「まったく、いっつもいっつも報告が雑なんだから」
ここまで読んでくださってありがとうございます。
今回の後書きには主人公のユウキについて載せてみました。良かったらそちらもご覧ください。
ブックマークや評価、ご意見ご感想から誤字脱字報告まで、あれこれお待ちしてます!
「ウィス、どう思う?」
小型飛行機の上部が開いて、ヘルメットをかぶった少年が顔を出した。口に手を当てて呼びかけてくる少年を指差しながら、ユウキは後部に座るウィスの方へ向き直る。
「どうって?」
「あのパイロット、信用できるかな。そうだな……アリスさんみたいな、いい人だと思うか?」
ウィスは斜め上に視線を向けて数秒考えた後、「分からない」と言って頭を振った。
「でも、あの嫌な声と戦っていた」
「たしかにな。よし、ちょっと行ってくるよ。なんかあったらフォローよろしく」
「どうやって?」
「それは自分で考えてくれ」
ユウキが昇降機で地面に下りていくと、少年も外したヘルメットを脇に抱えて小型飛行機から降りてきた。
ゴウダイナーと同じく黒地に白、部分的に赤が入ったパイロットスーツは全身にフィットしたデザインになっている。
身長はユウキよりもわずかに低いもののしっかりした体格をしており、元気の良さが表れているような黒髪と力強い勝ち気な瞳が特徴的な少年だった。
「ユウキ・シンドウです。さっきは助かりました」
「敬語はやめてくれよ、シンドウさんの方が年上だろ? 俺は大野 竜成、竜成でいいッスよ」
竜成がニッと笑って右手を差し出す。わずかな間が空いた後、それが握手だと気付いたユウキも右手を出して竜成の手をしっかりと握った。
「よろしく竜成。僕のこともユウキでいいよ」
「オッケー! シンドウってことは、ユウキさんは日本人なのか?」
「ニホンジン? いや僕はーー」
「ちょっと竜成! 油売ってないで早く戻ってよ。いつまでも誤魔化していられるわけじゃないんだからね!」
突然の怒鳴り声が二人の間を走った。竜成は少し辟易した顔をしながら抱えているヘルメットに向かって「わーってるよ」と投げやりに答える。
「博士が話したいって言ってるから、一緒に来てほしいんスよ」
「それは構わないけど、どこへ行くんだ?」
「大野エネルギー研究所、まぁ俺んちですけどね。ゴウダイナーとは別ルートで入ってもらうんだけど……あのデカい木の近くに入り口があるから、入ったらあとは道なりに進んでください。あ、忘れずに腕を持ってこいって博士が言ってたぜ。じゃ、また後で!」
そう矢継ぎ早に伝えると、竜成は右手を振りながら小型飛行機に走っていった。
ユウキもパルチザンのコクピットに戻ると、マギアマグナムを腰のハードポイントに取り付け、かつてパルチザンの左腕だった金属塊を拾いあげる。
竜成が指差していた木に近づいていくと、突然地面がせり上がって入り口が現れた。
明らかにパルチザンよりもはるかに大きなものが通ることが想定されているであろう扉は閉ざされていたが、ゆっくりとパルチザンが入れる高さまでシャッターが開いていった。
天井も床もアスファルトに囲まれた通路には街灯が等間隔に並んでいる。一応周りに注意を払いながらしばらく進むと、やがて広い空間に出た。
金属のアームや用途がよく分からない機械がいくつもあって、空いているスペースはゴウダイナーがぎりぎり収まる程度しかない。
まるでアリスが主任を務めている研究所のラボを狭くしたような、それでいて機材はどれもパルチザン並みに大きい、そんな作業場だった。
「もしもーし! シンドウさーん」
ユウキは名前を呼ばれて初めて、パルチザンの足元に少女が立っていることに気がついた。コクピットを降りていくと、少女はユウキに向かってペコリと頭を下げた。
「はじめまして、双葉 薫です」
竜成と同じくらいの年齢で、竜成よりも少し背が低い。栗色の髪はショートカット、くりくりとした大きな瞳が一際目を引く。淡いピンク色の学校指定の制服を着ており、スカートがチェック柄になっている。
「僕はーー」
「シンドウ ユウキさん、ですよね? 竜成から聞いてます」
どこかで耳にした声だと思いふと記憶を辿ったユウキは、それが竜成のヘルメットから聞こえた声だったことに気が付いた。
突然、薫が「えっ!?」と驚きの声をあげた。彼女の視線を辿ると、そこには昇降機を使ってコクピットから降りてくるウィスの姿があった。
「すみません、竜成からはシンドウさんのことしか聞いていなかったので。まったく、いっつもいっつも報告が雑なんだから」
「いや、彼も知らなかったんだよ。ウィスはさっきパルチザンから降りなかったから」
「そうだったんですか。ごめんなさい、いつものことなのでつい……」
耳まで真っ赤にして俯いていた薫だったが、ウィスが降りてきたところで再び自己紹介をする。
ウィスも自分の名前は言ったものの、いつもの無表情のままそれ以上は特に喋らない。薫に目で助けを求められ、ユウキは苦笑いをしながらわざとらしく咳払いをした。
「そういえば、なぜ僕らをここに呼んだんだ? 竜成は博士が呼んでるって言ってたけど」
「え、あ、そうでした! でも今はまだ手が離せないかも……とにかくこちらへ」
薫を先頭にユウキとウィスは作業場を後にした。歩きながらユウキは「ウィスはあれが普通だから」と耳打ちすると、薫はホッとした表情でコクコクと頷いた。
連れてこられたのは機材の並ぶ部屋だったが、今度は操作するための場所らしい。
最近はあまり使われていない場所なのか、コンピューターにかぶせてある透明なカバーには薄っすらと汚れが付いて半透明になってしまっている。キャスター付きの椅子が一脚だけあるものの、三人は揃って簡易的なパイプ椅子に腰かけた。
「ったく、何なんだアイツら!」
ユウキ・シンドウ
テルス出身で、アームドウェア「パルチザン」のパイロット。
元の世界であるテルスに帰還することを目指している。
二十一歳。身長は一七六センチ。
性格は至って真面目。アームドウェアの操作能力は高いものの、突発的な事態への柔軟な対応が苦手。
(作者の趣味で)眼鏡を着用している(のだが、必然性はないため描写が極端に少ない)




