「今夜こそは絶対ベッドで寝てやる」
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後書きにもまた載せたので、そちらも見ていただければ幸いです。
俺は「恋雨」の最終回、悪くないと思ったけどな〜
しばらく作業を続けていると、いつの間にかローラーブレードが床を蹴る音が滑らかになっていることにハリソンは気付いた。
「なぁ、あんたもディアナ社の人なのか?」
少し休憩にしようということになり、ローラーブレードを脱いで腰を下ろしていたユウキにハリソンが近づいてきた。差し出された缶を受け取りながらユウキは一瞬返答に詰まる。
「え、えぇ、そんなところです」
「ほーん……」
ハリソンのなんとも薄い反応に、何か勘付かれたのかと内心でヒヤリとする。
「パルチザンだっけ? かなり珍しいデザインだよな」
「そ、そうですか?」
「あぁ別にいいぜ、喋らなくて。ロジャーさんからも詮索無用って釘刺されてるからな」
けらけらと笑いながらハリソンが自分の分の缶をあおる。そんな彼を盗み見ながらユウキも渡された缶に口をつけた。
中身は甘ったるいコーヒーで、正直に言うなら運動後に飲みたいような味ではなかったが、ユウキは再び缶コーヒーを一口飲んだ。
「大事に乗ってやれよ」
「き、気をつけます。僕の腕が追いつかなくて故障が多くて……」
「そういう意味じゃねぇよ。アイメンドールには関わった人間の気持ちも乗るんだ。こいつみたいに手のかかる機体なら尚更な。だから、墜とされねぇように大事に乗れってこと」
「分かりました!」
ユウキの返事に満足気に頷き、ハリソンは最後の一口をあおりユウキの手から空き缶を取った。ちょうどパルチザンの所でロジャーが作業を再開するぞとハリソンを呼んでいる。
気怠げに返事をしながらハリソンが立ち去った後、ユウキは再びローラーブレードをはき、アレンから借りてきていたヘルメット型シュミレーターをかぶった。
次の日、ユウキはオーランド基地にやってきた。昨晩はそのままハリソンの工房に泊めてもらい、新設したホイールの動作確認もそこそこに再びトレーラーにパルチザンを積んで基地までやってきた。
所持品の確認などは当然厳しいものだったが、軍の基地で行われるコンペティションだからとユウキが想像していたよりも随分と開放的で、軍服を着ていないものの確実に一般人ではない雰囲気を放つ、いかつい男たちの姿もそこかしこに見られる。
「あいつらは同業者だ」
「デバッカー、でしたよね。軍人じゃない人がこんなに基地内へ入って大丈夫なんですか?」
ディアナ社の関係者パスで入っているユウキはきょろきょろと辺りを見渡しながら、前を行くロジャーに問いかける。
「まぁコンペっつっても、正確には軍主導の新型アイメンドールのお披露目って色合いが強めだからな。連盟軍のイメージアップのためにも、割とオープンにやってんだよ。余計なとこに入って騒ぎを起こすんじゃねぇぞ」
「ロジャーさんがもう少しゆっくり歩いてくれれば大丈夫ですよ。今ものすごい筋肉痛なので」
朝起きた瞬間に両脚を走った激しい痛みを思い出す。今は幾分かマシになっているが、それでも歩き方がぎこちなくなっているなと自分でも感じている。
ローラーブレードをやり過ぎたと言うと、ロジャーは「限度ってもんがあんだろ」と笑った。
やがてロジャーが入った部屋にはウィスとアリス、そしてユウキが着ているのと同じディアナ社の制服姿のアレンとドミニクがいた。
「やぁおはよう。頼んでたものはできたかい?」
「ちゃんと組み上げたぜ。今夜こそは絶対ベッドで寝てやる」
「残念だけど、コンペが終わったらすぐラボに戻るよ。こんなとこにいたら何もいじれないからね」
「なんだと!?」
