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異世界放浪機甲兵 継接のパルチザン  作者: 楠たすく
狡猾! 謀略の京都
44/78

「俺たちもあれ、やってみます?」

前回が3章ラストだったにも関わらず、次回予告を載せるの忘れていました。

これから追加してきます。

最新話を毎週追いかけている、なんて特異な方のために、ここの前書きにも載せてみます。

さっき読んだわ!って方は、下へずずずいっとお進みくださいm(_ _)m




「今回は無駄にあっちこっち移動させられて……さすがの俺も疲れが抜けねぇぜ」

「お前たちはまだ休めるだろうが。俺たちメカニックはすぐに仕事だぜ。あの模擬戦で機体に影響が出てねぇか、確認しねぇといかんしな」

「おやっさんもよく働くぜ。つうかさ……今回、俺の見せ場少なすぎだよな」

「しょうがないね。主人公はユーキくんとウィスちゃんだし、彼らがいなくてもメインは近接戦闘タイプと相場が決まっているだろ?」

「くそぉ、ガンナー系が主役でもいいじゃねぇか!」

「射撃中心のキャラが目立つ回があるとすれば、それはフラグが立った時だ」

「勝手に死亡させるんじゃねぇよ!」

「新しい相棒は近親者かそっくりな他人、というパターンが多いね」

「やめろ、やめてくれぇ!」

「まったく、こいつらに任せてたら終わりゃしねぇ。次回、異世界放浪機甲兵 継接のパルチザン、『狡猾! 謀略の京都』 当然、俺たちの出番はねぇぜ」

 その部屋には窓がなかった。等間隔に配置された天井のライトは灯してあるものの、せいぜい「薄暗いと言うほどではない」くらいの光量しかない。


 棚や時計、デスクや椅子など、上品で落ち着いたデザインのものが並んでいる。派手さはないものの明らかに高級な調度品が配されているにも関わらず、絵画をはじめとする美術品の類は見当たらない。


「やはりあのような者にあそこを使わせるのはーー」

「くどいぞ」


 デスクに右手を乗せ、身振り手振りを混じえて熱がこもった口調で語る男を、椅子に腰掛けている老人が制する。その一言だけで、男は続きを言えなくなってしまった。


 それでも男が声をあげるのは、彼が抱いている老人への尊崇(そんすう)の念ゆえだろう。


「し、しかし、あの者は必ず貴方の道を(けが)します!」

「お前が言うことも分かる。だが、ここに見つけられるだけの腕を持つ者だ。その才気、にべも無く捨てるには惜しい」


 つい先ほど部屋を出ていった男を思い出す。大胆不敵、傲岸不遜(ごうがんふそん)、無礼、不敬……列挙すればきりがない。しかし、横柄(おうへい)な物言いの背後に、それを裏付けるだけのものを持っていたことも確かだった。


「いざという時は、私が……」

「それで良い、ギスティロ」

「全てはドクトルτ(タウ)の悲願のために!」


 直立不動の姿勢で言うと、ギスティロは部屋を出ていった。その様子を満足気に見守っていた老人、ドクトルτは、デスク上のモニターに映された図面を見て一人ほくそ笑んだ。





 一面の黒。次元転移特有の、天地が目紛(めまぐる)しく反転し続けるかのような違和感が一瞬のうちに過ぎ去った後、コクピットの全天モニターは闇に覆われていた。


 次元転移にもかなり慣れたユウキは、もうほとんど身体に不調を感じない。落ち着いて光の感度を調整すると、周りにぼんやりと壁らしきものが見えた。


「くっ!」


 どこか閉鎖された空間にいるのだろう、と考えた瞬間、モニターが真っ白になった。あまりの眩しさに思わず腕で顔を覆う。だんだんと明るさが自動で調整されていき、やっと落ち着いたところで再びモニターに目を向ける。


「あぁ……」


 その見覚えがある空間に、なるほど、とユウキは納得した。無機質なアスファルトの壁面、そこから伸びた赤や黄色のアーム。大野エネルギー研究所、その隠し作業場で間違いなかった。


「同じ世界に次元転移する場合は、前にいた座標にまた転移するものなのか?」

「分からない。でも、その可能性が高い」


 二人がパルチザンから下りると、ちょうど双葉博士がドアを開けて作業場に現れたところだった。竜成と薫の姿はない。


「やぁおかえり。そろそろ来る頃だと思っとったよ」

「なぜ?」

「勘じゃよ、勘」


 機械いじりをしている時の双葉博士は嬉々として若者にも負けぬほどの活力を溢れ出させるが、普段は今のようにニコニコと笑って好々(こうこうや)(ぜん)としている。


 前に来たときはそのような表情を見せる機会がほとんどなかったので、ユウキは少し新鮮に感じていた。


「お久しぶりです、博士」

「うむ。元気そうでなによりじゃ」

「博士は僕たちが転移してきてすぐに来てくださいましたけど、早過ぎませんか?」


 ユウキが素朴な疑問を投げかけると、双葉博士は懐から取り出した携帯端末の画面を見せてくれた。元から設定されていたであろうどこかの風景の壁紙に、時刻や明日の天気などが大きく表示されている。


 その画面の一番上、様々な記号が並んでいる欄に赤いマークが点滅していた。


「お前さんらが行った後、この作業場の床に重量センサーを取り付けたんじゃ。人が歩いたくらいでは反応したりせんが、(トン)レベルで圧力がかかると自動でわしのところに連絡が来るようになっとる」

「まさか、それも勘ですか?」

「科学者というのは己の勘を実証していくものじゃ。一応、お前さんたちが最初に現れた研究所裏にも、カメラを増やしておったがの。そっちはハズレだったようじゃな」


 防犯用に使えるから良いがの、と双葉博士は笑う。一旦ドミニクからの手土産を取りにコクピットへ戻った後、ユウキとウィスは双葉博士に連れられてエレベーターに乗りこんだ。


「さっき連絡しておいたから、薫たちもじきに顔を出すじゃろ」

「今日は研究所に来ていなかったんですね」

「四六時中ここに張り付いとるわけじゃないわい。仮にも学生じゃからな」


 一般向けの展示ブースの方へ到着すると、ちょうど竜成と薫が遠くから手を振りながら小走りでこちらへ向かってきた。


「ウィスさーん!」


 テンションが上がっている薫が勢いそのままにウィスに飛びついた。突然の熱烈な歓迎に驚いたようで、ウィスの目がいつもより少し大きく見開いている。しかしそれも一瞬のことで、すぐにいつもの表情に戻った。


「こら薫、廊下を走るんじゃない」

「いいじゃない。もう館内には誰もいないんだから」


 双葉博士も本気で注意しているわけではないのだが、ウィスを抱きしめて頬ずりするのに忙しい薫は小言をあまり聞いていない。ウィスは相変わらずの無表情で薫にされるがままになっているが、嫌がっているわけではないように見える。


「竜成も元気そうでなによりだよ」

「お久しぶりっす、ユウキさん。俺たちもあれ、やってみます?」

「いや、やめとこう。男二人だと暑苦しいというか見苦しいというか……」


 ウィスと薫を指差す竜成にユウキがげんなりした様子で答えると、二人は同時に吹き出した。

ここまで読んでくださった方、ありがとうございます。

また誰得おふざけプロフィールやろうかな……

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