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「こいつは提案だ」

ここまで読んでくださってありがとうございます。

忙しさにかまけて更新を忘れておりました……orz

「そういえばロジャーさんはどうしたんですか? 格納庫にもいませんでしたよね」

「おやっさんなら出張。他のデバッカーの機体を修理に行ってんだよ」

「そんなことまでするんですか」

「このご時世、ロジャーのようなフリーの整備士は珍しい」

「そーゆーこと。おまけに腕はいいしな。今日中には帰ると思うぜ」


 三度(みたび)客室を貸し与えられたユウキとウィスは荷物を部屋に置き、ディアナ社の制服に着替えた。ドミニクに誘われて食堂で夕飯を取っているとアリスから連絡が入り、四人は再び執務室に向かった。


「坊主と嬢ちゃんも一緒だったのか」

「ロジャーさん!」


 先にアリスの部屋に来ていたロジャーは、相変わらずの油がはねたつなぎ姿だった。どうやら二人の話は済んでいるようで、アリスはいつになく真剣な表情で組んだ手を口元にもってきている。


「二人とも、トート・インダストリーは知っているかい?」

「当然だ」

「聞き覚えはあるんだけどなぁ……そんなに有名なのとこだっけ?」


 はてと眉間にしわを寄せるドミニクを見て、ロジャーはため息をつきながらやれやれと肩を(すく)めた。


「最近までアイメンドール関連、特に装甲の製造じゃシェア第一位だった会社だ」

「あぁ、分かったぜ。たしか、バグズの占拠されたスタンフォードの工業地区に本社工場があって、エラい目にあったんだよな」


 思い出せてすっきりしたという表情のドミニクに対して、今度はユウキが首を傾げることになった。


「あれ? バグズには輸送機のような移動手段があるんですよね」

「ネスト」

「そう、それだ。破壊されなかったバグズって、そのネストで毎回本拠地に戻るんでしたよね?」

「たしかにその通りだよ。ところが、トート・インダストリーを襲ったバグズは違ったんだ」


 アリスが机のデスクトップをこちらに向ける。ユウキが覗き込むと、画面には二つの記事が表示されていた。一方にはトート・インダストリー最大の工場がバグズの襲撃を受けたという見出しが(おど)っている。


 もう片方にはバグズが一箇所を占拠し続けていることへの様々な人物の見解が掲載されている。


「で、この会社がどうしたんだよ」

「出先で聞いたんだが、トート・インダストリーがデバッカーを集めているらしい。あの地区のバグズを掃除する作戦を、社長が自分で計画してるっつう話だ」

「それだけ大規模な奪還作戦であれば、軍の出番じゃないんですか?」


 ユウキは記事に目を通していたのだが、ドミニクの問いに対するロジャーの答えに再び疑問が生じてしまった。


 記事によると、トート・インダストリーの本社工場は部品の製造から製品の組み立てまで行っていて、この工業地域では最大の敷地面積を誇るらしい。


 これだけの土地を占拠しているバグズが十機や二十機ということはまずないだろう。いくら大きな会社の社長とはいえ、とても民間の手に負える話ではないのではないか、とユウキは首をひねる。


「いくら巨大とはいえ、工業地帯はあくまで企業、結局は個人のものだからね。特定の民間企業のために動いたとあっては、他からとやかく言われる原因になりかねない、というのが軍上層部の考えなんだよ」

「そういうものなんですね」

「てことは、その奪還作戦に参加しろって話だな」


 ドミニクの想像に反して、アリスは首を横に振った。


「命令じゃねぇ。こいつは提案だ」

「どういうことだ?」


 アレンがユウキたち全員分の考えを代弁する。まぁそうだろうね、とアリスは小さく笑ったが、すぐに真剣な表情に戻ってまた話し始めた。


「君たちがこの話に乗らなければいけない理由がないんだよ。ディアナ社(うち)とトート・インダストリーは提携しているから、会社として資金や物資面での援助をすることは決まっているんだ。デバッカーもそこそこ集まっているらしいしね」

「たしかに大した旨味はねぇな。ま、そういう回りくどい話はいらねぇからよ」

「メリットは何だ」

「……君たちは意外と息ぴったりだよね」


 アリスは変に感心したように呟いた。ユウキもこの話の要点が何かを考えているのだが、全く見当もつかない。


「一つはザウル・ヴァレンタだ。奴がこの作戦に顔を出す」

「ザウルってあれだろ、コンペの時の。ソール重工のパイロットがなんでこんなとこに出張(でば)ってくんだ?」

「奴はソール重工を退社して、今はただのデバッカーらしいぞ。今日会ってきた客もトートの話をザウルから聞いたらしいな」


 ザウルが元ディアナ社のパイロットだということはユウキも覚えていたが、それがどうしたのだろうかと考えている途中でハッと思いついた。


「仲介者、ですか?」

「よく覚えていたねユーキくん。あれからボクもずっと調べているんだけど、全く情報が出てこないんだよ」

「それは彼が嘘を言っていたということじゃないんですか?」

「もちろんその可能性が高いんだけど、キレイ過ぎて逆に気持ち悪いんだよ。嘘なら嘘で真実が気になるしね」

「他の理由は?」

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