」
「ダメだ! こちらも動けない」
膝をついてうずくまるカーマインに、ストライダーがゆっくりと近付いていく。
左手に持ったマシンガンを向けようとするのだが、やはりその動きはぎこちなく、ストライダーにあっさりと払い落とされてしまった。
まるで処刑を執行するかのように左腕のブレードを高々と掲げたストライダーは、振り下ろす直前になって急にカーマインから距離を取る。
直後、マギアマグナムから放たれた銃弾がドックの壁を貫通した。
「動けるのか!?」
「こちらは問題ありません」
パルチザンがカーマインとストライダーの間に割って入る。ストライダーはアサルトライフルを掃射しながら後退していく。
後方のカーマインに流れ弾が当たらないよう障壁の術を展開しつつ、シールドを構えたままパルチザンはストライダーの後を追いかけた。
「ストライダーは僕が!」
「絶対に無理するなシンドウ! そいつは普通のバグズじゃない!」
「分かりました。深追いはしません」