第一話
短めです。
「う……」
まぶしい。うっすらと目を開けると、燦々と照る太陽が、三つ浮かんでいた。
「は?なんだアレ?」
体を起こして周りを見ると、隣に奏音が倒れていた。
「奏音!おい!」
「ん……あ、お兄ちゃん」
「よかった。具合はどうだ?」
「ん~、まぁ大丈夫だよ」
「そうか…」
改めて周りを見渡す。いま俺たちは少し開けた場所にいるようだ。ただ、その周りは、どこを見ても立派な木がそびえていた。
「お兄ちゃん、ここどこ…?」
「……」
地球…じゃないのか?そこらに生えてる木は、もはや世界遺産級の大きさだ。まさかあの黒い空間に入ったせいか?だとすると、最近流行りの異世界ですか?
「奏音…。ここは異世界…か?」
「…う~ん、少なくとも地球じゃなさそうだよね…」
「うだうだ考えててもしょうがねえ。とりあえず人を探そう」
「そうだね」
俺たちは異世界の森に足を踏み入れた。
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…結構歩いたな。まだ誰も見ていない。というか人がいそうなところではない。喉も乾いた。ずっと歩いてるからな、そろそろ休まないと奏音が辛そうだ。
「奏音、大丈夫か?おぶろうか?」
「ハァ……ハァ…いい、大丈夫……」
全然大丈夫そうには見えない。熱もあるだろうに、こんな歩いたら具合が悪くなるに決まってる。
ん?この音は…
「奏音!水の音が聞こえる。たぶん川だ!そこまで頑張れ!」
「…ハァ……うん…」
よし、水があればだいぶ楽になる。そう思って気が急いたんだろう。ろくに周りも見ずに河原に出たら
「グル?」
「あ」
クマと鉢合わせしました。デカいです。角生えてます。って角!?お前絶対クマじゃないだろ!?俺はテンパって立ち尽くしていたが、そのくまさんはちょうど食事時だったんだろう。俺たちの方を明らかにエサを見る目で見てる。
「グルァ!!」
「うわ!!逃げるぞ奏音!奏音?」
奏音が座り込んでいた。目はうつろになっていて、上半身がグラグラしてる
「奏音!立てるか!?」
「う…ぁ……ごめん、お兄ちゃん……」
熱が上がってるみたいだ。立つのは無理そうなので、抱えて走ることにした。いくら鍛えているとは言え、人ひとり抱えて走ってもクマに勝てる道理はない。
「ガアァ!」
「くそっ!」
どんどんクマが近づいてくる。焦ったせいで木の根に足を取られてしまった。
「うわ!」
今更どうしようもなく、咄嗟に身体を下にして奏音を守る。だが、もうクマは目の前まで来ていた。クマは俺たちの周りをゆっくりと歩き始めた。どっちから食うか考えているようだ。
「グガァ!!」
まずは奏音から食べることにしたようだ。俺は奏音を抱きかかえるようにして守る。その行為が全くの無駄であるとわかりきっていても。
「逃げて!お兄ちゃん!」
「うるせぇ!!」
くそっ!何か出来ねえのかよ!?
その時、
『何をしている』
どこからか声が響いた。
次で主人公が魔法を使えるようになります。