「アレンさん、これありがとうございました」
「もういいのか」
「もうバッテリーが切れてしまいまして……」
「そうか」
充電器は持ってきていなかったらしく、アレンは手渡されたヘルメットを自分のバッグにしまう。
「で、どうだ? ちっとは墜とされる回数減ったか?」
「さすがに被弾〇とまではですが、撃墜はなくなりました。対集団戦での立ち回り方が分かった気がします」
「おっ、すげーじゃねぇか。……なぁ、まさかとは思うけどよ、昨日よりレベル下げたりーー」
ドミニクが声を潜めて耳元へ口を寄せると、アレンは黙って首を横に振った。二人は感心した顔でウィスに筋肉痛の話をするユウキに視線を向ける。
「こりゃうかうかしてるとスコア抜かれちまうぞ」
「腕が上がることは良いことだ」
「ま、そりゃそうだな」
「……俺がやっているレベルは十四だ」
ニヤリと笑い「この負けず嫌いめ」と言いたげなドミニクに対して、アレンは鼻を鳴らして答える。時計を確認した二人はそれぞれのヘッドギアを脇に抱えて席を立った。
「頼むよ二人とも。バッチリ決めてくれよ」
「了解」
「任せときなって。契約取れたらボーナス上乗せ、頼むぜ」
ドミニクは軽いノリでウィンクを一つ飛ばして部屋を出ていった。残った四人は部屋に備え付けられたモニターの前に陣取って、アレンたちの出番を今か今かと待つ。
「お二人のデモンストレーションはこれから始まるヘリオス社の次です。頑張ってください」
「おうよ。ボーナス出たら、みんなで美味いもん食いに行こうぜ」
訓練場に併設された格納庫のカーマインとセルリアンの周りには、既に顔なじみとなっているディアナ社の整備スタッフたちの姿があった。
ドミニクはその一人一人とハイタッチを交わしながらコクピットに乗り込んだ。
複数あるモニターにカーマインのコクピットが映し出されているものがあり、アレンは既にヘッドギアをはめて目を瞑ってじっとしている。
「ヘリオスってソール重工の子会社だろ? さっきの機体もオベディーのマイナーチェンジっぽかったもんな」
「他のIDはどうでもいい」
「ま、そりゃそーだ。サクッと高性能っぷりを見せつけて、ガツッと報酬をいただくとしますかね!」
「楽観的だな」
「こういうのはポジティブっつうんだよ」
ドミニクは軽口を叩きながら機体の設定を確認していく。
ほとんどルーティーンと化しているのでやっているものの、今日はメカニックのスタッフが機体の準備をあらかじめしていたため、改めてチェックするような箇所は特に見当たらなかった。
大野 竜成
ゴウダイナーのパイロット。高校三年生で空手の有段者。身長は一七ニセンチ。
ドクトルτの全世界一斉攻撃が始まった時、薫と共に大野エネルギー研究所のすぐ近くにいた。偶然開いたゲートに避難し、その先でゴウダイナーを見つける。
研究所の職員では誰も動かせなかったゴウダイナーが竜成には反応したことで操者を任された。初めは拒否したものの、ゴウダイナーの開発者が父親であることを告げられて承諾。そのまま出撃して、研究所を襲ってきたメタルリザードを見事に撃退してみせた。
明るくまっすぐな性格だが、頭に血がのぼると無鉄砲な部分が前面に出てしまうタイプ。理系科目の点数はそこそこだが、英語と古文は壊滅的。
ゴウダイナーの存在を知ってからダイノ粒子に興味を持ち始め、現在はダイノ粒子の研究者になることを目標に勉学にも力を入れ始めた。
作者はスーパーロボットの中ではゲoターが好きなのだが、今作ではロボもパイロットもマ〇ンガー寄りの設定にしてみた。べ、別にキャラを三人分考えるのが面倒だったわけじゃないんだからね!
熱血キャラのつもりで書いているものの、ただの元気少年になってしまっている気がしているのは気のせいだと信じたい。