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イベント成功!?・1


 図書館でかりた本を隣りに置き、手に持っている本のページを捲る。目標としては2週間で5冊。2週間もあれば楽勝。簡単に読みきれる程度の冊数。


「姉さん。お風呂どうする?」


「純君の後でいいよ」


 本を読む気分になっちゃったし。ページを捲りながら答えた。


「読み始めたばかりだね」


「うん……」


 返事を返しながらも視線は文字を追う。

 いつもだったらこうなった私を放置しつつ先にお風呂に入ってくれるんだけど、純夜が口に握りしめた手をあてながら困ったように笑った。


「先に入ってもらってもいい?」


「ん?」


 純夜の珍しい反応に、私は本を閉じながら純夜を見上げる。相変わらず麗しい可愛い純夜だったけど、両手を合わせてお願い、と軽く頭を下げた。


「どうしたの?」


 お風呂の入る順番で手を合わせるなんて珍しい。先に両親に入ってもらってもいいんだけど、それだとお風呂入る時間が遅くなっちゃうんだよね。今ランニングで外走ってるから。


「ちょっと用事があるんだ」


「そっか。わかった。先に入らせてもらうね」


 本にのめり込んではいたけど、たかが数ページ。ここで中断されても困らない。それに、純夜のお風呂のお願いは初めてなので、詳しい事は聞かずにソファーから立ち上がり、自分の部屋へと向かった。

 まだ準備をしていなかったんだよね。


「そうだ。傷薬……」


 今日貰ったばかりの薬を手に取り見てみる。効果はありそうだけど、高そうなお薬にしか見えない。何で高いのになればなる程、グラム数が少なくなるのかなぁ。8gしか入ってないや。大切に使おうと心に決めつつ、用意したものをタオルに包み込んでお風呂場へと向かう。


「それじゃーお風呂先に入らせてもらうねー。入浴剤は入れちゃっていい?」


 入浴剤の種類は一番最初に入る人の趣味に偏る。匂いのキツイのは好きじゃない私の場合は、とうがらしとか。これは痩せる感じがするからよく使ってる。

 後は美肌とか筋肉痛とかそんなのに効くのばっかり。

 この辺りは、昔の癖かな。あぁ、でも。匂いが苦手でもローズ系の入浴剤は使っちゃうなぁ。皺対策になるかなって思って……。

 昔の癖が抜けきらずに定着しちゃったからだけど。


「何入れる予定?」


「とうがらし!」


 バンバン汗かきます!とばかりにガッツポーズを決める。なんか変なテンションになってるけど、いっか。

 純夜も頑張れーと言いながら見送ってくれた。

 お互い、何かちょっと変。

 でも、まぁ、こんな日もあるよね。

 とりあえず紅の入浴剤をいれてかき混ぜる。お湯の温度はちょっと高め。とうがらしの時はついつい高めの温度にしちゃうんだよね。痩せるかな、なんてお腹の肉を掴む。

 たるんでるわけじゃないけど、腹筋は割れてない。

 軽く髪と身体を洗って、とうがらしの入浴剤をいれて赤くなっている湯に少しずつつかるようにする。

 ふぃ。気持ちいい。

 入浴剤やシャンプーリンストリートメントにはかけているので、洗いたての髪は柔らかい。天使の輪っかは基本です。

 純夜の自慢のお姉さんになれるように、色々気にしてる事もあるんです。だって、純夜は安いシャンプーを使っても天使の輪っかが出来る。私が使ったらゴワゴワになりそうなシャンプーでもサラリキラキラを維持出来る純夜。今は一緒のシャンプーを使ってるから、純夜の方が一際輝いているけどね。

 お互いの天使の輪っかを見ながら「姉さん綺麗」なんて純夜に言われ、「純君も綺麗だね」って返す。何これラブラブ姉弟か。



 お風呂はやっぱりいいわ~、なんて吸水性に優れたお風呂後用のヘアーバンドで長めの髪をあげ、下に雫が零れてもいいようにタオルを肩にかける。

 あがったよ、と報告しに居間のドアを開けると、そこにいたのはランニングから帰ってきたばかりの両親しかいない。


「おかえり」


 ついついいつもの癖で、両親の水分補給の飲み物をグラスに注ぎ、それを机の上に置く。


「ありがとー。流石璃音。お母さん助かるわー」


「ありがとね」


「いいよ。ついでだし。お風呂どうする?」


 私もお風呂上りの水分補給はするしね。


「純夜が先でいいよ」


「純君に声かけてくれる?」


 どうやら両親は最後でいいらしい。


「わかったー」


 グラスを洗い終えた後、二階に向かって声をかけた。


「純くーん」


 ……反応なし。

 これは部屋に直接言いに行った方がいいよね。

 その前に1階にある私の部屋に行き、メモ帳に両親が帰ってきた事と、先にお風呂に入ってという事を書く。電話中だと困るからの予備メモ帳。

 純夜の部屋は2階あるから、そこまで行って扉をノックする。

 声が聞こえるから誰かと電話中かな。

 少しだけドアを開けさせてもらい、そこからメモを見せると頷かれた。これで伝言はオッケーとばかりに純夜の部屋のドアを閉める瞬間、水守という名前が聞こえた。

 その直後に閉められたドアはパタン、と微かな音が響く。

 ドアを背にし、私は両手の平を頬へとあてた。ちょっと。ううん、かなり照れるかも。

 流石隠しキャラ。追い込み方が半端じゃない。

 若い子の恋愛っていいわぁ。初々しくて。中身がすっかりおばさんだから、こういうのって妙に照れくさくなっちゃうね。

 私も将来的には出来ると良いんだけど。


「(んー。イベント成功して本当に良かった)」


 純夜の恋愛フラグを潰さなくて、本当に良かったなぁ。




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