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好きのタイミング・中等部海藤貴矢視点・2




 清宮がもてる割に、男が近付いてこない──近づけない理由がわかってきた。弟2人。1人は幼馴染みだけど、清宮の事をしっかりとガードしてる。1歳差なんてたいした差でもなく、あの美形を前に突っ込んでいける男はいなかった。

 幼等部の頃からガードされていたらしく、エスカレーター式のやつらは表に出せず、外部生は内部生の態度と実際の弟を見て諦める。本人が全く気にしていないから、口にい出せなかったのだろう。俺も今の所口に出すつもりはない。

 今言った所で玉砕するだけだ。

 清宮は誰に対してもそんな感情を持っていない。中学ぐらいになれば異性に興味を持ち出す奴等は増える。それは男女での差は殆どないと思ってる。

 ここまで興味がないのは、いっその事清々しい。



「おはよう。海藤君」


「おはよう。今日も早いな」


「海藤君もね」


 今日もいつもの挨拶から始まる。俺の利点といえば、この位置だ。3年間持ち上がりの、席替えはなし。つまり、十分過ぎる程コミュニケーションを取れる。弟達に邪魔されずに、自然と清宮に近付ける。


「宿題やってきたか?」


「うん。やってきたけど、ちょっと多かったよね」


 そう言って、机にノートや教科書を授業通りに並べてしまっていく。


「俺も思った。中身より量がな」

 

 清宮がペンケースの中身を確認してる。シンプルなデザインだ。白に銀の縁取り。その中にはカラフルな蛍光ペンとシャーペンにボールペン。それと消しゴム。

 あまり余計なものは持っていない清宮だけど、付箋は色とサイズ違いで小物入れにいれてある。

 クリップや他の小物もいれてあるが1つだけ可愛い動物の付箋を入れて、時々見ては笑っている姿なんて誰もしらないだろう。こんな事ぐらいで優越感に浸るなんて、とは思わない。今の所、この程度の優越感しか見つからない。

 どれだけ隙を作らないのか。逆に見ていて不思議になる。わざと、というよりは自分は対象外だと思い込んでいる気がする。こうやって話すようになってからそう思った。

 その時、教室の出入り口から声がかかった。


「清宮。備品室に行って、今日使う教材を持ってきてもらえるか?


「あ……はい」


 担任の水野だ。始業式から半月程経過したが、何故か清宮にだけこうやって用事を頼む。そういうのは日直の仕事だろう。

 早めに登校するから余裕があるだけで、今の時間に頼む方がおかしい。


「国語の教材で、机の上に置いてあるからわかると思うが、手作りの冊子だ」


「はい。わかりました」


 嫌な顔一つ見せずに備品庫の鍵を受け取り、教室を出て行く清宮。教室を覗き込んでから、清宮から視線を外さない担任。

 この後職員室に行くんだから、自分で取りに行けと言いたくなる。なんたって、備品庫と職員室は同じ階にある。しかも鍵は職員室に置かれている。態々頼む必要なんて全くない。

 それなのに、毎日何かしらの理由をつけて清宮を呼び出す。


「はよー。海藤」


「…あぁ、おはよ」


 清宮の出て行ったドアを見ていたら、同じ外部生の小沢亮平が俺の前に座る。どうやらさっきの光景を見ていたらしく、俺と同じように怪訝な表情を浮かべている。


「何かかさー。アイツって怪しくねぇ?

 初日から相手にされていなかったけど、何つーか……清宮を見る視線が教師らしくねぇよな?」


 どうやら小沢も俺と同じ事を思っていたらしい。


「清宮って女子からも好かれるだろ? だからそっちからも心配の声は上がってるみたいだけどな」


「確かに、男にもてるのに女子にも人気あるよな」


 弟効果も大きい気がするけど。


「で、今見てたらさ、アイツも清宮の後ろを歩いて同じ方向に向かうんだよな。自分で取りに行った方が早いだろ?」


「あぁ。俺もアイツの行動には疑問がある」


 清宮はその性格も手伝ってか、大人っぽく見える時がある。顔自体はよくよく見れば童顔なんだけどな。


「アイツと清宮の距離を作った方がいいかもな」


 宿題でもお菓子でも、清宮に世話になっている小沢が髪をかき上げながら言う。確かに俺もそう思う。

 アイツと2人っきりにしたら、清宮が危ない気がする。






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