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異世界放浪機甲兵 継接のパルチザン  作者: 楠たすく
狡猾! 謀略の京都
55/78

「発条式突貫槍複合盾、名付けて『ピーシングネイル』じゃ」

ここまで読んでくださった方々、ありがとうございます。

これでもかと言わんばかりのネタバレタイトルにしてしまいました(笑)

ご意見ご感想、ブクマに評価、クリムゾンスマッシュからフォトンバスターまで、何でもお待ちしています!

「今そっちに武器を送ったんじゃ。メタルリザードを確実に討つための『爪』じゃよ。ウィス君、頼んでおいたものはどうなっておる?」

「もう出来た」

「素晴らしい! ウィス君は優秀なプログラマーじゃの」


 ウィスが静かなのはいつものことなのだが、それにしても大人し過ぎるということはユウキも感じていた。二人の会話を聞いて合点がいったユウキは時間稼ぎに集中する。


 ジルのランス捌きはどちらかといえば単調で、武器の大きさにも慣れてきたユウキは連続の突きをギリギリのところで躱し続けた。


「いい加減、当たーーぐぁっ!」


 攻撃が見切られつつあることに焦って闇雲にランスを振り回していたジルを、突然の衝撃が襲った。


 モニターから目を離してはおらず、確かにパルチザンは攻撃する素振(そぶ)りをみせていなかった。レーダーに目をやると、自機を表す青い点に敵機の赤い点が重なって紫色になっている。


「上かっ!?」


 ジルが振り仰ぐと、上空に翼竜型のロボットがいた。ラプトルキングとロボットは一本のワイヤーで繋がっているように見える。


 ユウキも驚いていた。何の前触れもなく、翼を広げた真っ白なロボットが空中に姿を現した。ロボットはすぐさま三本爪のアンカーを射出してラプトルキングの頭部を鷲掴みにすると、もう一方のアンカーで握っていたものをパルチザン目掛けて放り投げた。


「何だか知らないけど、取らせないよ!」


 地面に落ちたのは真っ黒なシールドだった。無理に動いたせいで|恐竜の左目(光線の発射口)にアンカーが食い込んだが、構わずにラプトルキングは照準をパルチザンに向ける。


 パルチザンがシールドを拾い上げるのとラプトルキングが光線を放つのは、同時だった。


「展開」


 ウィスの合図でシールドから青白い光の粒子が溢れ出る。直撃を受けたかに見えたが、光線はパルチザンに届く前に空中に霧散した。


「今の、まさか障壁の術か?」

「そう。シールドに術式を書き込んだマギアクリスタルが設置してある。クリスタルが小さいから、展開できるのはシールドを構えた一方向だけ」

「分かった、覚えとく」


 肘から先を覆うように装着された縦長の五角形のシールドは、拳側に向いた尖った方から二門の機関銃の銃口が覗かせている。


 モニターにはStanding-byの文字が表示されていたが、ウィスと双葉博士の準備の周到さにユウキが関心している間にReadyへ変わった。


「無事に渡ったようじゃな。発条(はつじょう)式突貫槍複合盾、名付けて『ピーシングネイル』じゃ」

「これならアイメンドールでもメタルリザードを討てるんですね!」


 パルチザンがシールドを、銃口を向けていることに気が付いたジルは、力づくでアンカーを振り(ほど)いた。パルチザンの射撃の方が僅かに遅く、放たれた小型の光弾はまたもランスに防がれてしまった。


「博士、この口径では命中しても決定打になりません!」

「さっき『爪』だと言ったじゃろ。ピーシングネイルの向きを変えるんじゃ。トランスヴァインとの接続は済んでおる」

「……こうか!」


 ユウキはパルチザンを走らせながら意識を集中してみる。双葉博士の言った通り、左腕に固定された時点でシールドは既にパルチザンと繋がっているようで、左手に今までとは異なる感覚があるのが分かった。シールドの向きが反転し、今度は平らな辺の方が拳側にくる。


「トリガーを引いて。一回だけ」


 シールドの中央から釘の先端のように鋭い金属が頭を出していたのだが、トリガーを引くと釘はシールドの中に引っ込んでしまった。


「もう一度トリガーを引けば、またピーシングネイルが飛び出す」

「なるほど、この距離で使っても意味がないのか」

「そう。密着して()って」


 ユウキは短く息を吐くと、一旦手を開いて小指から順にグリップを握り直した。ジルの呼吸を読むように、ラプトルキングの攻撃に意識を傾ける。


 ジルは上空から放たれたアンカーをバックステップで避けると、そのまま空を見上げてロボットに照準を合わせた。狙いすまして放ったはずの光線は、飛竜型ロボットに難なく躱されてしまった。


「一気に詰める!」


 ラプトルキングの注意が空に向いている間に、パルチザンが斜面を駆ける。ラプトルキングが暴れて多くの木が倒されたせいで森は開けて、パルチザンにとっては走りやすくなっていた。


 パルチザンに気付いたジルがとっさにランスを構えたが、それより一瞬早くユウキが真ん中のペダルを踏み込んだ。テールバインダーがほぼ垂直に展開して、縦に並んだスラスターが火を噴く。


 一気に加速したパルチザンは、ランスが振り下ろされた時には既にラプトルキングの懐に飛び込んでいた。


「貫けぇぇ!」


 真上にあるラプトルキングの右手へ、殴りつけるようにシールドをぶつけ、トリガーを引く。飛び出したピーシングネイルがダイノニウム合金の装甲を貫き、跳ね上がったラプトルキングの右手は内側から爆発して吹き飛んだ。


 パルチザンはシールドを構え直し、今度はラプトルキングの太ももにピーシングネイルを射ち込む。右足を破壊されたラプトルキングはもはや立っていることも出来ず地面にひれ伏した。


 パルチザンは四つん這いになっているラプトルキングの背に飛び乗るとマギアマグナムを構え、その左肩に銃口を突きつけ光弾を放つ。腕の支えまで無くしてしまったラプトルキングはバランスを崩し、ゆっくりとうつ伏せに倒れ込んだ。

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