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皆で遊びましょう・3




 遊園地に着くまでは運良く渋滞にはまる事はなくこれたけど、流石GW。人の多さが半端じゃないね。

 チケットを購入する列に並びながら、飲み物を飲みながら自分達の番を待つ。人が多い所為と、雲1つない晴天。そこに陣取るのはこれでもかとばかりに輝く太陽。

 熱中症の条件は見事に揃っている気がする。なるべくポカリスエットとか塩分もとれる飲み物を口にしながら、遊園地の中に入れたのは30分後だった。それで入れたのなら良しとしておこう。

 ただ1つ問題があるとすれば、私が絶叫系の乗り物が苦手だという事なんだよね。けど遊園地でお土産を買ったり、パレードを見たりするのは大好きなんだ。


「混んでるね」


「うん。そうだね」


 純夜の言葉に頷きながらパンフレットを見る。何処から並ぼうか迷うなぁ。


「これは外せないっていうのはどれだろう。姉さんは絶叫系苦手だし」


「私の事は気にしなくていいよ。写真撮る係りになるから」


 小さい頃はコーヒーカップとかメリーゴーランドとかに乗ったけど、今となっては写真係にまわる事が殆どだったりする。勿論、お小遣いやバイト代を貯めたお金で購入した私のデジカメ。


「じゃあ……乗れそうなものを探しながら歩くでいいですか?」


 純夜が他の面々に聞くと、反論は一切出なかった。ぞろぞろと美形の集団が移動していく。美形の集団はとても目立つらしく、すれ違う人たちが皆振り返っていく。

 そうだよね。この人たちが目立たないわけわけがない。

 気分的には3歩後ろを歩きながら、私は視線を右へ左へと動かしながら周りを見ていく。軽めのだったら乗れるし、私に気を使って他の人たちが楽しめないなんて嫌だしね。そう思って探していたら、コツンと軽く額を弾かれた。


「俺達に悪いなんて思うなよ」


 いつの間にか私の横に来ていた武長先生。


「そうだな。清宮が楽しめる事が一番だ」


 言葉を続けてくれたのは相良先生。流石先生達。すごく優しいと思う。

 私としては皆が楽しんでくれた方が嬉しいんだけどね。でもそう言われると、人が少ないうちに私が乗れるものに乗っておいた方がいいのかもしれない。


「あ……あれなら乗れそう」


 6人乗りで、映像を見ながら進んでいく乗り物。軽めの動きだからこれなら大丈夫。それに今なら並ばずに乗れるみたい。

 暗い所なら大丈夫。怖くはないんだよね。


「じゃぁ乗ろっか。姉さん、手かして」


「うん。ありがとう」


 私に手を差し伸べてくれた純夜の手を取り、私はその隣に腰をおろす。右隣には龍貴。慣れた配置で私は気付かなかったけど、どうやら後ろの方では少しゴタゴタがあったらしい。男だけでこれに乗るのかと。鷹野先生がいれば十分だと思うんだけどね。

 だって美人さんだし。女性にしか見えないし。

 純夜と龍貴と私の後ろに乗った人たちからは楽しげな声があがる。うん。皆楽しんでくれたと思う。そう思っておこう。


「(しかし……この入り組んだ人間関係ってどうなんだろうなぁ)」


 私と純夜を除いて9人。鷹野先生や相良先生は除くとして7人。純夜に対して今はささやかな感情を抱いてはいる時期だよね。あぁ、でも鷹野先生は武長先生と同じ人を好きになったって事は8人なのかな。

 そうやって見るとカオスだよね。この状況って……。今回のGWは私が間に入って強制的にイベントを発生させた形なんだけど、こうなってくると純夜の気持ちも他の人たちの気持ちも、どうなっているか全くわからない。

 確か純夜に気になる人が出来ると、夜に私の部屋に来て相談するんだよね。


『俺……男なのに男が気になるなんておかしいよね』


 って半泣き状態で璃音に言うんだっけ。璃音はそんな純夜を見て、大丈夫だよって背中を押すんだよね。大丈夫。純夜が誰を好きでも私の大好きな弟だよ。安心して。人を好きになる事はおかしい事ではないからね──…勿論、まだそんな話をした事はないし、してくる気配すらない。

 そもそも、そんな相手がいたらGWには自力でイベントが発生しているはず。

 つまり現時点では、誰もがスタート地点から動いていないって事だね。せいぜい同じクラスの西岡君が、“同じクラス”というだけで、ほんの少しリードしているのかどうなのか。

 西岡君は中等部から上がってきたわけじゃなく、今年編入してきて知り合ったのが純夜だったから、ひょっとしたらそれで仲良くなったのかもしれない。

 純夜は面倒見がいいし。

 ついつい観察してしまう。攻略相手がここまで揃うって珍しいし。


「姉さんこれ見て」


 11人でぞろぞろと歩いていたら、純夜が私の手を取る。観察していたら、どうやらお土産ショップを通り過ぎようとしていたらしい。


「あ、可愛い」


 遊園地のマスコットキャラのボードでお勧めしているストラップ。涙の形をした磨かれた石に、紐が結ばれていて、それがストラップになっている、石と一緒についている小さな丸にはマスコットキャラが描かれていた。

 私が、綺麗な石とかを集めるのが好きだと知っている純夜は、これなんか良いんじゃないかな、なんてお勧めしてくれた。確かにこれは良いかも。


「こっちのグリーンも気になるけど」


 2つを見て悩む私の左側にいた純夜が、ブルーのストラップを手に取り、いつの間にか右側に立っていた武長先生がグリーンのストラップを私の手から取ったかと思うと、2人揃って清算を済ませてしまう。


「え…?」


 一体なんだろう。


「折角だから記念に買っちゃいましょうね。皆で」


 ん? 鷹野先生??

 何故か皆で色違いを購入する事になってしまったんだけど、いつの間に? 私が首を傾げている間にどんどんと話が進んでいく。

 ボーとしていたら、見事に決まっていた所か、皆好きな色を持ってレジに並んでいた。え? 11人でお揃いもって嬉しいの??


「姉さんはこれ」


「璃音。受け取れ」


 そして何でか競い合うかのように純夜と武長先生が渡してくる。

 買ってないかと思ったら、2人もしっかりと自分の分は購入していた。


「え…と……ありがとうございます」


 2人の視線がとっても痛かったので、2つとも携帯につけましたとも。それ程邪魔になるサイズじゃないから良いんだけどね。2人が満足気に笑ったから、色々と疑問に思うものの目を閉じておく。

 ゲームの中じゃ競い合う場面はなかったんだけどね。どうしてこんな事になったのか。そして人数が多すぎてゆっくり話せないし。

 まぁ…これはこれでいいのかな。他にもお土産は買ったし、乗り物は乗ってもらって写真は撮りまくったし。後で印刷して個別に渡そう。

 なんだかんだといって楽しかったしね。

 他の人たちは大丈夫だったのかなぁ。それがちょっと不安だったりするんだよね。






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