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いき過ぎた鈍感は罪?・3




「んー。よく眠れた」


 腕を上に上げながら背伸びをする。寝起きの背伸びはいい。何かスッキリとする感じがする。

 それに眠る前に焚いたアロマ。あのアロマの香りって好きなんだよね。檜の香り。花粉症の時期は使えないけど。花粉症の人がいるとね、やっぱり使い難いというか何と言うか。本人も香り自体は嫌いじゃないから、花粉症の季節以外は気兼ねなく使える。

 家では母だけが花粉症で、花粉を思い出すようなものを使うと、ジトーと恨めしそうな視線を向けてくるのだ。

 私も花粉症になったら、母と同じようになるのだろうか…。

 そんな事を考えながらリビングを開けたら、純夜と龍貴がいた。貫徹ですか。流石若者だねと思いながら口を開く。


「おはよう。純君。龍君」


 昨日と同じ位置に座って2人でぐてっとしてた。テレビを見れば2人が借りてきた映画のケースが山積みにされていた。貫徹して見ていたんだね。やっぱりこれって若いから出来る事だよね。


「夜食を作った方が良かった?」


 2人に声をかけてみる。眠いのか動きが散漫としてる。私の方にゆっくりと向くけど、顎を背もたれに乗せて首を横へと振る。

 というか、FAXが届いてる。何々……今日は泊まるから帰りは明日の夜になるけど心配しないでね。お土産は帰ってからのお楽しみよ。


 ……。

 お母さん。これってメールで十分じゃないでしょうか。何故FAX。最後に愛してる璃音と純夜へ。とか書かれていた。嬉しいけでど恥ずかしいというか照れるというかむず痒いというか。

 2人の事は心配していなかったけど、プチ旅行を決行したらしい。今度は何処に行ったのか今日帰ってきたら聞いてみよう。


「全く……いつもこんな感じだなぁ。純君は読んだ? 行動力が凄まじい愛してるFAX」


「うーうん。読んだような。でも愛してるっていうのは見なかったな。父さんも母さんも元気だね」


 いやいや。貫徹で映画を見る君達も元気だよ。


「帰るのは明日…つまり今日の夜だね。2人は朝食を食べる? それとも寝る?」


 純夜も龍貴も目は赤いし、クマとはお友達になっているし。食べる云々より眠った方が良いんじゃないかと思ったら、2人同時にソファへと倒れこんだ。限界突破をしちゃってたんだね。

 2人にタオルケットをかけて、静かにリビングを出た。声が出なくなるまで映画の感想を言いたいのかもしれないけど、倒れるように眠るまで話し合っていたら、頭は働かないよね。私も睡眠時間が7時間をきるとふらりとするし。

 しかし、こうなるまでやってたら逆に効率が悪い気がする。2人とも集中し過ぎて気付かなかったんだろうけど。

 今日のご飯は何となく胃に優しいものにしようと、自転車で出かける。うーん。風が気持ち良い。そろそろ日焼け止めの季節かなぁ。

 明日は買い物に行けないから、明日の分も今日買って……両親はどうなんだろう。夜に帰宅はいいんだけど、ご飯を食べてくるのかこないのか。一応作って、食べなかったら明日のお弁当にいれちゃえばいいか。

 買うものもちらしを見て決まってるし。けれどこんなに天気が良かったなら、徒歩でも良かったかもと思う。

 散歩にもなるしね。自転車も嫌いではないけどね。荷物だって籠に入れられるし。




 買い物を終えて家に戻ったら、家を出た時と同じ体勢のままの2人がいた。


「眠ってる?」


 小さな声で話しかけるけど、その声に応える気配も動く素振りも全く見せない2人。時計を見れば11時。買い物に出てから2時間。朝まで起きていたのならまだまだ眠っているね。

 今日はお弁当を買ってきたから、起きたら食べてね──とメッセージを残して机の上にお弁当を置いておく。

 ついでに、胃の事を考慮してレンジで温められるおかゆも置いておく。

 私も今日はお弁当とサラダを買ってきた。時々、コンビニのお弁当やサラダを食べたくなるんだよね。

 自室の机の上に置き、DVDを見ながら食べだす。うーん。美味しい。

 この家の財布は、両親が半分を受け持ち、もう半分は私が受け持っている。食材を買うのは私だしね。家と自分のお金をわかりやすくする為に、財布は常に二つ持っている。その残りを見ながら、今度は焼売でも作ろうかなぁ。大きいサイズの焼売でも良いよね。

