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「何か、変」

ここまで読んでくださった方々、ありがとうございますm(_ _)m

SAOを見ながら「ここまで綺麗にフラグが立つのを見たのはいつ以来だ?」と思いつつ、

なぜか無性にカレーが食べたくて仕方ない楠たすくです。


ご意見ご感想、ブクマに評価、キーマからグリーンまで、なんでもお待ちしております!

「このエリア、作戦達成率がずいぶん低かったんですね」


 マップと送られてきたデータを比較していたユウキが、あごに手をあてながら言う。


 作戦完了したGエリア以外は、昨日で大抵どこも侵攻度八〇パーセント前後まではいっているのだが、Bエリアだけは作戦が六〇パーセントほどしか済んでいなかった。


「死傷者こそ出ちゃいないが、中大破の数が他よりもかなり高いみてぇだな」

「アンタら、Bエリアらしいじゃねぇか。ヤツに出会(でくわ)さないといいな」


 アレンのもとにプライベート回線が入る。カーマインの隣にいる、黒に近いグレーのオベディーからの通信らしい。顔は表示されていないが、アレンはその声に聞き覚えがあった。


「お前、ザウルか」


 機体こそオベディーになっているものの、黒に近いグレーの塗装や背面にマウントしてある柄の長い斧など、コンペティションで見たオベディーⅡの特徴と似たものがある。


「いつぞやは世話になったな。あれ以来、ソールはクビになるわ、ロースペック機に逆戻りだわ、なかなか散々な目に合ってるんだぜ」

「お前に聞きたいことがある。作戦後に時間を作ってほしい」


 アレンはザウルの無駄話に付き合ったりしない。要点だけ伝えられて、ザウルはやれやれと肩をすくめた。


「ったく、俺が逆恨みするようなみみっちい人間だったらどうすんだよ。まぁ生きてたらまた会ってやってもいいが、そん時は一杯奢ってもらうぜ」

「そんな時間はない。それより、今のはどういう意味だ。ヤツとは何だ?」

「聞いたことないのか? ホイール付きのバグズだよ」

「見たのか!?」


 突然アレンの声量が上がったので、ザウルの方は思わずビクリとしてしまった。


「俺も直接見たわけじゃないから、詳しいことは知らねぇ。ただ、ヤツにやられたパイロットに知り合いが昨日はBエリア担当だっただけだ。聞いた話じゃ、ただのバグズとは比べもんにならない強さだったらしいぜ」

「そうか……詳しい時間は後で連絡する」

「あ、おい!」


 ザウルはさらに言葉を続けようとしたが、アレンから一方的に回線を切られてしまう。


 もう一度話そうかとも思ったが、自分もそろそろ出発しなければいけないことに気づいて、結局ザウルは何もしなかった。




「へぇ、目標(ヤツ)がここにいたとはねぇ」

「他エリアに移動している可能性もあるが、とにかく警戒だ」

「ストライダーの噂はオレも聞いたことあったが、アンタらの狙いだとは思わなかったぜ」


 工業地域の外れだったGエリアに対して、Bエリアにはトート・インダストリーの本社工場、その中心が割り振られていた。


 景観こそ似てはいるが、廃工場と化した建物には最新の機材が設置されている。


「ストライダーというのはホイール付きバグズの呼称ですか?」

「あぁ。高機動重装甲のバケモノだとか、破壊してもすぐ復活する幽霊バグズだとか、噂は絶えないな。常に数十体の手下を引き連れたバグズの女王だとか、ヤツを目にすると金縛りにあう、みたいな話まであったな」

「ひっでぇ話な。尾ひれはひれに、胸びれまで付いてるじゃねぇか」


 呆れながらドミニクが鼻で笑う。サビーノが言っていた噂話を鵜呑みにするつもりは全くなかったが、ユウキはずっと黙っているアレンが気になって、自分も警戒を怠らないよう気を引き締め直した。


 作戦開始時刻になり、四機は指定された区画へ入っていった。


 この辺りは前日に制圧したとはいえ、当然ながら一晩経てばバグズも移動する。戦闘は散発的に発生するものの、バグズを着実に撃破しながら奥へ奥へと進んでいく。


「今日は随分大人しいな」


 サビーノから通信が入ってもアレンはじっと前だけを見ていた。アレンは昨日と打って変わって大人しく、初めから前衛をパルチザンに任せている。


 見ようによってはサボっていると言われても仕方がないほどに、発砲の機会が少ない。


「雑魚に割く余力はない」

「虎視眈々、いや、牙を研ぐ狼ってところか?」

「なんでもいい。ヤツを見つけたら好きにさせてもらう」

「ま、この辺にはもういないのかもしれないな」


 割り当てられた地区の制圧はあらかた終わり、レーダーに映る付近の赤い点も残り僅かしかない。


「何か、変」


 工場地区を抜けて、海に面した倉庫区画までやってきた時だった。突然ウィスが声をかけてきたので、ユウキはパルチザンの足を止め振り返る。


「変って、何がだ」

「ここ」


 ウィスがレーダーを指さす。ユウキがそこを見ていると、何も映っていなかった画面にパッと赤い点が現れた。


「これは……」

「どうかしたのか?」


 前を走っていたパルチザンが攻撃を受けたわけでもないのに突然止まったので、サビーノが何事かと通信を入れてくる。


「ウィスがこれを見つけました。いま送ります」


 ユウキが頷いてみせると、ウィスはアレンたちにもパルチザンのレーダー画面を送った。


「こんなところにバグズか? こっちのレーダーには何も出ないぞ」

「えっと、パルチザンのはちょっと特別製でして」


 オベディーのレーダーの感度を弄りながら、何も変わらない画面を見てサビーノが首を傾げる。


「これ、屋内ですよね。変じゃないですか」


 この地区のバグズは外を巡回しながら、付近を通る熱源体を排除するように行動していた。


 しかしウィスが見つけた反応は全く動く気配がなく、まるで工場内に隠れてやり過ごそうとしているかのように偽装している。


「確認すべきだ」

「俺もそう思うぜ。ま、見るだけタダだしな」

「……分かった。仕方ない、ドア代は割り勘だぞ」

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