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異世界放浪機甲兵 継接のパルチザン  作者: 楠たすく
選定! ゴウダイナーに選ばれし者
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「おまけに業突く張りじゃ」

ここまで読んでくださり、ありがとうございます。

今回で第2章の役者がほぼ揃いました。

 イライラした様子の竜成が、扉を蹴破らん勢いで部屋に入ってきた。


「ちょっと竜成」

「なん……あ、ユウキさん、もう来てたんスね。ってあれ、どちら様?」

「わたしはウィス」


 竜成は先ほどのパイロットスーツ姿ではなく、緑みがかったグレーのブレザーに着替えている。


 薫がもう一脚パイプ椅子を用意したところで再び扉が開き、白衣を羽織った白髪の老人が部屋に入ってきた。


「おぉ、君があのロボットのパイロットか」

「はい。僕はユウキ・シンドウ、こっちはウィスです」

「そうかそうか。わしは双葉 秀蔵(しゅうぞう)、この研究所の所長じゃ。ま、それは知っておるな」

「すみません、実は何も分かっていないんです」


 申し訳なさそうにユウキが言うと、双葉博士は目を丸くした。


「どういうことじゃ。あのロボットは何じゃ? どこで作られたものなんじゃ」

「えぇと、少し長くなるうえに突拍子もない話なんですがーー」


 そう前置きをしてから、異世界『テルス』とゴルコンダ・プロジェクトの事、パルチザン奪取作戦の顛末、昨日アレンたちに話したのと同じ話を竜成たちに伝えた。


 話が進むごとに三人の表情が唖然としたものに変わっていく。ウィスだけは相変わらずの無表情を保ち、説明を全てユウキに丸投げして椅子に座っていた。


「にわかに信じがたい話じゃが、その『術』という攻撃による副作用と考えればあるいは……」

「なんのことだよ博士」

「ボルケンβの足が、通常の金属とダイノニウム合金の(まだ)らになっておったんじゃ」

「あれ? メタルリザードも全身ダイノニウム合金なんじゃないの?」


 薫が首を傾げると、双葉博士は「その通りじゃ」と言ってモニターを指さした。


「ダイノニウム合金の強度そして発せられるエネルギーがあってこそ、あの巨体を維持・駆動させられるんじゃ。事実、国連軍の記録によればボルケンβの装甲は全身赤となっておるが、さっき回収した残骸は……ほれ」


 モニターにはボルケンβの全身を写した映像と鉄塊と化した脚部の映像が並んでいる。映像はユウキがマギアマグナムを何発も撃ち込んで変色させたものだった。


「これは僕が攻撃したものです」

「やはりな。原理はまだ分からんが、お前さんの術とやらにはダイノニウム合金、いや、ダイノ粒子を無効化する効果があるのやもしれん。奴から隠して正解だったわい」

「奴?」


 ユウキとウィスがいるのも忘れて、竜成と双葉博士がやけに嫌そうな顔をしている。


氷室(ひむろ)中将っていう石頭さ」

「おまけに業突く張りじゃ」

「おじいちゃんまで、それじゃ伝わらないでしょ。世界中の平和維持を目的に活動している国連軍、その日本支部のトップが氷室中将なんですけど、今うちと揉めてましてーー」


 約一ヶ月前に、ドクトルτ(タウ)は世界制服と称して世界各地をメタルリザードに襲ったこと、彼の本当の目的は大野エネルギー研究所にあるダイノ粒子の大結晶の奪取だったこと、そして唯一メタルリザードを退けたのがゴウダイナーだったことを、薫は分かりやすくまとめてユウキたちに話した。


 途中で竜成や双葉博士がかなり主観的な横槍を挟もうとしたが、薫の眼力に負けて口をつぐんだ。


「さっきから話に出てくるダイノ粒子、というのは何なんですか?」

「知らないの!? ユウキさんたちって、ホントに異世界の人なんだな」


 竜成は腕を組みながら、妙に納得した表情を浮かべている。


「そういうものなのか?」

「ダイノ粒子は古代の地層で発見された、強力なエネルギーを生み出す結晶体じゃ。今や世界で使用されるエネルギーの約七割を、この研究所で生成されるダイノエナジーでまかなっておる。だからダイノ粒子を知らん者はおらん、というわけじゃ」

「なるほど、だからあの人は世界の危機だって言ってたのか」

「あの人?」


 ユウキが先ほど墜落したヘリコプターの乗員の話をすると、薫が機械を操作して外の様子をモニターに出してくれた。


 先ほどとは異なる救助用のヘリコプターが研究所近くの森の周りに集まっており、今まさに飛び立とうとしているものもあった。その様子を見て、ユウキはホッと胸を撫で下ろす。


「国連軍にもいい人がいるのは分かってるんだけどさぁ」

「そういえば中将って人と揉めてるって言ってたな」


 ユウキの話を聞いた竜成は、何か含むところのある荒々しいため息を漏らした。


「そうなんだよ! あいつ、自分の手柄欲しさにゴウダイナーを寄越せって言いやがるんだ」

「動機はともかく、脅威に対抗し得る兵器を軍人に任せるというのは普通じゃないのか?」

「それもそうじゃが、ゴウダイナーはただの機械ではないんじゃ。認められておらん人間では起動させることすら出来ん」

「機体が意思を持っているんですか?」


 ユウキが怪訝そうな顔で尋ねると、双葉博士はいやいやと首を横に振った。


「『認める』というのは物の例えじゃが、ダイノ粒子はまだ謎の多いからのぉ。事実、竜成が乗っておるときはダイノ粒子が活発化しておるがパワーは安定しておる」

「そんなことがあり得るんですね」

「うむ。それを氷室は『息子贔屓(むすこびいき)に父親が(ほどこ)した設定だろう』などとぬかしおってな。どうにかしてゴウダイナーを動かそうとプログラムをいじくりまわしておるわい」

「父親ということはーー」

「あぁ、ゴウダイナーを作ったのは親父だよ。去年、飛行機事故でお袋と一緒に死んじまったけどな。まったく、余計なものを(のこ)しやがって……そうだ、ユウキさんのロボット、見てきてもいいか?」

「あ、あぁ、構わない」

「待って、私も行く!」


 竜成と薫が部屋を出ていくと、双葉博士は立ち上がってガラス窓からパルチザンを見下ろした。


「大野 誠、ワシの教え子だった男じゃ。ダイノ粒子を発見し、そこからダイノエナジーを抽出する方法やダイノニウム合金を生み出し、危機を予測しゴウダイナーを作り上げた……ワシなぞよりはるかに優秀な科学者だったわい。あいつが戦っておるのは、父の研究を汚す(やから)を許せんという気持ちもあるんじゃろう」

「そんなことが……」

「さて、湿っぽい話はここまでじゃ。お前さんのロボットを直してみるかの」

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