 中華料理を食べるシーンを見ながらそんな事を考える。

 全部自分で作ればそこまで費用はかからないだろうし、手作りをした時のもちっとした生地が大好きなんだよね。

 パリっとした皮の方が好きという意見もあるから、両方作るんだけどね。流れる映像を見ながら考える。けど、テレビで作ってたメニューも悩むなぁ。美味しそうに見えるんだよね。テレビで作るご飯って。

 デザートまで食べ終わり、一つの袋にいれてまとめておく。後で洗って分別しておかないと。今リビングに行ったら音で起こしてしまいそうだから、部屋のドアの横に置いておく。昼食はお弁当だったから、後は夜のメニューを決めるだけ。


「中華系にしようかな。材料は揃ってるし」


 中華丼とサラダでいいか。

 何時から作り始めるかは後で考えれば良い。お腹がいっぱいで眠くなってきた。机の上に顎を乗せ、ウトウトと目を閉じる。このままだと眠ってしまいそうだとは思うけど、どうも止められそうにない。

 寝息をたて始めたのは、それから直ぐの事だった。


 

 ふと気がつけば、窓から差し込んでくる光がオレンジ色に変わっていた。時計を見れば17時。よく寝たなぁ。そろそろ夕食の準備をしないと。

 流石に純夜と龍貴も起きているだろうし。

 軽く髪の毛をブラシで整え、鏡で確認。このぐらいのはね方なら大丈夫。というか、縛るから問題なしなんだけどね。

 起きている事を前提に、袋を持ってリビングのドアを開けたら2人とも起きていたけど、朝と座っている場所が全く変わっていない。


「おはよ。お弁当は食べてくれたね。夕食は中華丼とサラダだけどそれでいい?」


 袋から食べ終わったお弁当の入れ物を取り出し、まとめて洗いながら聞いてみる。ボーとしながらテレビを見ている2人はまだ何処か寝ぼけているようにも思えた。


「うん。中華丼でいいよ。久しぶりに食べたいし」


「俺もそれでいい。璃音の料理は何でも美味い」


 あまり参考にならない言葉を受け取りながら、冷蔵庫から必要な材料を取り出す。ご飯もないから、先にといてセットしておく。

 料理に熱中していた時、視線を感じて顔を上げたら純夜と龍貴がジィッと私を見ていた。


「どうしたの?」


 心なしか、目が据わっているような気がする。


「姉さん。昨日の夜さ…」


「昨日の夜?」


 何かあったっけ?

 すっかり忘れたというか、わからない表情を浮かべていたら、純夜が溜め息を落とした。半分あきらめた表情を浮かべているような気がする。


「あのね、璃音……タオル1枚で家の中をウロウロするのは駄目」


 あぁ。タンクトップを探していた時か。


「大丈夫だって。純君と龍君だもん」


 にこっと笑って言い切る。何だ。それを気にしていたんだね。

 2人だったら大丈夫だとハッキリキッパリと言い切ると、2人揃って肩を落とした。……何で?

 とりあえず話は続きそうにないので、途中で止まってしまった夕食作りを再開する。

 ご飯は炊けた。上にかける具材も完成した。


「どのぐらいご飯食べる?」


 2人の丼は少し大きいものになっている。食べ盛りだしね。


「それと飲み物はお茶で良い? 温かいのとつめたいのがあるけど」


「「大盛りと冷たいので」」


 2人の声が被る。お腹はすいているんだね。


「うん。わかった」


 こんなふうに言葉を揃える2人は可愛い。幼馴染みだけど、姉弟のように育ってきた3人だもんね。私の中身は取り合えず置いといて。

 けど、姉の私でもそういうのが気になるって事は、大人になってきたんだなぁ。昔は全然気にしてなかったのに。

 本当に可愛いなぁ。





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