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「改造したのか」

ここまで読んでくださった方、ありがとうございます。

先日心機一転した楠たすくが、数ヶ月前に書いた部分ですw

ご意見ご感想に誤字脱字報告、ブクマに評価、がりがり君からハーゲンダッツまで、なんでもお待ちしてます!


今回は皆さんお待ちかねの紹介はお休みです。

……え? 誰も待ってないって?

 無精ひげなのは相変わらずなのだが、ウィスの言う通りロジャーの表情に生気が欠けている。充血した目は半開きで、目の下にくっきりと(くま)が浮かんでいる。


「ボスのわがままに付き合わされて徹夜になっちまったからな。ったく、あいつが目を輝かせてる時はろくなことがありゃしねぇ」

「ロジャーさん、会うたびに疲れていきますね」

「なぁに、ここまできちまえば整備屋の仕事は残ってねぇ。移動中にたっぷり寝させてもらうとするさ。お前らの冒険談は起きてからの楽しみに取っておくぜ」


 そう言って力なく笑ったロジャーがふらふらと格納庫を出て行くと、入れ替わりで上機嫌なアリスが格納庫へやってきた。


 その姿はハツラツとしていて、ロジャーと一緒に徹夜をしていたとはとても思えない。


「アリスさんは元気なんですね」

「いや〜パルチザンを調べてるのが楽しくてね、まさに寝る間も惜しいってやつだよ。むしろコンペなんて行かず、残って色々してようかな」

「お仕事なんですからサボっちゃダメですよ」

「ハッハッハ、冗談だよ」


 名案だと言わんばかりにアリスの顔が輝いており、本当に冗談なのかとユウキは心の中でひっそりと心配する。


「うむ残念。ところでユーキくん、パルチザンのあの黒い脚部パーツって飛行ユニットじゃないよね?」

「そうですね、あれは跳躍力強化のためのものです」

「ダイノエナジーの消費量が多すぎて飛行は不可能」


 珍しく質問されていないのにウィスが口を開く。少し寂しい気もしたが、これもアリスに慣れてきた証拠だろうと、ユウキは素直に喜ぶことにした。


「そのダイノエナジーはどこから供給されるんだい?」

「両腕からです。ダイノニウム合金もダイノエナジーを発しているそうなんです」


 ふむふむと頷きながら、アリスは持っていたファイルの紙に何やらメモを書きなぐっていく。


「使ってみてどうだい? 例えば、空中での姿勢制御とか」

「難しかったです。テストなしだったこともあって、バランス崩しました」

「やっぱり。あのブーツはエネルギー食わせて過ぎでもったいないし、少し手直しした方がいいかもしれないね。姿勢制御用の追加装備も必要かな」


 次々と浮かんでくるアイディアに、自然と口角が上がってしまう。そんなアリスを見て、何故かユウキの脳裏には疲労困憊(こんぱい)なロジャーの背中が浮かんでいた。


「あのアリスさん、僕らはありがたいんですが、今とても忙しいはずでは……?」

「大丈夫大丈夫、あとはアレンとドミニクが頑張ってくれればいいだけだからね。ま、その辺りの詳しいことはもうちょっとプランが固まってから話そうか。とりあえずパルチザンの搬入よろしくね。スタッフにはもう話が通ってるから、セルリアンの隣のハンガーを使ってくれ。出発は三十分後、機内にディアナ社(うち)の制服を用意しておくから着替えておいてね」


 アリスはさらさらと必要事項を列挙すると、今にもスキップをしだしそうなテンションで輸送機の搭乗口へと歩いていった。


 一人で大丈夫だからとウィスにアリスと一緒に行くよう伝え、ユウキは格納庫へと戻る。


 乗り込む前、そして乗り込んでからもパルチザンを一通り確認してみたが、昨日の次元転移前と変わっているところは「まだ」なかった。




「コックローチ型は動きが早い。闇雲に撃っても当たらない、よく狙え」

「はい」


 バイザーのついたヘルメットのような形のシュミレーターを被ったユウキがキョロキョロと辺りを見渡す。


 手にはコントローラーのようなものが握られていて、時折ボタンを押しながら何かを追うように右手を伸ばしている。


「足を止めるな。いくらコックローチが軽装でも、脚部やコクピット周りに集中して被弾すれば墜とされる」

「はい!」

「おい、おいアレン」


 それまで傍観していたドミニクがそっと歩み寄ってアレンの袖を引く。振り返ると、ドミニクはアレンが手に持っている携帯端末を指差していた。画面にはユウキが見ているものと同じ映像が流れている。


「これ、設定いくつだ?」

「十二だ」

「ちょっと待て、最大値って十だよな? 改造し(イジっ)たのか」


 何食わぬ顔でコクリと頷くアレンを見て、ドミニクはやれやれとため息をつきつつ再びモニターに目を落とす。


 輸送機のID(アイメンドール)ハンガーにユウキたちはいた。他には整備スタッフすらおらず、節電のために灯りもほとんど消えているので周囲はほの暗い。


「道理で当たり判定が厳しいわけだぜ。俺はてっきり普通のシュミレーターでもやらせるもんだと思ってたけどな」


 ユウキが被っているヘルメットにはバグズが映し出されており、それらが次々と襲ってくる。ユウキはハンガー内を右へ左へ走りまわりながら映像の中のバグズを撃ち墜としていく。


「IDとは操縦方法が違う。パルチザンは機体というよりも自分の体の延長だ」

「らしいな。それにしても、よくあんなもん持ってたな」

「普段から使っている。もちろん動きまわったりはしないが」

「マジか……」

「ユウキは初見の敵への対処が弱い。非戦闘時に可能な限り様々な情報を得ておくことがあいつのためだ。よし、次はモス型との混成部隊のパターンだ。上空からの攻撃にも気を配ーー」

「ちょーっと待った! 一旦休憩、それからモスだ」


 ドミニクの制止でようやくユウキが足を止める。ドリンクが入ったボトルで腕を軽く突かれてユウキがヘルメットを外すと、額から流れた汗がハンガーの床に(したた)り落ちた。


 膝に手を置き肩で息をしているユウキはバイザーで点滅するDeadの文字を睨んで小さく舌打ちをすると、手渡されたボトルの中身を一気に飲み干してヘルメットをかぶり直した。

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