「そんなに褒めないでください」
本日三度目の投稿です。もう連続投稿はしません、というか出来ません(笑)
この二日で、はて何週間分のストックを使ったのやら……自分の遅筆が恐ろしいです(^^;)
ともあれ、ここまで読んでくださり、ありがとうございます!
今回の後書きにはウィスが載っています。良ければそちらもご覧ください。
「修理していただけるんですか!?」
急な話の展開に、ユウキは思わず少し大きな声を出してしまった。
「そもそも、氷室と揉めておって出撃が遅れたのが損傷の原因じゃからな。それに、ゴウダイナーを氷室にとられたから暇なんじゃ」
「ありがとうございます!」
「……ありがとう」
ユウキが気をつけの姿勢で頭を下げると、少し遅れてウィスもペコリと頭を下げた。
「異世界のロボットを触る機会なぞないからの。研究者の血が騒ぐわい」
「あ、博士もそこなんですね」
ニヤリと笑う双葉博士を見たユウキは、嬉々としてパルチザンに取り付いていた昨晩のアリスの姿を思い出した。
「なんじゃ。ワシ以外にも見せたのか」
「ここに来る前の世界にも同じことを言っている人がいたんです。その人たちがパルチザンという名前と装備をくれたんです」
「パルチザンか、いい名じゃ。そいつとは美味い酒が飲めそうじゃ」
双葉博士がカバーを取り払い機械のスイッチを入れていくと、格納庫の壁面からアームが何本も現れた。
画面には測定されたパルチザンのデータやスクラップと化した左腕を分解していく様子が映し出されている。
双葉博士は時折視線を画面に向けつつ、ぶつぶつと独り言を漏らしながらノートに何かを書き綴っていた。
「おじいちゃん、こうなるともう周りのことなんて全然見えなくなっちゃうんですよ。大人なんだか子どもなんだか……」
いつの間にか戻ってきていた薫が、双葉博士の姿を見て鼻を鳴らした。言葉と態度と裏腹に、その表情はどこか誇らしげにも見える。
「ユウキさん、そこにいても退屈だろ? 研究所に行こうぜ。俺たちが案内するからさ」
「あぁ、ありがとう……ウィス、行かないのか?」
先に部屋を出た竜成と薫に続いて扉の方へ歩き出したユウキだったが、椅子に座ったままのウィスに気がついて足を止めた。
「わたしは呼ばれていない」
「あれはな、ウィスのことも含んでるんだ」
「……そうなの?」
「そうなんだ。竜成、ウィスも一緒にいいか?」
「もちろん! ウィスさんだけ除け者なわけないだろ」
あっけらかんとした返事が扉の向こうから聞こえて、ようやくウィスも立ち上がった。
「なぁ、なんであんなこと聞いたんだ?」
元いた部屋を出て少し歩いたところで、竜成が声を落としてユウキに尋ねた。薫も気になっていたようで、さりげなく竜成とユウキとの距離を詰める。
ユウキは部屋でしたウィスとの会話の内容をかいつまんで二人に話した。
「ウィスはコミュニケーション能力がちょっと低めなんだ。無表情だしほとんど喋らないけど、怒ってるとか距離を取ってるとかじゃないから、普通に話しかけてくれ」
「そうだったんですね。ちょっと嫌われてるのかと思ったんです。でも良かった……私、ウィスさんとお話ししてきます!」
満面の笑みでウィスの隣に並ぶ薫を見ながら、ユウキは心の中で「多分だけど……」と付け加えた。
「で、これがダイノエナジーを動力にした発電装置のモデルなんだけど、すごいのはーー」
ユウキとウィスは竜成と薫の案内で研究所の中を見学してまわっていた。今はダイノ粒子の発見からエネルギー抽出技術の確立までの流れがボードで説明されているブースを歩いている。
どこの掲示物でも竜成が説明に書かれていないことまで話してくれるので、一般人が見学にかかる所要時間よりもかなり長引いていた。
時刻はすでに八時を回っており、研究所内の見学できる区画に一般人の姿はない。代わりに濃い緑の制服姿の軍人が時々通路を行き来しているため、閉館時間を過ぎても通路の蛍光灯は点けたままになっている。
「竜成はダイノ粒子にとても詳しいんだな」
「まあね。これでも将来はーー」
「高校生がこんな所で何をしている」
四人の前に恰幅のいい男性が現れた。歳は六十前後といったところだろうか。勲章をいくつも付けた軍服をまとい、後ろに同じ軍服の若者を二人従えている。
「自分ん家で何してようが軍人さんには関係ないッスよね、中将閣下」
「ちょっと竜成!」
「ふん、生意気なガキだ」
「そんなに褒めないでください。これくらいじゃないとゴウダイナーのパイロットは務まらないんスよ」
「元をつけた方がいいぞ、元を」
見下した目で竜成を見る氷室は、にたにたと含みのある表情を浮かべながら鼻で笑った。
「ゴウダイナーは起動したぞ。『まともに扱えるパイロットがいればゴウダイナーを譲渡する』という約束、忘れておらんだろうな。明後日にはアレの移送準備が整うはずだ。君の父親、大野博士には随分手を焼かされたが、いい兵器を残してくれたことだけには礼を言わねばな」
「なんだと……?」
「子供が戦場にしゃしゃり出るのはもう終わり、というわけだ。『認められなければゴウダイナーは動かせない』、だったか? 約束通り接収すると、ロマンチストな博士にも伝えておいてくれ。まぁこれからは大人しく勉学に励むんだな、ハハハハハ!」
すれ違いざまにユウキとウィスを一瞥しつつ氷室は高らかに笑いながら去っていき、二人の兵士はどこか申し訳なさげに頭を下げてから中将の後を追った。
ウィス
なぜかパルチザンに元々乗っていた少女。
戦闘中はサブパイロットとして各システムのチェックや周囲の索敵をしているが、別に彼女がいなければパルチザンが起動しない、というわけではない。
アームドウェアを操作するほどのプラーナは持っていないが、術式を解読したり作成する能力は非常に高い。
年齢は不詳、見た目から判断すると十代半ばから後半。身長は一五二センチ。髪は淡い紫色。
基本的に(ジト目気味な)無表情。感情の起伏もあまりないが、ゼロというわけではない。ついでに言えばボディーラインの起伏m……
初期設定ではよく喋る語尾がおかしなアンドロイド(女の子だから正確にはガイノイド)だったが、今では立派な無口少女。相棒の主人公よりも長々と解説されちゃう、なかなか罪なヒロイン。