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「えっ、お金の問題なんですか?」

ここまで読んでくださりありがとうございます。


震災のとき、支援物資はもちろん嬉しかったんですが、実は一番嬉しかったのは一本の動画でした。

「フルメタルパニック」のテッサが喋ってる動画です。今もY〇uTubeやニ〇ニ〇動画に残っているので、気になる方は是非。この小説読もうって人は、フルメタ知ってると信じてる。

「盛り上がりましたね!」


 一人テンションが上がっているユウキに対して、ロジャーとアリスの表情はまだ険しい。


「問題は軍のお偉いさん方がどう見るか、だ」

「それと、ソール重工の機体だね」


 アリスの手元の資料によると、ディアナ社の次、デモンストレーションの最後を飾るのがソール重工のアイメンドールとなっている。


「機体名はオベディーⅡか。やはり現採用機のネームバリューは捨て難いようだね」

「アリスさん、それは?」

「機体の詳細さ。こっちにはコンペの流れしか出てなくてね。機密保持のため、細かな情報はデモ直前に公開されることになっているんだよ」


 アリスがひらひらと紙の資料を振ってみせた。端末に新しく表示されたページには機体のスペックや搭載武器、果ては値段までもが掲載されている。


 やがて訓練場からアレンとドミニクが散らかしたアイメンドールの残骸が撤去され、代わりに三台のアイメンドールが並んだ。


「前のと比べると太りましたね」

「なんだ坊主、どこでオベディーなんて見たんだ」

「アレンさんから借りたシュミレーターにデータが入っていたんです」

「無機物に『太った』という形容は不適切」


 それまで黙っていたウィスからの指摘に、思わずユウキは口をつぐんだ。アレンたち同様、観客に応えながらオベディーⅡが訓練場を回っている。


 濃いグレーに染められた装甲や一つ目(モノアイ)、全体的に角張ったシルエットなどは引き継がれているものの、前のオベディーと比べると脚部や胴体部分の装甲が強化されていて重厚感がより増しているように見える。


「ま、ゴツくなりやがったのは確かだな」

「あの重装甲でこの値段、随分頑張ったみたいだね。これはなかなか手強いね」


 ユウキは単純にデザインや性能面を見ていたのだが、ロジャーとアリスはそれだけではなかったらしい。



 観客へのアピールを終えたオベディーⅡが位置につくと、遠隔操作のアイメンドールが装備しているマシンガンの銃口をオベディーⅡに向けた。


 三機が同時に発砲し、装填されていた実弾がオベディーⅡを襲う。


 オベディーⅡは集中豪雨のような弾丸すら意に介さず、腰のハードポイントに地面と平行に懸架されているバズーカを手に取ると右肩に担ぐように構えた。


 バズーカから発射されたペイント弾で真っ赤なペンキをかぶった標的は発砲を辞め、やがて三機全てが沈黙した。



 元の位置にバズーカを戻したオベディーⅡがくるりとその場で回って健在をアピールすると、会場が喝采に包まれる。


 左手を上げ観客に応えながらオベディーⅡが格納庫へ帰っていく。その後も止まない歓声を聞きながら、アリスとロジャーは表情を曇らせていた。


「ドミニクさんたちのパフォーマンスだって、今のにも引けを取らないくらい盛り上がってましたよ」

「それもそうなんだが、ここまでコンセプトに差があるとどうにもな……」

「コンセプト、ですか?」


 ロジャーは渋い顔であごの無精ひげを撫でながら、端末に表示されたオベディーⅡのデータをもう一度さらっている。


 興味があるのかないのか分からない無表情なウィスはともかく、ユウキはロジャーの言葉の意味をいまいち掴み損ねていた。


「いいかい? これまでID開発は被弾しないようにすることが大前提だったんだよ。理由は装甲分の費用を浮かせるためだ」

「えっ、お金の問題なんですか?」

「戦いは数だって言葉、知らねぇのか? 数で押してきた(バグズ)には、数で対抗する必要があった。だがアイメンドールだって安くねぇ。軍縮路線の連盟軍にとっちゃ、値段だって大事なファクターなんだぞ」


 ロジャーの解説を、ほぉと感心しながら聞く。


「いくら装甲が厚くても高威力の武器を何発か被弾すれば墜とされるからね。シールドや長距離砲戦用の装備、それに運動性の向上、どれも経費削減のためなんだ。小口径とはいえあれだけの銃撃に耐えられる装甲を持っているのにコストはデザイアと大差ないというのは凄……ん? ちょっとゴメンよ」


 いつ終わるのか分からないような話の途中、電話が着ていることに気がついてアリスは自身の通信端末を取り出した。


「お世話になっております大佐……そう言っていただけると開発者冥利につきます……はい。はい……」

「アリス、話し方おかしい」


 ウィスの呟きにユウキがうんうんと首を振る。


「そうか、嬢ちゃんと坊主は初めてか。会社の関係者と話してるときにしか聞けないレアものなんーー」

「今からですか!? あ、失礼しました……はい……はい……」


 ロジャーも声を潜めて話していたのだが、珍しいアリスの大声にかき消されてしまった。驚いて視線を上げると、アリスが身振りで書くものを貸してくれと伝えている。


 ロジャーがペンを渡すとアリスはコンペティションの予定が書かれた紙を裏返し、ガリガリと何かを書き殴り始めた。


 勢いよく差し出された紙に目を通すロジャーの顔がみるみるうちに強張っていく。


 するとロジャーは部屋の隅へ行き、電話をかけ始めた。ウィスに視線で説明を求められているものの、自身も状況を飲み込めていないユウキは曖昧な表情で首を傾げるだけだった。

双葉 薫

竜成の幼馴染。高校三年生で、身長一六四センチ。

大野エネルギー研究所の現所長である双葉博士の孫。戦闘時にはオペレーター役をすることもある。

通信相手がもっぱらゴリマッチョなおじさまであるドミニクが聞いたら泣いて羨ましがること必至である。

プロ顔負けあのプログラミング技術を持つオタク気質である一方で、普通の女子高生の感覚もきちんと備え持っている常識人。

竜成がゴウダイナーに乗ることに心から賛成しているわけではないが、言っても聞かないことを分かっているため、出来る限り支えることにしている。

紹介されるくらいの女性キャラの中では一番年下設定だが、一番スタイルがい(以下略

幼馴染は負け属性なんて言わせない!(そもそもライバルが登場しないことは、気付いても黙っていてね)

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