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「因果な商売だよ、デバッカーってのは」

ここまで読んでくださってありがとうございます。

幸せって、なんなんでしょうね(笑)

ご意見ご感想、ブクマに評価、ほうれん草からチャーシューまで、何でもお待ちしてます!

 物資運搬用の巨大トレーラーが走ることも多々あったので通路はそれなりに広く作られていて、アイメンドールも余裕を持って移動できる。


 しかしそれは主要道路に限った話で、工場と工場の隙間はぎりぎり通り抜けられる程度の幅しかない。


 遠くの発砲音が断続的に反響しながら届くものの、しばらくは先行した二班が撃破したバグズの残骸や空薬莢がところどころに落ちているだけだった。


 昼間とはいえ、稼働していない工場地区は薄暗い。移動しながらフォーメーションの確認などを行い、アレンが前衛、ユウキとドミニクが中衛、サビーノが後衛ということで話がまとまった。


「最新鋭機の実力、期待させてもらおうかな」

「あんま悠長にしてると、いいとこ全部アレンに持っていかれちまうぜ」

「全然構わんよ。オレは安全第一主義だから、な!」


 オベディーのライフルから弾丸が放たれ、見事一メートルもない空中に浮かんだ小さな物体を撃ち抜いた。


「あれはメイフライ、監視役だ。ってわけで、ここから本格的に駆除を(デバック)始めていくぞ」

「了解」


 サビーノの言った通り、そこから先のエリアにはかなりの量のバグズが潜んでいた。その名に劣らず、叩いても叩いても湧き出てくる。


 ローカスタやコックローチのようにこれまで何度も遭遇してきたものもいたが、シュミレーターでしか見たことのなかった(タイプ)のバグズとも戦闘になった。


「グレネード装備、いったぞ」

「了解です」


 先行していたカーマインが横道に退避する。開けた視界のその奥では、報告にあったローカスタが既に銃口をこちらに向けていた。


 打ち合わせの通り、シールドを構えたパルチザンが前に出て、その後ろにセルリアンとオベディーが並ぶ。


 放たれたグレネードが着弾する直前、ユウキがシールドを中心に障壁の術を展開した。爆炎はおろか、破片の一つすらも後方に通さない。


「へぇ、すごい防御力だな、それ」


 サビーノが驚嘆する中、シールドの先をローカスタに向ける。アリスから光弾の術(バレット)の使用は極力避けるよう指示されているので、機関銃には実弾が装填されている。


 あいまいに照準を合わせたまま引き金を引くと偶然にもグレネードランチャーに命中し、ローカスタは誘爆に巻き込まれて動かなくなった。


「おまけに便利ときてる。こいつ(オベディー)にもそのシールド、付けたくなってきたぜ」

「あの、これは研究中の特殊な合金で作ったものなので、手に入れるのは無理かと……」


 嘘は言っていない。


「ほれ、団体さんだぜ」


 パルチザンに変わってセルリアンが前に出る。墜ちたローカスタのその向こう、通路の奥には渋滞を起こしているのかと勘違いしそうになるほどのバグズの群れが詰まっていた。


 レーダーは赤い点が所狭しと並んでいて、どの種類のバグズなのかをいちいち気にしていられない。


 セルリアンが背面に備え付けられていたガトリングキャノンを展開し、左腕に抱え込むように構える。右手でグリップを握ると八本の銃身が回転し、盛大な発射音と共に高速で連射を始めた。


 マシンガンよりも口径の大きな弾丸はローカスタの装甲すらも容易(たやす)く貫き、次々にバグズを破壊していく。


「ドミニクさん、前は単発式のライフル使ってましたよね?」

「アンタもスナイパーだったのか。いや、待てよ。コンペの動画みたが、あの時の装備は、銃っていうよりかはむしろ大砲だったよな?」

「状況とニーズに合わせた使い分けってやつさ。ま、元からばら撒く系の方が好みなんだけどな」


 バグズをあらかた片付けてガトリングキャノンを背面に戻しながら、ドミニクが笑って答える。


「へぇ、器用だな。オレはこいつの扱いで精一杯だ。弾代もバカにできんしな」

「そう! ホントそこなんだよなぁ。ありがたいことに今はスポンサー付きだし、ガンガン使わせてもらおうと思ってさ」

「無駄遣いはするなよ」


 横道からカーマインが飛び出してきたのと、バグズの残骸の中からコックローチ型が現れてこちらに銃口を向けたのはほぼ同時だった。


 すれ違いざまにコックローチの肘から先を切り落とすと、向き返ってヒートエッジを上段から振り下ろす。頭部と胴体を左右に切断されたローカスタは、しばらく火花を散らした後に爆発して破片を辺りにばら撒いた。


「それから、油断もだ」

「へいへい。じゃあ、もうちょい先まで行ってみますかね」


 付近にバグズの反応はない。四機はフォーメーションを組み直し、さらに工場の間を進んでいった。他の班とも連絡をとってみると、多少の被害はあるものの死傷者は出ていないらしい。


「これだけ大規模な作戦で死傷者ゼロはすごいですね」

「いくら資金が潤沢とはいえ、さっさとやられちまうような素人連中まで参加させると報酬やら修理費が無駄にかさんじまうからな。それなりに腕のたつ面子にしか依頼を出してねぇのさ」


 ドミニクは少し自慢気に答えた。普段のノリからは想像できないが、アレンもドミニクもこの業界ではそこそこ有名らしい。


「それに、オレたちは決して無理をしない。デバッカーにとって最も優先すべきは自分の命、だから安全マージンをしっかり取るの さ」

「なるほど。だから作戦達成率が想定ほど伸びていないんですね」


 ユウキは画面に表示されたマップを拡大してみる。予定していた作戦時間は半分を過ぎたのだが、工場地区全体の制圧は三分の一を少し超えたくらいしか済んでいない。


「下手に気張って死んでしまったら元も子もない。が、臆病者(チキン)では稼げない。因果な商売だよ、デバッカーってのは」

「ま、それでも俺たちはよくやってる方だぜ」


 ドミニクの言う通り、Gエリアだけを見れば作戦は順調に進んでいる。先行した二班は他エリアの班と大して変わらないのだが、とにかくこの班の制圧速度が突出していた。

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