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「一応だよ!」

ここまで読んでくださった方、ありがとうございます。

最終回ばりの燃え展開から一転しての水着回。そしてどこぞのアイドルソングだと言われても違和感ないようなED。ダリフラから目が離せません。もっと活躍しろジェニスタ。


「水着回」と書いて「テコ入れ」と読みます。

「事前に言ってほしかった。頭ぶつけた」

「わ、悪かったよ。ドミニクさん、これって破けたりしないんですか」


 背後から若干のうらめしさがこもった視線を感じて、ユウキは引きつった笑いを浮かべて話をそらせる。


「それ以前に、もう動かねぇよ。こいつに捕まると強力な妨害電波でアイメンドールの動作信号のやりとりが出来なくなるのさ。それよりアレンの方はーー」

「もう……お……る」


 聞こえたのはアレンの声で間違いないのだが、途切れ途切れな上にノイズも多く混じっていてよく聞こえない。


「おーおー、随分やられたな」

「半壊」


 低速で走ってきたアレンのダーニングは左腕が潰れておかしな方向に曲がっており、右脚の装甲は大きくへこんでいる。


 頭部のゴーグルアイにいたっては半分近く吹き飛んでいて、小さく火花を散らしていた。


「アレンさんそれ、大丈夫なんですか!?」

「だ……だ」

「大丈夫なわけないだろ。さっさと降りてこっち来い」


 通信は途切れ途切れだったが、ドミニクにはそれでも意味は伝わったらしい。半ば倒れこむように膝をついたダーニングの胸部が開いて、コクピットからアレンが現れた。


 少しふらついているものの目立った外傷は見られない。ドミニクは機体をそばに寄せ、ダーニングの右手の上にアレンを乗せた。


「ユーキ、とりあえずおやっさんたちと合流するぞ! そっちのはどんな機体だった?」

「青かった」

「いやそういう意味じゃねぇ」


 開けっ放しのコクピットの縁に腰掛けているアレンの返事に、ドミニクはため息混じりにないないと手をひらひら振ってみせる。


「固定砲台並みの武装を扱えるほどのパワーもある。射撃の精度も高かったから、センサー系も強くなっているんだろう。二発目でカメラをやられて、次の一発でシールドを弾き飛ばされた」

「で、どうしたんだ?」


 ドミニクの問いにアレンは数秒間黙っていたが、やがて観念したように口を開いた。


「腕ごとライフルを蹴りとばして、その隙に捕獲した。近づいて攻撃、いつも通りだ」

「プッ、ハハハハ! それ、いつもより荒っぽいだろ」

「何がそんなに面白い?」

「いや、お前らが意外と似たようなことしてるからついな。実はユーキもよぉ……」





 六人がラボに到着したのは、陽がかなり傾いてからのことだった。


 幸運にも被害があったのは宿舎棟の一部とラボの機体搬入口ぐらいで、警備部の中でまだ動くことができるダーニングが瓦礫の撤去を行なっていた。


 回収されたカーマインとセルリアンは厳戒態勢の中ラボに運び込まれている。


 アレンとドミニクが使っていたダーニングの方は、使う予定もないからと修理は後回しということになり、そのままの状態でトレーラーへ収容された。


 ディアナ社のスタッフにはアリスから先に話があったらしく、パルチザンもすんなりと格納庫に搬入された。


 誘導された通りパルチザンが壁際に立ったその時、突然ビシッという亀裂音が格納庫内に響いた。


 ユウキは慌ててパルチザンの右腕を水平に伸ばし、マギアクリスタルが付いている面を上に向ける。


 ディアナ社のスタッフが巨大な金属の鎖でパルチザンの腕を天井から吊るし固定するのを待って、ユウキとウィスはようやくコクピットの外に出ることが出来た。


「どうだい?」


 ユウキが降りてくるのを待っていたらしく、パルチザンの足元にアリスが立っていた。


 パルチザンの、正確にいえばマギアクリスタルのことを聞かれていると分かったユウキは、諦めの苦笑を浮かべながら首を横に振る。


「さっきよりひびが深くなっています。いつ壊れてもおかしくないですね」

「一つ質問なんだけど、クリスタルは割れてしまうと、その効果もなくなってしまうのかい?」

「いえ、そんなことはありません。でも、術の威力はマギアクリスタルの大きさで決まります。敵機を撃破できるだけの術にするには、やはりこのサイズのマギアクリスタルが必要なんです」


 それを聞いたアリスは、なるほどねぇ……と返事とも独り言とも取れるつぶやきをこぼし、しばらくパルチザンを見上げていた。


 やがてふと我に帰り、アレンたちについていって休んでいるようにとユウキとウィスに伝える。そして再びパルチザンに目をやり、一人なにやら思案を巡らせていた。




「やぁみんな、今日は一日ご苦労さま」


 ユウキたちが応接室であろう部屋に通されてから三十分ほど過ぎた。ドミニクとユウキは、二人そろってソファーの背もたれに身体をあずけて舟をこいでいる。


 アレンは起きているのかいないのか、腕を組んだままじっとして目を瞑っていた。一方のウィスはよほど気に入ったのか、壁に飾られている数枚の絵画を見つめてじっとしている。


 そんな中に疲れも感じさせない様子のアリスが部屋の中に入ってきて、三人は薄ぼんやりと目を開けた。


「疲れているところ悪いんだけど、二点報告だ」

「暴走の件か?」

「一つ目はそうだね。カーマインとセルリアン、両機のシステムに強制的に介入した形跡があったんだ。既に壊れていたけど、外装に中継器のような機器が取り付けてあったよ」


 バインダーに綴じられた報告書らしき紙をペラペラとめくりながらアリスが話す。


 ユウキとアレンは真面目に聞いているのだが、ドミニクは開かない両目にうっすらと涙を浮かべながらあくびを噛み殺していた。


「そんなもん、いつの間にくっつけられたんだよ」

「残念ながらそれは不明だ。タイミングを考えるとバグズの攻撃で混乱している最中と見て間違いないだろうけどね」

「再発の危険がないのならそれでいい。もう一つは?」

「二機の損害状況だよ」


 そう言ってもう一枚レポートをめくると、アリスは眉間にしわを寄せた。


「カーマインの左腕は歪みがフレームまでいっているらしい。セルリアンに至っては新品の専用キャノンが全壊の上に両腕とも肩から先が動作不能だそうだよ。何をどうしたらここまでの損傷になるのか、聞いておきたいなぁボク」

「いや、それはほら、あの状況ではなんとも、な?」


 口元が若干引きつっているアリスの固い笑顔にさすがのドミニクも目が冴えたらしく、どうにかなだめようと頬に汗を一筋垂らしながら弁明する。


「蹴り飛ばした」

「僕は体当たりを……」


 申し訳なさそうなユウキと対照的にあっさりと言い切ったアレンの表情に、アリスは何かを諦めたように大きくため息をついた。


「君たちを責めてもしょうがないことはボクも分かっているよ。まぁどちらかと言えば、あの損傷具合ならなんとか来週のコンペまでには修復可能だろうし、『一応』無事に戻ってきたとも言えるかな」

「なら依頼は完了だな」


 さっくりと言い切ったアレンに、アリスがくわりと目を見開く。


「一応だよ! かなり大めに見てギリギリ壊していない、ってレベルだからね! だいたい機体の使い方が荒いんだよ。君たちのダーニングを見たけど、あれでよくーー」

「話がある」

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