「だけど、それまでは俺がゴウダイナーのパイロットだ!」
ここまで読んでくださった方々、ありがとうございます。
第2章は次が最後になります。
後書きにまたあれこれ書いたので、そちらも見ていただければ幸いです。
ご意見ご感想、評価などなど、お待ちしています。
「竜成、モニター見て! 早く!」
薫に言われて、一度切ったモニターを再び点ける。異常箇所が点滅しているのは同じだが、さっきは無かった英語の文字がモニターに浮かんでいた。
「何だこれ。セラトストリ……」
「違う! セラト、ストライクよ!」
「せ、セラトストライク!」
竜成の声に反応してゴウダイナーの左腕の装甲が盾に変形する。さらに、先端が手首付近まで伸びた真っ白なスパイクが前腕の中央から生えてきた。
「一番ゲートに轟曹長が乗ったダイノフライヤーを確認。あの灰色のロボットが運んだようです」
「そのロボットはどこへ行った! 航空機動隊に行方を追わせろ!」
「レーダー反応なし、カメラにも映っていません。ダメです、逃げられました」
「えぇい、どいつもこいつも勝手に動きおって! それより博士、なんだあれは! あんな武装があるとは聞いておらんぞ」
それほど怒鳴って大丈夫なのかと周りが心配になるほどの剣幕の氷室中将に対し、双葉博士はどこか満足気な表情でモニターを見ていた。
「ワシも初めて見たからのぉ。竜成の成長にゴウダイナーが応えたのじゃろう」
「成長に応えるだ? あれは機械だぞ」
「ただの機械ではないことぐらい、いい加減学んでほしいものじゃがな。ダイノ粒子はそれだけ未知の物質だということじゃよ。とにかく、我々老人はダイノ粒子の、いや、若者の可能性を見守っておればいいんじゃ」
「そんな隠し玉があったとは驚きですが、近づけさせなければただの飾りです」
「別に隠してたわけじゃないんだけど……って、どう使うんだコレ?」
「多段式粒子砲、発射!」
「竜成、構えて!」
薫の声を聞いて、竜成は反射的に左腕を突き出した。ボルケンβの口から放たれた光線は展開したフリル状の盾に命中したが、ゴウダイナーには全くダメージがない。
「すげぇ、何ともないぜ!」
「こっちにデータがきてる! セラトストライクの効果は二つ、ダイノエナジーの吸収と攻撃力への反転みたい」
「反転? おぉ、角が伸びてる!」
竜成の言う通り、手首辺りまでだったスパイクがゴウダイナーの拳を超えるほどの長さに変わっていた。
「腕にあるんだから角じゃないわよ」
「そうだけどよ、見た感じ角だろ?」
「……うん、角ね」
「ま、呼び方は戻ってから考えるか!」
大きくしなりながら飛んでくるボルケンβの尾を受け止め、払いのける。
そのまま距離を詰めたゴウダイナーが曲線的な軌道で左腕を振り抜くと、左右のスパイクがそれぞれボルケンβの首と胴体を貫いた。
ゴウダイナーが引き抜くとスパイクは元の大きさまで縮み、数秒後にボルケンβは装甲に空いた大穴から火花を撒き散らしながら爆発した。
「くっ、やはりゴウダイナーを倒さなければドクトルτの悲願達成は成し得ませんね。また会いましょう、大野竜成!」
ゴッとジェットを吹かす大きな音がしたかと思うと、姿を消したままのヒメルρの翼が風を切る音が徐々に小さくなっていく。
振り返ると地面から三番ゲートがせり上がってきている最中で、竜成はシャッターが開ききるのを待ってからゴウダイナーをゲートへ向かわせた。
「貴様、自分が何をしたのか分かっているのか!」
「ゴウダイナーに乗って戦っただけだぜ。何か文句あるのかよ」
司令室に戻った竜成を待っていたのは、顔を真っ赤にした怒り心頭の氷室中将だった。既にテレビ局の人たちの姿はない。
もっとも、もし彼らがまだ残っていれば氷室中将もこのような態度は取らなかっただろう。
「あれは軍が接収したものだ。それに無断で乗り込むなどーー」
「ゴウダイナーはまだこちらのものじゃよ。ほれ、同意書」
双葉博士は内ポケットから四つ折りになった紙を取り出してヒラヒラと振ってみせた。
「『まともに扱えるパイロットがいた場合にはゴウダイナーを譲渡する』ということになっておったはずじゃが? まさかあれで『まともに』扱えていると言うつもりかのぉ」
「き、貴様らっ!」
「ゴウダイナーは俺のものだ、なんて言うつもりはさらさらねぇ。俺より上手く乗りこなせるやつがいたら喜んで譲る。だけど、それまでは俺がゴウダイナーのパイロットだ!」
「その言葉、忘れるなよ!」
部下を引き連れて足音も荒々しく部屋を出ていこうとした氷室中将だったが、出口の手前でピタリと足を止めた。
「あの灰色のロボット、本当に研究所で開発したものではないんだな?」
「もちろんじゃ。ダイノ粒子を研究をしとるワシらが、ダイノ粒子を無力化するロボットなんぞ作るわけないじゃろ」
「……ふん、ならいいが」
じっと双葉博士と竜成を睨みつけた後、今度こそ氷室中将と国連軍のスタッフたちは司令室から出ていった。
「開発はしとらんぞ。改修しただけじゃ」
「うわ、博士も悪いなぁ」
「年の功と言わんか。さて、今夜からはゴウダイナーの修理で忙しくなるぞ」
お互いの顔を見て、いたずらをした子どものように笑い合う竜成と双葉博士。二人は揃って司令室を出て、薫が待つ作業室へ向かった。
バグズ
アレンたちの世界に存在する無人兵器群の総称。
装備や特性によっていくつかの種類に分けられているが、人型の上半身に六本脚というデザインは共通している。ホイールで移動するアイメンドールとは違い、脚をわさわさ動かして文字通り歩く。
当初はデフォルメした虫型という設定で書き進めていたが、「これじゃ某機動な戦艦ほナデ〇コのオマージュじゃなくて、丸パクりやないか!」と心の中のリトル楠からツッコミが入って、急遽上記のデザインに変更。
でもそれってゲル〇ゲーなんじゃ……なんて思ってはいけない。エヴ〇仮設五号機? ヤツの脚は四本です。
・ローカスタ型
最も目撃例の多いバグズ。装甲は黄褐色。
機体性能はそれほど高くない。一対一であれば負けることはほぼないが、そこそこ硬い装甲と多種多様な武装、そして数の暴力で押し切ろうとする。
バ〇タではない、断じてバッ〇ではない。ディスト〇ションフィ〇ルドは張らない。
・コックローチ型
高機動タイプのバグズ。装甲の色は焦げ茶。
装甲の厚さはバグズ内でも低ランク。軽機関銃を装備していることが多く、大抵はローカスタ型とセットで運用される。
名前から分かる通り、モデルはGでお馴染みな例の黒いアイツ。やられ役にぴったり!と思ってこの名前にしたが、書く度に思い出してしまって絶賛後悔中だとは口が裂けても言えない。