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「さすがダイノニウム合金、なんともないな」

気がつけば1ヶ月近く放置してた……恐ろしいorz

ここまで読んでくださって、ありがとうございます!

「もうそろそろそっちのレーダーにも引っかかるとはずだよ」


 アリスがそう言ったその数秒後、モニターの片隅に赤い点が三つ表示される。


「いま出ました。後続はありませんか」

「あぁ。さっきも言ったけどはぐれバグズだからね、三機のままだよ」


 ラボの警備部に状況の説明と出撃の指示を済ませると、アリスは再びモニターの前に座った。その間にも遠距離からのミサイル攻撃はあったものの、第一波と同様にユウキが落ち着いて対処したのでパルチザンに損傷はない。


「そのはぐれバグズって何なんですか?」

「バグズの輸送艇、ネストの話はしたね。ネストはある程度の時間が経つと出撃したバグズを回収するんだけど、稀にネストの出発に間に合わず取り残されるものがいるんだよ。これが通称、はぐれバグズというわけさ」

「置いていかれると、どうなるの?」

「大抵はそのまま戦闘を継続するから撃破されるんだけど、今回みたいに休止(スリープ)状態で待機して近くを通りかかった車輌を襲う場合があるんだ」

「そろそろ用意しろ」


 アレンの言葉に皆が真剣な表情に一変する。モニターの端にバグズの機影が小さく映り込む。


 数回拡大すると、先頭の一機はそのシルエットからローカスタ型だと分かったが、その後に続く二機は土煙の中にいて判別できない。


 まだかなり距離があり、機関銃はもちろんのことマギアマグナムでも射程圏に届いていない。



 ローカスタの近くがパッと明るくなったかと思うと、火を噴きながら四発のミサイルが上空へ昇っていく。ミサイルはある高度に達すると上昇を止め、推進力に重力の勢いを足して加速しながらパルチザン目掛けて飛んできた。


「ウィス、テールバインダーを使う」

「分かった」


 移動中に試した時の感覚を思い出す。プラーナエクステンションは自分の身体を動かす感覚で機体を操作するためのものなので、アームドウェアには人体と同じ形状をしている。


 最初はユウキも苦労していたが、ウィスの補助もあって今では新しく取り付けられた「器官」をある程度は操れるようになっていた。


 背面にぴったりと付いていたテールバインダーが、地面とほぼ垂直になるように持ち上がる。


 縦に五機並んだスラスターは、両脚の一機ずつだけでパルチザンの跳躍力を格段に向上させられるだけのパワーがある脚部のスラスターと比べると小さく見える。


 展開と同時に各スラスターに火が入り、モニターには使用可能の文字が小さく表示された。


「いくぞっ!」


 右足で真ん中のペダルを踏み込む。それと同時にテールバインダーのスラスターが強く火を噴き、機体を一気に加速させた。


 急激に増したGに歯をくいしばりながら、ユウキはさらにもう一段階ペダルを強く踏んだ。



 突然スピードを上げた目標に軌道の修正が追いつかずに三発のミサイルが地面に激突する。


 炎の中から飛び出してきた最後の一機も、反対に向きを変えたパルチザンがばらまいた光弾に撃ち抜かれて爆散した。



 機体が後ろ向きになっている間は離していた右足をペダルに乗せ、再びスラスターを噴かす。重心をずらして右へ左へ蛇行しながらローカスタとの距離をぐんぐん縮めていく。


 やがてターゲットスコープの色が赤に変わり、ユウキはトリガーを引いた。マギアマグナムから放たれた光弾は、機関銃のものと比べても数段大きい。


 連続して撃ち出された二発の光弾は一発目こそわずかに外れたが、二発目はローカスタの左側の足を全て貫通した。片側の足を三本とも失ったローカスタはバランスを崩して倒れ、勢いあまって地面を転がってくる。


「一つ!」


 動けなくなったローカスタにとどめの一発を撃ち込んでから、銃口を別の目標へと移す。砂埃の中のシルエットもパルチザンに銃を向けている。


 とっさに一番左のペダルを踏み込んでホイールを収納、脚部と地面が接するのと同時にパルチザンは真横に跳んだ。数えきれない銃弾が今までパルチザンがいた空間を切り裂いていく。


「加速したまま通常走行に切り替えて無理に止まろうとしちゃダメだよ。下手をすると関節部が過負荷で逝きかねないからね」


 着地の瞬間にアリスの言葉が脳裏によぎる。スピードを殺さないよう跳ねるように走りながら、牽制を兼ねて機関銃を放つ。


 光弾を避けて土煙から飛び出してきたコックローチ型がアサルトライフルを連射してくる。ユウキも回避行動を取ったが、数発がパルチザンに当たった。


「左腕に被弾。問題ない」

「さすがダイノニウム合金、なんともないな」


 一発、二発とマギアマグナムを撃つものの、コックローチの移動速度が速くて当たらない。


「闇雲に撃っても当たらない、よく狙え」


 アレンがそう言っていたのを思い出し、少しだけマギアマグナムを撃つのを止める。残りの一機との距離がまだあるのを確認しつつ、コックローチの軌道をよく見る。


 方向転換しようとしたコックローチが僅かにスピードを落とした瞬間を逃さず、トリガーを引く。光弾が人型の上半身を貫くと、直後に六本足の下半身もろとも爆発した。


「ユウキ!」


 反射的にパルチザンが地面を蹴って跳び上がる。いつの間にか背後に回り込んでいた残りのバグズが何かを振るったが、パルチザンの足下で空を切った。


 テールバインダーを微調整して地面と平行になるようにしつつ、真ん中のペダルを踏み込む。全てのスラスターを噴かせて静止飛行しつつ、ユウキは改めて最後の一機に目を向けた。

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