「僕の話だ」
ここまで読んでくださった方、本当にありがとうございますm(_ _)m
ストックはあるけど、最近全然書けてない……
誰か、引っ越しの準備を手伝ってくださぁぁぁい!orz
「いや、技術的な細かい話は置いておこうか」
「た、助かります」
話を飲み込みきれていなかったユウキがホッとするのを見てアリスが苦笑する。ユウキとウィスはパルチザンに乗り込み、ラボの敷地の外へ向かった。
オーランドで取り付けた脚部パーツはそのまま付いているのだが、今はホイールを収納しているのでいつも通り歩いて移動している。
パルチザンの周りには撮影用のドローンが数台飛び回っている。
「じゃあウィスちゃん、順番に始めちゃってね」
「分かった」
装着したインカムからアリスの声が聞こえてきた。外を見ると撮影用のドローンがパルチザンの周りを飛行していて、背後のシートではウィスが書類の一枚目をペラリとめくる。
「で、何すればいいんだ?」
「まずは脚部ホイールパーツの強度テスト。そのまましばらく走って」
「了解。この、足元にあるのは?」
「まだ使わない」
操縦席の下にペダルが増えている。今朝パルチザンを格納庫に搬入した時にはなかったもので、この二時間でアリスが取り付けたのだろう、とユウキは一人納得する。
プラーナエクステンションによって思考だけで操作が可能なアームドウェアには、基本的にシートの他には申し訳程度の肘掛けしかない。パルチザンもアレンが乗り始めた時はそうだった。
しかし今では、ペダルだけでなく操縦桿やトリガーも付いている。外観について言えば、両腕は全身のデザインとは意匠が少し異なるものになっていて、脚部にはスラスターとホイール、そして背中にはテールバインダーが追加された。
さらに言えば、アームドウェアとしては考えられない携行武器まで装備している。
「しっかりしないとな……」
「何の話?」
「僕の話だ」
それらの変化は出会った人たちの好意の証なのだが、そもそもは自分の未熟さが原因なのだと、心の中で少しため息をもらしながら苦笑する。
ウィスは理解したわけではなさそうだったがそれ以上聞いてくることはなく、アリスからの書類に視線を戻した。
「左のペダルを踏むとホイールが展開する。もう一回踏み込むとペダルが元の位置に戻ってホイールを収納できる」
ウィスに言われて足元を探ってみる。少し足を伸ばしたところに三つ、固いものが触れた。
「大丈夫なのか? パルチザンの重量を挙げられるだけのパワーがあるようには思えなかったけど」
「心配ないよ。ホイールが展開するのは、脚部が地面から離れている瞬間だけになるようプログラムしておいたよ」
「し、失礼しました」
「安心したところで次のテストいってみようか!」
通信機から聞こえた自信たっぷりなアリスの声に後押しされ、ユウキはペダルに足をかける。パルチザンが軽く踏み切って跳んだ瞬間に一番左のペダルを踏むと、モニターの端にホイールが展開されたことを告げる表示が現れた。
着地すると、パルチザンは走っていた勢いに乗って滑るように走り出し、足を動かさなくても前へと進んでいる。
「右のペダルを踏めば加速する」
右足をペダルに乗せ、おそるおそる少しずつ踏み込んでみる。わずかにモーター音が高くなり、流れていく周囲の景色も少し速くなった。ユウキがさらに強く踏み込むと、それに応えるようにパルチザンはどんどん加速していく。
「走り心地はどうだい?」
「これはなかなか、新感覚で面白いです。ただ、加速のタイミングが少しズレる気がします」
「なるほど、遊びが大きすぎたかな。戻ったらもうちょっと敏感に調整して……いやユーキくん、今すぐ戻るんだ!」
急にアリスの声に緊張感が混じる。「何かあったんですか」と聞こうかと思った瞬間、コクピットに警戒音が響いた。
「バグズか!?」
「もっと小さい。飛んでくる」
ウィスの報告の直後、モニターにも小さな光源が映った。煙の尾を引きながら六発のミサイルがこちらに向かって飛んできている。
ユウキはホイールを収納すると、左腕を空に向けてその場で足を止めた。二門の機関銃から小型の光弾が高速で放たれる。
ユウキの射撃が正確だったのか、それとも爆発したミサイルの破片による誘爆だったのかは分からないが、ミサイルを空中で全て撃ち落とすことが出来た。
「ウィス、今の攻撃はどこからだ!」
「近くにはいない」
「二人とも無事だね!?」
アリスが本当に焦って心配しているのが通信機越しにも伝わってくる。機体も自分たちも問題ないと返ってきて、アリスはホッとして大きく息を吐いてから再び気を引き締める。
「敵の現在地はそこから約二〇キロ先。はぐれバグズで間違いないね」
「はぐれ? どういうことですか?」
「詳しい説明は後にしよう。とにかく君たちは今すぐ帰投ーー」
「大丈夫だろう」
通信に突然アレンの声が入ってくる。主語の抜けた発言に、ユウキとアリスは一瞬どう反応するべきかと考えてしまった。
「過保護すぎだ。シンドウ達ならたかが三機に遅れはとらない」
「いや、ボクだってそう思うけど、でも……」
「次の攻撃がくる。退くか迎え討つか決めろ」
「迎撃します」
間髪入れずにユウキがきっぱりと答える。アリスはなおも何か言おうと口を開きかけたが、結局ため息を一つつくだけに留めた。
「こっちからも警備部を向かわせるよ。いいかい、絶対に無理しちゃダメだからね。ウィスちゃん、ホイールパーツとテールバインダーの状態をしっかりモニターして。もし不具合が起きそうなら使用停止、最悪の場合は破棄してもいいからね」
「分かった。ねぇアリス」
「ん、なんだい?」
「アレンはいつからいたの?」
ウィスの口調からすると、他意もなくただ思ったことを尋ねたのだろう。通信機からもユウキの堪えるような笑い声が聞こえてくる。
それまで顔をしかめっぱなしだったアリスも、ウィスの一言と傍らに立つアレンの顔を見ると、我慢できずに吹き出してしまった。
「……テストが始まった時からだ」
ため息を飲み込み絞り出すように告げたアレンの表情は、つい先ほどまでのアリスと入れ替えたかのように渋いものに変わっていた。




