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風邪引き中・1




 風邪をひきました…。

 喉がイガイガして痛いし、熱の所為で頭がぽやっとするしで辛い。ベッドから起き上がる事も出来ずにいたら、誰かが部屋のドアをノックしてくれた。


「ど……ぞ」


 大きな声が出せず、外までは届かない。けれど返事がない事に疑問を感じたのか、おそらく純夜だろうけど、もう一度声をかけてくれる。


「姉さん開けるよ」


「……」


 やっぱ純夜だった。時間になっても私が起きてこない事を心配してくれたのか、少しだけドアを開けてベッドに視線を向ける。そこで見たのはベッドから起き上がれずに咳き込んでいる私の姿。

 ゴホゴホと咳の音だけが響く室内。


「璃音ッッ」


 私のそんな姿を見た純夜は叫ぶように私の名前を呼んで、駆け寄ってくれる。


「熱がある。声は出せないんだね。ちょっと待ってて」


 額に手を当て、熱の高さに顔を顰める。声をかけてから、慌てた姿を隠しもせずに部屋を飛び出していく純夜。室内では早歩き。外に出たら駆ける音が響いた。そんなに急がなくてもいいよ。危ないから。

 あぁ、でもだるくて動けない。しかも強烈な眠気も襲ってくる。この時点で私の意識はまどろみの中落ちていくだけだった。

 その後の事は覚えていない。


 今……何時だろう。

 意識を取り戻したのはそれから数時間後の事だった。朝よりも幾分楽になった気がするけど、あの後何があったんだろう。最後に見た純夜の後ろ姿は覚えているんだけど。まだ頭がぼーとしているから、どうも思考が纏まらない。枕元に置いてある時計を手に取り、時間を確認してみる。

 もうお昼なんだ。けれど食欲はわかずに溜め息を落とす。風邪の時は食べた方が良いんだけど、両親の料理を食べるぐらいなら出前でいい。一口しか食べれなくても出前が良い。

 あぁ、でも皆朝食はどうしたんだろう。下準備はしてあったから、それを料理して食べたのかな。純夜のお昼は食堂か売店かな。本は昨日の夜に頼んであるから問題ないとして、色々と気になる事がある。

 ……が、やっぱぼけっとしてる。

 まだ身体が熱くてだるくて節々が痛いけど、そんな事を言っている場合じゃない。ベッドからふらふらとする身体で降り、懸命に身体を動かす。

 お腹はすいてないけど、何か食べないといつまで経っても回復しない。少し食べたら薬を飲んで、アイス枕を準備して眠ろう。あ、でもその前に服も着替えないと。汗を沢山かいた所為かベッドから降りたら、寒くなってきた。このままだと風邪が悪化してしまう。

 壁に手をつけながら、なんとか台所まで歩いていくと、何故か純夜が立っていた──…何で? 今日って学校だよね。日付間違えていないよね。


「純君?」


 思わず名前を呼ぶ。すると私に気付いたのか、純夜が勢い良く振り向いた。


「姉さん!? 寝てなきゃ駄目だよ!」


 驚いたように目を見開く。それはこっちも驚いたんだけど、何故か私以上に驚いた表情を浮かべている純夜。

 状況説明をしてほしい。


「え…と……どうして、純君がいるの?」


「とりあえず座って上着をかけて。寒い格好してちゃ駄目。

 汗もかいてるから着替えてね。熱が高かったから汗もすごいだろうし。

 姉さんは風邪。インフルエンザじゃないけど肺炎になりかかっていたからね。

 お医者さんに来てもらって注射も打ってもらったけど……そうそう。風邪薬はこれ。おかゆを作ったから食べれる分だけ食べて薬を飲んで」


 口を挟む間もなく、純夜が言いたい事を言い切ると軽く肩が上下する。言い切った感があるけど、確かにあれだけ言えば疲れると思う。


「うん。わかった」


 疲れ果てている純夜に、もう一度何で居るのかは聞けず、素直に出されたおかゆをすくって口の中へといれる。ほんのりと塩分が聞いたおかゆの上には大き目の梅干が一つのっている。

 この梅干好きなんだよね。お取り寄せしてる梅干だったりする。家族皆が好きなんだよね。


 純夜には悪いけど、半分以上残してしまったおかゆ。けれど純夜は白湯と薬を持ってきて私の前に置くと、食べ残しのおかゆをキッチンの上に置いてサランラップをかける。

 大人しく薬を飲み、純夜に言われるがままに部屋に戻って着替える。暖房が効いているので寒くはないけど、汗を吸い込んだ服は心なしか重いような気がした。

 私が倒れると家の食生活の水準がいっきに下がるから、普段から気をつけてはいるんだけど、時々こうやって熱を出す。

 服を洗濯機の前に置いてある籠にいれたいけど、そんな体力はないからベッドに入り、横になった。後で熱を測ってみようかな。この分だと38℃以上はありそうだけど。

 朝の時点で私の意識がはっきりとしていたら、態々純夜を休ませるような事はしなかったんだけど、今更ソレを言っても仕方ない。

 ベッドに横になれば、また睡魔が襲い掛かってきた。まだ、その睡魔には打ち勝てそうになかった。私は沈む意識を覚醒させようとはせず、それに任せて再び目を閉じた。

 今度はいつ起きるだろう。

 早く治したいから、今はその睡魔に従い大人しく眠っておこう。眠る事で体力も回復するだろうし。


 あぁ、でも純夜の作ってくれたおかゆは美味しかったなぁ。塩分も絶妙で。手伝ってもらってるから、料理の腕がドンドンと上達していくんだよね。繊細な味付けなんかは、もう私なんかよりも相当上だろう。

  起きたら食べ途中だったおかゆを食べよう。鮭を焼いて、それも上にのせてほしい。鮭のおかゆも好きなんだよね。薬が効いているのかな。

 少し食欲が増してきた気がする。

 今はお腹いっぱいだけど、起きたらきっとすいてると思うし。


 そう思いながら、私の意識は完全に沈んでいった。






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