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「ドミニクはボクに色気を期待しているのかい?」

ここまで読んでくださった方々、ありがとうございます。

微熱の楠たすく、今日のうお座は10位という微妙な結果でございました(笑)

「これから……って、どういうことなんですか? アレンさんたち、ディアナ社辞めちゃうんですか!?」


 だいぶ顔が赤くなっているユウキが、いつも以上に大きなリアクションをとった。アリスは何となく用件を予測していたようで、若干酔いが回り始めた者は放置して、次の言葉が語られるのをグラスに入った琥珀色の液体をちびりと舐めながら待つ。


「俺たちの目的について、どこまで知っている?」

「南極作戦で君の部隊を壊滅に追いやった謎の二本脚バグズを探している、というところまでだよ。いや、完全に人型ならバグズ側の敵性アイメンドールと呼称すべきかな?」

「ほぼ全部じゃねぇか」


 恐ろしい女だ、と小声で続けてロジャーもグラスを口に運んだ。顔はやや赤みを帯びているものの、真面目な話が出来なくなるほどではない。それはドミニクも同じで、実際彼のグラスの中身もあまり減っていなかった。


「一応コンペは終わったから、ここで契約終了してカーマインとセルリアンを受け取ってここを去る、と言うならそれは不可能ではないよ。でも仮にここを辞めたとして、君たちはこれからどうするんだい?」

「そこなんだよなぁ。バグズの出現頻度が高いからって北米大陸をあちこちうろついてたけどよ、闇雲にぶらつくだけじゃ見つかる気がしないわけよ」

「ボクの情報網の力を使いたい、という気持ちもあるわけだね」

「ま、有り体に言やぁ、そういうこった」


 ロジャーもドミニクも、アリス相手に腹の探り合いをするつもりなど毛頭ないらしく、はっきりと自分の意思をさらけ出していく。


「大きな仕事が一段楽したし、ボクも溜めていた問題を片付けなければいけないと思っていたところなんだ。君たちの前任のテストパイロットの件とかね」

「ザウル・ヴァレンタなら昨日話した」


 アレンがさらりと言うと、アリスは口元まで持っていったグラスを叩きつけんばかりの勢いでテーブルに置いて身を乗り出した。


「ど、どこで!? 昨日ということはオーランドかい!?」

「そいつ、アレンが模擬戦でやりあった相手だぜ」

「オベディーの? ということは今はソール重工にいるのか……」

「その慌てよう、もしかしてコレか?」


 難しい顔で眉をひそめたアリスに、ロジャーが意地悪そうな顔で親指を立てる。一瞬きょとんとした後、アリスは「こっちだよ」と笑いながら親指と人差し指を擦り合わせてみせた。


「前にザウルと賭けをしたことがあってね。その時の勝ち分をまだ回収し終わってないんだよ」

「賭けとはまた、色気たっぷりなお話で」

「おや、ドミニクはボクに色気を期待しているのかい? ……まぁ冗談はここまでにして、だ」


 デスクに肘をつき両手を組んで口元に当て、アリスが真面目な顔でそれぞれに視線を向ける。そもそも表情の乏しいウィスと酒で緩みきっているユウキを除いて、三人がアリスと同様に真剣な表情に変わった。


 一瞬で場の雰囲気が引き締まる。酔ってうるさくなるタイプではなかったことは、ユウキにとって幸運だったと言える。


「彼とは何を話したんだい?」

「ここを辞めた理由は金だと言っていた。ソール重工から直接引き抜かれたわけでなく、仲介者がいたらしい」

「仲介者か。それだけで絞り込むのは難しいな」

「会社のコンピュータに何か残ってたりしないかねぇ。通信のログとかさ」


 ドミニクの提案にアリスは黙って首を振る。


「あれでも最新鋭機のテストパイロットに選ばれるほどの男なんだ。簡単に足がつくような真似はしないさ」


 皆が黙り込んで良い手をひねり出そうと脳を回転させるが、そもそも難しい案件な上にアルコールの入った頭で妙案が浮かぶわけもない。やがて沈黙に耐え切れなくなったアリスが一気にグラスを煽って中身を空けた。


「ダメだ、今夜はやめにしよう! バグズの受け渡しが済んだら、君たちのお目当てを探すついでに調べてみるよ」

「僕が倒したバグズ、どっかに持っていくんですか?」


 普段より間延びした口調でユウキが口を開いた。それまでは場の雰囲気に押されてか黙っていたのだが、どうやら解放されたらしい。


「撃破したバグズは全て軍が回収する決まりだ。俺たちデバッカーは倒したバグズを軍に売って稼いでるっつうわけだ」

「そうなんですかぁ。あのバグズで機体を作れば材料費が浮いて、オバディーみたいに安くデザイアを製造できると思ったんですけど、そうもいかないですね〜」


 かなり酔いが回った様子のユウキは、残った氷をグラスの中でクルクルと回しながら誰ともなしに呟いた。そんなユウキの言葉を聞き、アリスがふと何かを思いついたようにピクリと頭を上げる。


「ユーキくん……」

「何でしょうか?」

「オベディーだよ、オ『ベ』ディー。いや、そこじゃなくて」


 ハッと我に返ったアリスがグラスを置いて勢いよく立ち上がる。皆の視線が集まる中、アリスは自信満々に言い放った。


「軍が各地でバグズを回収、その残骸から得た資源を極秘にソール重工へ横流し。これだよ、あれだけの機体をあの価格で出せる絡繰(からく)りはこれだったんだ!」

「軍上層部と軍需企業の癒着か。陰謀論好きなんて、けっこうロマンチックなところもあるんだな」

「参ったな。こっちも弱かったのか」


 鼻息も荒く熱弁を振るうアリスを、ドミニクとロジャーが生暖かい目で見ている。そんな反応を察してか、アリスはムッとした顔でビシッと二人を指差した。

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